けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

日本版NSCの機能は既に動き出しているのかも知れない

2013-12-17 23:58:35 | 政治
日々、北朝鮮の動向が気になるところだが、今日は中国の方について少し前のウォールストリートジャーナルの記事を中心に考えてみたい。結論としては、何処まで読めているのか分からないが、安倍総理の攻めの積極的平和外交の姿勢は東アジアの平和安定に、非常に効果的に機能する可能性を感じている。

では順番に説明する。お話の発端は最近のウォールストリートジャーナルの記事である。中国が防空識別圏を設定し、公海上の航行の自由を脅かす一方的な力による状況変更を試みる中、ウォールストリートジャーナルでも様々な論評がされてきた。ごく一部だが、幾つか紹介してみたい。

ウォールストリートジャーナル記事
2013年11月27日「【社説】米国が中国に示したB52爆撃機という返答
2013年12月5日「【社説】米副大統領のメッセージは不十分―防空識別圏撤回要求が必要
2013年12月13日「【寄稿】アジアでの制空権リスクにさらす米国の対中外交

最初のB52爆撃機の投入の記事は、アメリカの対応として「よくぞやった!明確なメッセージを中国(そして世界)に送った!」と称賛した感がある。言うまでもなく公海上の航行の自由を脅かす中国の主張は国際法上、許されざる内容で世界中が反発したものである。ジョン・ケリー国務長官とチャック・ヘーゲル国防長官が単純明瞭な形での中国非難を宣言し、明確に「(武力という手段を用いて)尖閣には手を出すな!」とメッセージを送り、オバマ大統領も1回は中国を非難する声明を送ったが、どうもその後が続いていない。

2件目のバイデン副大統領の記事は、大統領~副大統領のラインに関しては、「日本ほどアメリカは頑なではない」という誤ったメッセージを中国に送ったように見える訳で、それを「米国と日本の立場に隙間を生む恐れ」に繋がるとして非難している。国際ルールとは如何なるものかということを、単に公海上の航行の自由とは別の視点で、日本が自国固有の領土だと主張している北方四島も竹島も、日本は係争地として認識しているから防空識別圏を設定していない様に、尖閣を係争地と認めるように日本に要求している中国が防空識別圏を設定すること自体が非常識だとしている。ちなみに日本が尖閣上空を防空識別圏に設定している点は、ロシアや韓国が北方四島や竹島上空に防空識別圏を設定するのと同様であり、占領下のアメリカの設定した防空識別圏を引き継いだ1969年時点で中国からは何の異論もなく、実際に日本の施政権下にあることを考えれば何ら国際標準とは矛盾していない。中国が異を唱えるなら、尖閣に防空識別圏をぶつけるのではなく、日本の防衛識別圏に尖閣上空を含めない様に要求するのが筋なのである。

ただ、その様な論理武装も理論的な議論の通じる相手に対して有効だから、中国に対して何を言っても効果はない。だから、もっと明快な形でメッセージを中国に送らなければならないと唱えている。その主張は下記の記述に集約される。

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中国は権威主義的な姿勢を強めている。歴史を振り返ると、世界の大国がこうした領土を拡張しようとする行動をすぐに阻止しないと平和が危険にさらされるという教訓がある。
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また更に、この「阻止」の具体的な実現方法を下記の様に明記している。

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米国は中国指導部に、防空識別圏が取り消されなければ、米空軍・海軍が共同で尖閣諸島周辺の巡視を開始すると伝えるべきだ。長期的には中国が軍事的な威嚇を続けるのを容認するよりも、こうした断固たる態度の方が平和に寄与するだろう。
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私が見ても、「(アメリカさんが)そこまで言うか?」と思ってしまうほど踏み込んだ発言である。その後の最後の記事にしても、業を煮やして繰り返し繰り返し、大統領~副大統領ラインの対応の不十分さを繰り返し指摘している形である。東アジアの制空権の確保はアメリカの国益に直結するという事実を再確認したものである。この様な点では、日本の安倍政権はウォールストリートジャーナルが指摘する様々な論点を熟知した上で、必要かつ適切な行動をしていると言える。防空識別圏を飛行する航空機の飛行計画を中国に提出していないのは日本だけになったが、それも「日本だけが仲間外れ」という流れではなく、今後は「日本だけが適切な行動を取った」という評価に繋がっていくのではないかという予感を感じさせる。

この様に読んでいくと、ウォールストリートジャーナル的には(安倍政権はともかく)オバマ政権には駄目出しをしている訳であるが、ただ、時期的には少し前の記事だが、下記の興味深いポイントも合わせて指摘している。

