再び原点回帰なり!

未熟なビジネスマンの心のつぶやき

実体験に基づいた起業論(27)

2008-05-31 16:09:51 | 連載:実戦的起業論

総括論(1):社長とは?

本連載もまとめの総括論に入る。その第1回目は、そもそも社長とは、どういう存在かという私見を述べたい。

ただし、社長とはいっても、私自身が実体験として語れるのは、ゼロから創業したベンチャー企業の社長である。それは、一部上場企業のような大企業の社長とは、まったく違うものであろうし、私にはそちらを語る資格も経験もない。

さて、創業社長の特徴は、とにかく事業へのこだわりが強い。作った会社は、自分の子供のようなもので、出来の良し悪しには関係なく、自分の分身のような感覚を覚えるものだ。むしろ、出来の悪い方が、可愛いという点では、子どもと同じかもしれない。

会社の創業理念や社名にも、自分の志と思いを込める。自分自身の生き様そのものであり、日々の生活と一体化する。

朝から晩まで、会社のことばかり考え、時には夢の中でも会社のことを心配している。ある種の「狂の世界」にいるようなものだが、自分ではまったく違和感がない。時として、周りが見えなくなり、自分の世界に没入する。

ある時は、大きな夢を語り、ある時は、些細なことにくよくよし落ち込む。創業社長というのは、とてもまともな人格では勤まらない。かなり分裂的、躁鬱的である。

創業後、数年間は「ベンチャー死の谷」に急降下。日々、お金がなくなっていく。その気分は、恐怖を超えた快感かもしれない。

などなど、いろいろと表現しても語り尽くせない。やはり、創業は自らやってみるしかない。

若い人には、とにかくチャレンジして欲しい。そこにはやった人だけが分かるユニークな世界が待っている。

そして、創業社長は一度やったらやめられないのである。

(次回に続く)

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最近の面白かった本

2008-05-25 11:40:37 | 読書感想

久しぶりに最近読んで面白かった本を3冊紹介します。

それぞれにまったく違ったジャンルですが、それぞれに大変勉強になりました。私は、通常一度読むと読み返すことをしない人ですが、これらの本はどれも、もう一度、じっくり読もうと思っております。

1.会社は頭から腐る(冨山和彦著・ダイヤモンド社)

2.ウェブ時代・5つの定理(梅田望夫著・文芸春秋)

3.誰も知らない世界と日本のまちがい(松岡正剛著・春秋社)

会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」

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価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2007-07-13

「会社は頭から腐る」は、ご存知の元産業再生機構COOの冨山氏の著作。やはり、企業再生という実体験から出る言葉には、重みとすごみを感じます。冨山氏は自分よりも4歳も若い1960年生まれの経営者ですが、ある年齢を過ぎると、人間、特にビジネスパーソンは、生きた長さではなくて、どれだけの修羅場を潜ってきたのかだなと、正直言って焦燥感を抱きました。経営者としての人間洞察にも、納得いく点が多くありました。

ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!

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価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2008-02-28

「ウェブ進化論」「ウェブ時代をゆく」と最近立て続けに梅田氏の著作を読んでおり、すっかり梅田ファンになったようです。この方も冨山氏と同様に、自分より4歳若いアントレプレナー。今回の「ウェブ時代・5つの定理」は、前二作とは毛色が違い、スティーブ・ジョブズのようなシリコンバレーのスター起業家達の夢溢れる言葉を、梅田氏が臨場感を持って解説してくれるもの。梅田氏は、いつも自分よりも若い世代へのメッセージとして、自らの著作を位置付けていますが、私も彼の著作からいつも元気をいただいています。俺もまだ若いかな?(独り言・・・)

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義

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価格:¥ 1,800(税込)
発売日:2007-12-20

最後の「誰も知らない世界と日本のまちがい」は、こちらは大先輩の松岡正剛先生の著作。こんな世界史の教科書があれば、誰でも歴史が好きになるのではないでしょうか。講義形式を本にまとめたものなので、非常に難しいことも、大変分かりやすく読みやすく、かつ魅力的に語られています。膨大な知識と見識がなければ、絶対にこんな講義はできないだろうなと感銘を受けました。難しいことをいかにシンプルに説明するか、または説明できるかで、その人の力量が分かるというもので、この点ではビジネスの世界とまったく同じですね。


実体験に基づいた起業論(26)

2008-05-24 09:42:26 | 連載:実戦的起業論

財務論(5):社長(CEO)とCFO

財務論の最後に、社長(CEO)と財務担当責任者(CFO)について私見を述べたい。

理想的なベンチャー企業の創業は、夢と志を共有できるCEOCFOがコンビを組むことである。

この二人は、車に例えるとアクセルブレーキ。このバランスが実に大切である。

つまり、社長は自らの夢に向かって、どこまでも貪欲且つがむしゃらに高みに向かって突き進む。財務責任者もベンチャーである以上、チャレンジ精神は旺盛でなくてはいけないが、やはりお金にはシビアであるべき。

社長の夢と志は十分に理解した上でも、時にはその暴走を食い止めることも必要である。そうした冷徹な目と判断力を持ったCFOを抱えたベンチャー企業は、必ず成功すると言っても言い過ぎではないだろう。

ただ時には、CEOCFOが経営判断で真正面からぶつかることもあるかもしれない。そんな危機を乗り越えるためにも、両者が表面的ではなく心の深いところで信頼し合うこと、そしてお互いに尊敬の念を抱くことができる関係を維持することが必要になるだろう。

家族でも友人でもなく、プロのビジネスパーソンとしてCEOCFO

お金の問題である財務論も、やはり最後は人の縁に帰着するものである。

さて昨年の11月からスタートした本連載企画も、動機論、理念論、営業論、組織論、財務論の順番で、私自身の拙い実体験から得た知見を披露してきた。

次回からは、数回にわたり総括論として本連載のまとめに入りたい。

(次回に続く)

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実体験に基づいた起業論(25)

2008-05-18 10:34:14 | 連載:実戦的起業論

財務論(4):正しい借入政策とは?

