
きのうの,ソフトフォーカスレンズの続きです.
ライカ用のソフトフォーカスレンズに、
タンバールという名玉があります。
写真作家の木村伊兵衛氏が一瞬の表情を狙った
ポートレートに、
ライカとタンバールレンズを使って名声を博しました.
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いまは、35ミリサイズは写真の標準サイズです。
ライカがやってきたとき,この小型カメラのネガサイズで,
大丈夫かと思うほど小さなサイズに感じられたでしょう.
その小型カメラに木村伊兵衛氏が着目したのは先見の明というか、
写真の将来の可能性を見出されたのでしょう.
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フランスのライカの名手、
アンリ・カルティエ=ブレッソンがいます.
彼の写真集「決定的瞬間」が有名です.

一時,写真雑誌でソフトフォーカスの作品が
ブームになったことがありました.
結論として,ソフトフォーカスの作品は,
ネガ(銀塩)のサイズが大きい方が
良いという結論です。
35ミリのネガフィルムでは、
ギリギリだったのかもしれません.
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古くから日本で、はやった「ベス単フード外し」があります。
ネガサイズは,ベスト判ですから、
35ミリサイズより大きいネガです.
ベス単のフードはレンズが開放にならないように,
小さな円で開いています.
そのフードを外しますと,
レンズは開放になり,収差が増えます.
ソフトフォーカスの描写になります。
それが、当時の作家連に受けたのでしょう.
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キヨハラソフトVK70Rという
ベス単レンズと同じ構造のものが
ソフトフォーカスの描写レンズとして
発売されました.
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ソフトフォーカスレンズは,高価なレンズです.
絞り開放で,映像がもっともソフトに写ります.
絞りを絞っていくにつれて、
映像がシャープになって
普通のレンズの描写になるのもありました。
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特殊な光学的な模様を施した
フィルター(ディフューザー)があります。
このフィルターをレンズ前に取り付けると,
擬似的なソフトの描写になりました。
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関西の映画界では,これを「おべんちゃら」と言っていました.
おべんちゃら=関西弁で「お世辞」という意味です.
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歳を少しとった二枚目俳優さんのアップのカットで
皺を目立たなくするためソフトな描写を狙います.
セットでキャメラマンが
目の前の俳優さんを気にせず
カメラ助手さんに向かって
「おべんちゃら入れて…」
と大きな声で言います.
キャメラのマットボックスに助手さんは
「おべんちゃら」フィルター
を入れます.