2013年12月3日「【寄稿】中国の防空識別圏、習主席はなぜ売り込まないのか

オバマ大統領もバイデン副大統領も、中国に対しては過剰に刺激しない様に気を使っている感があるが、その様な常識の通じる西側諸国の責任者とは異なり、中国がその様な遠慮をするとは思えない。だから、習近平国家主席が防衛識別圏をもっと強烈にアピールしても良さそうなはずである。百歩譲って、習近平国家主席が遠慮するならせめて李克強首相はもっと前面に出て主張していても良さそうなものである。日本の歴史認識の非難などはそうだった。しかし、中国から聞こえてくる声は、軍部や外交部からの勇ましい声のみであり、トップレベルの政治責任者からはその様な声が中々聞こえて来ない。これは明らかに不自然な反応である。私の過去のブログでも指摘したが、習近平国家主席の中国国内での指導力は限られていて、バイデン副大統領との会談の際にも相手の目を見て話すのではなく、いつぞやの菅元総理が胡錦濤前国家主席に対した時の様に原稿にばかり目をやって話していたのに似ており、殆どフリーハンドの実権は握らされておらず、集団指導体制の中での決め事に沿った発言しかできていないことが読み取れるのである。

ただ、このウォールストリートジャーナルのご指摘が興味深いのは、その理由が権力の掌握が不十分であるからではなく、習近平国家主席の目が国内問題に強く向いていて、腐敗官僚の撲滅に思いのほか力を強く入れており、その結果としてアメリカや日本との対立を必要以上に首脳レベルの対立に格上げしたくないという理解のようである。つまり、軍部の暴走や外交部の強気な言い分は、国際社会から見れば「またかよ・・・」というレベルであり、首脳レベルで言及しさえしなければアメリカと本気で対立することはないだろうと(習主席が)タカをくくっての対応の様にも見える。

私は、意外かもしれないがこの指摘には大いに納得できるのである。習近平国家主席が権力を掌握したいのであれば、まずは軍部の有力者と強いパイプを築かねばならない。しかし、中国国内の汚職は相当根が深いのだから、軍部の有力者の中にも相当な数の汚職があるはずである。先日もテレ朝のサンデースクランブルで取り上げていたが、中国の国民的な歌姫の湯燦が失踪した事件の陰にも、軍部の有力者が絡んでいるという話があった。この様な話は枚挙に暇がないから、習近平国家主席がこの路線を突っ走れば軍部からの抵抗も予想される。軍部の協力なしには権力の掌握は不可能だから、日本やアメリカとの衝突(例えば局地的な戦争)を直視すれば、この様な国内問題になど構っていられないはずである。

しかし、それにも拘らず習近平国家主席が腐敗撲滅に拘るのは、軍部の反乱よりも国民の暴動の方が怖いと感じている証拠で、少なくとも国民が納得できるレベルでのガス抜きは彼にとって必要なのである。しかし、そのガス抜き以上の圧力としてPM2.5問題が予想外に深刻化しているから、ますます習近平国家主席的には国外問題で揉めている場合ではない。軍部の暴走の可能性は皆無ではないが、習近平国家主席の了承なしにはアメリカを巻き込む形での戦争にGoサインが出る訳がない。つまり、局地戦的に戦いが起きたとしても、全面戦争に発展する前に中国指導部は火消しに走るはずである。この辺は、下記の記事にその理由が詳しく書かれている。

朝鮮日報2013年12月15日「【コラム】韓国こそ『冷静、冷静、また冷静』に行くべき

何と、この記事の記者は私が前から目を付けている楊相勲論説室長なのだが、アメリカの軍事力が如何に中国の相手にならないほどの強大なもので、しかも、質的には日本も負けず劣らずであり、(アメリカが恐れるのは中国ではなく日本というぐらいに)中国は日本とアメリカの連合軍相手には、局地戦ですら戦う前から結果が見えているというのである。中国軍部のイケイケドンドン組には理解できないかも知れないが、山本五十六的な人ならば事態が呑みこめているはずで、その様な状況を把握している習近平国家主席は日米との対立を煽るために軍部にすり寄るより、寧ろ腐敗撲滅を錦の御旗にして軍部を含めた暴走する有力者を粛清する道を選んでいるように見える。

その様な習近平国家主席を相手にするなら、まずは遠慮ではなく、原理原則をストレートにぶつけて「襟を開いて、真摯に話をしよう!」と対峙するのが賢明である。現状は戦争に向かう途中ではなく、中長期的にみれば戦争からの回避行動の様に位置付けられるのかも知れない。

相手の隠れた姿を情報収集により炙り出し、それを熟知した上で最適な状況判断をする。日本版NSCは既に動き出しているのかも知れない。現状を悲観するのは気が早い。そんな気がした。

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