ベンチャー起業時における資金調達手段で、借入というものは、一昔前まではまったく選択肢に入らなかった。どんなに優れた事業計画であっても、その創業時に金を貸す銀行は皆無であった。

もちろん、社長が個人資産などを十分に持っていて担保を差し出せるのであれば別である。また、社長自身に創業や経営の成功実績がある場合には、その信用で借入が可能かもしれない。それ以外は、ベンチャー創業における借入政策というものは、未成熟のままである。

しかし、最近では多少事情も変わっているようだ。国や自治体などが、手厚い起業支援策を出しており、その結果、政府系金融機関や自治体が、創業資金を貸してくれる。その場合でも社長の個人保証を求められることが一般的であるが、時として、無担保無保証の制度もあるので、いろいろと調べてみるとよい。

私も今回の創業では、創業2ヵ月目にして、国民金融公庫から無担保無保証で1000万円借入れることができた。10数年前の最初の創業時には考えられなかった大変ありがたい制度である。

また、中小企業金融公庫という政府系銀行があるが、ここでは最低でも1度決算をしていない会社には貸せないようである。つまり、創業期には、たとえ社長が個人保証をしても貸せないということ。もちろん、前述したように社長に個人資産が十分にあれば話は別かもしれないが。

創業社長は、中小企業の社長と同様に、この個人保証という日本独特の慣習にかなりプレッシャーを受ける。私も最初の会社では、創業数年後のまだ赤字が続いていたころに、最高1億円近い個人保証をした経験がある。このことは、個人資産がない者であるので、もし事業に失敗したら、自分のみならず家族全員さらには親族までに迷惑を掛ける。このなんとも言えない恐怖感は経験しないと分からないものである。

米国では、「起業は一種のスポーツである」という人もいる。大変、明るい雰囲気がある。それに対して、日本の場合は、悲壮感すら漂ってくる。

もちろん、人様のお金を集めて、それを無駄に使ったり、私利私欲のために使うのは言語道断であるが、新しい事業に真摯に挑戦して、その結果として失敗した場合に、その人の最低生活の基盤まで失わせるというのは、どうなのか。そういう経験をした社長を何人か知っている。

「スポーツ」とは言わないまでも、創業チャレンジにもう少し爽やかな感覚があってもいいのではないか。ただ、ホリエモンのような輩が、盛り上がったベンチャー支援論に冷や水を浴びせたのも事実であり、経営者のモラルハザードとのバランスは難しい問題かもしれない。

かく言う私自身も上場後には、図らずも多数の株主に大きな損失を強いることになってしまった。このことは死ぬまで忘れることのできない忸怩たる思いである。ただ、この重い思いに押しつぶされることなく、自らに与えられた命を生き切ることでしか、償いはできるものではないのではないかと、時として萎える気持ちをふるいたたせている。

(次回に続く)

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実体験に基づいた起業論(24)

2008-05-10 07:13:22 | 連載:実戦的起業論

財務論(3):正しい資本政策とは?

創業時の資本金から、企業の成長にしたがって資本の増強が必要である。その増資のタイミングと額をどうするかという計画が、資本政策と呼ばれるものである。

私自身は、10数年前の創業時には、この言葉の真の意味が理解できていなかったために、その後の増資については、結果としては「行き当たりばったり」式となってしまった。

もちろん、計画どおり物事が進むというのは、ベンチャーの立上げのみならず、ビジネスの世界では極めて稀ではあるものの、やはり事前に計画を作ることで、増資実施における意思決定の基準が明確になる。

やはり、何事も「出たとこ勝負」は良くないものである。

では、増資における意思決定で大事なことは何か。もちろん必要額を決めることは最初であるが、それらを誰からどの程度の出資をいただくかというのは、極めて重要なポイントである。

一口に株主といっても、多種多様である。個人もあれば、企業もあれば、企業でも事業会社もあれば、投資専門のベンチャーキャピタル(VC)もある。さらに、VCにも、銀行系もあれば、証券系もあれば、保険系もあれば、独立系もあるように、それぞれに投資スタンスと期待利益が異なってくる。

投資家によっては、出資した以上は、経営に積極的に口を出すことを要求するところもあれば、まったく逆で、金は出すが口は出さないと最初から宣言しているところもある。

どちらの投資家がいいのかとは、一概には言えない。経営のプロとして、取締役等を派遣いただき、ある時点から経営参画をいただくことも、ベンチャーの場合有効な場合もある。また、そのことが経営上の大きな制約となって、ベンチャーとしての生命力を失ってしまうリスクないことはない。

以上のような諸々のことを総合的に勘案して、最終的に誰からどれほど出資いただくかを決めなくてはいけない。

ビジネスには正解がない」という格言の通り、資本政策にも絶対的に正しいというものはない。ただ、明らかに間違った判断をしている場合もある。その場合は、社長自身が資本政策に無知であることが多いが、一般的には創業を何度も経験している社長というのは、極めて稀であり、無知であることは恥ずかしいことではない。

医療の世界のセカンドオピニオンではないが、できれば複数の経験者から話を聞き、適切なアドバイスをもらうということが、大きな失敗をしない唯一の手段であろう。

(次回に続く)

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