組織論(5):組織として上場は通過点か?
組織論の最後は、組織と上場(株式公開)の関係を述べたい。
ベンチャー企業にとって、株式公開としての上場は、大変分かり易い目標である。ただし、良く言われるように、上場は決して最終ゴールではなく、さらなる成長に向けた通過点である。
確かにその通りであり、上場すること自体を目的化することは、好ましくなく、結果として上場後に苦労することになる。
しかしながら、組織論的には、人材の採用も含めたマネジメントという視点から言うと、上場という特別なイベントは、組織を一丸にまとめる上で、極めて有効かつ明確な目標となりうる。
組織マネジメント上、社長が認識すべきことは、上場前と上場後では、入社を希望してくる人材の質が明らかに異なってくるという事実である。それは人材の質の良悪ではなく、気質そのものが違ってくるということである。
誤解を恐れずにもっと直截的な表現を用いると、上場前は「やまっけがある人材」であり、上場後は「安定志向の強い人材」ということになる。
この「やまっけ」というのは、決して悪い意味でなく、会社の成長に合わせて自己を成長させたいという意欲も強く、チャレンジ精神も旺盛ではあるが、時として個性的なあまり組織的な動きが苦手だという程度である。
一方、「安定志向」というのも、決して悪い意味ではなく、個人的な思惑よりも組織的な動きを優先するなど、所謂「お行儀が良く、上司としては使いやすい」人材である。
ベンチャーの社長は、上場前後に入社してくる人材の気質に違いが生じることに配慮した組織作りやマネジメント体制を敷く必要がある。
このあたりは、なかなか説明が難しく、実体験を経た者にしか理解できない「臨床の知」的な感覚である。
企業の成長スピードと組織の在り方や人材確保というのは、複雑極まりない経営テーマであり、だからこそ、トップマネジメントにとっては、永遠の課題であり続けるのであろう。
今回で「組織論」を終了し、次回からは「財務論」に移りたい。
(次回に続く)
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