何だか久しぶりに、こんな雰囲気の小説を
読んだような気がして、感心しました。
横組みの、ひらがな多様の文章で、読みづらいものでしたが、
「現代詩、散文詩、の感覚で読んだらいいのかな?」
と、読んでいったら、次第に
薄暗い広い部屋に羽虫がゆっくりとひらりひらり
舞っているかのような雰囲気と気分になりました。
薄暗い空間に時間がかすけくたゆたい、
苦くも愛おしい匂いと香りが満ちてきます。
昨今のエンタメ系の小説が、大流行で、
それはそれで出来も良くて、感心もして、
「現代の文学とはいよいよ
こんな小説世界になってしまうのかね。」
と思っておりましたが。
75歳の芥川賞受賞というのが話題を呼んで、
よく売れているのでしょうが、
中身は決して売れ筋の本ではありませんね。
本を、小説を、文字を読むことの悦ばしさを
改めて伝えてくれる小説でありました。(感謝。)
また、本のつくりも美しいものでありました。
横組みの受賞作品と50年前の初期作品3編を
面白い形で、組み合わせています。著者の
「なかがき」というスタイルが奇しくも出現して
中々秀逸であります。
「美しい本」と言えば、最近のものでは
もう一冊ありました。
女性のインタビュアーとライターの方が
最晩年の吉本の実に愛おしげな語りの表情を引き出して
美しい本に仕上げてくれています。 お手柄ね。
ところで、本日も桜めぐりのお散歩。
自宅へ戻ると、マンションの玄関前通路の
手すりのところに、、、野鳥が仲良く2羽。
まったく、春ですな。