散歩するなべさん

しょうがなくも所在なく散歩するなべさん。近頃野鳥に目覚めて鳥見お散歩の日々。病気もしたけど時には山歩きに物思い旅ね。

古井由吉の最後の小説です

2021-04-21 23:12:01 | 

たまにはご無沙汰の本ネタです。

 

 

本屋の片隅の書棚の小説群に挟まれて、静かに置かれていた古井の小説集。
平積みになるでもなく、新聞広告もあったのやらどうやら。

昨年の2月に82歳で亡くなった古井氏ですが、
その最後の連作小説集「われもまた天に」であります。


3編の短編と遺稿(未完)の4作品が収められていて、内容的には、
亡くなる1年前の2月から遺稿の10月までのことが書かれています。


古井独特の幽明の境地を行き来する文章はいつものことながら、
少し平明で何がしか清澄な香りもする文章になっていて、読みやすいものでした。
別の本を1,2冊間に挟みながら2度読みしてしまいました。


若いころの東北乳頭山への単独行を回想する箇所がありました。
土砂崩れでふさがった下山道を恐れつつも押して渡りきる体験です。

数人のメンバーで、秋田駒から乳頭山、そして乳頭温泉へ下りるというコースを
私も行ったことがありますので、さて古井の歩いたコースはどこだろう、と、
山の地図を広げてみたのですが、裏岩手縦走にしてもよくはわかりませんでしたね。


最後の遺稿の10月から4か月後に亡くなったことになります。
入退院を何度も繰り返しながらの執筆ですから、
どこか生涯の終わりをつぶやくような趣もあるのは自然なことのようです。

「これでさっぱりしたよ。世話になったな。雨があがって、夜も白んでくるようなので、
そろそろ出かけることにするか。…」(「雨上がりの出立」)

夢うつつの中で、どこからともなく聞こえる声、亡き父のものか、それとも自身の声か。

切ないですな。哀悼。

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2 コメント

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カワセミの給餌と交尾 (野鳥撮り趣味の動画)
2021-04-22 09:48:29
これはまた趣が変わりましたね~。
でも、なべさんならでは・・な気もします。

さて私方も、珍しい動画が撮れたので、ご笑覧いただければ幸甚です;
https://www.youtube.com/watch?v=ctjSivnxlSM
返信する
面白いです (なべさん)
2021-04-22 18:33:36
このカワセミも前回のカイツブリも動画の魅力をよく伝えてくれます。自分で動画をやるところまではなかなかいかないのですが、ついやってみたくもなります。
返信する

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