荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

桐野夏生の巻、よたび。

2016年09月26日 | 偽りの人生に優れたエンターテイメントを




桐野夏生著【OUT】の映像化作品を立て続けに観ました。

1999年製作のドラマ版【OUT ~妻たちの犯罪~】と、2002年製作の映画版【OUT】です。

【ショムニ】みたいに、『ドラマ版がヒットしたから映画化』って訳ではありません。

それぞれが独立した作品となっております。

最近で言いますと、横山秀夫著【64】とか、黒川博行著【破門】とかの映像化と一緒ですな。



主人公・雅子さんをドラマ版では田中美佐子が、映画版では原田美枝子が演じております。

この雅子さん、夜中の弁当工場でパートをしている平凡な主婦なんですが、とてもカッコ良いんです。

自分自身に軸があるっていうんですかね。

主婦業や家庭に諦観を抱きつつも、ギリギリのトコで足掻く姿すらカッコ良い。

さて、その雅子さんのクールさには、田中美佐子に軍配が上がります。

原田美枝子(のオッパイ)も大好きな女優さんですが、ちょっと声が高いんですね。

それがクールさを消しちゃうんだな。

ちなみに、ドラマ版では田中美佐子(当時40歳)のブラジャー姿、映画版では原田美枝子(当時44歳)の水着姿が拝めます。

ん?ババアにゃ興味無い?

なるほど。



師匠は、ドラマ版では渡辺えりが、映画版では倍賞美津子が演じております。

こちらもドラマ版に軍配かな。

倍賞美津子だと、寝たきりの婆さんを抱え生活保護を受給するという、所帯じみた野暮ったさが感じられません。

寝たきりの婆さんも、憎たらしさ度ではドラマ版での冨士眞奈美の勝ち。(映画版では千石規子)



見栄っ張りな多重債務者の邦子は、ドラマ版では高田聖子が、映画版では室井滋が演じております。

これも、というか『これこそ』ドラマ版の大勝ち!です。

とにかく高田聖子のクズ演技が絶品。

後先を全く考えずに行動する割に、結構鋭いトコをつくなど【邦子=高田聖子】って図式が定着しちゃいました。

室井滋、やり辛かったろうな~。



山ちゃんは、ドラマ版では原沙知絵が、映画版では西田尚美が演じております。

この役は映画版に軍配を上げましょう。

映画版においては、邦子にそれ程ムカつきませんでしたが、そのぶん山ちゃんにムカつきます。

ダンナを殺しといて、死体を雅子さんに押し付け、平然とマンガを読みながらカップ麺をすする姿には、誰もが殺意を抱く事でしょう。



こうしてみると、やっぱりドラマ版の評価が高くなっちゃいますね。

ドラマ版は全11話、一方で映画版は2時間の尺しかないから、仕方ありませんが。

勿論、ドラマ版はドラマ版で中だるみもありましたけどね。

又、映画版は大幅にストーリーを変更しちゃっているので、同一作品とも言い難いかも。

トーンもどこかコミカルです。

警察の捜査が、雅子さんたちにジワジワと伸びて来る感じもありません。

佐竹があっけなく死んじゃうのも、なんだかな~。

てか寛平が佐竹役って、いったい何考えてキャスティングしたんだろ。



『100の演技指導よりも、キャスティング。はまった役者には、どんな名優も敵いませんねェ』永六輔(ニッポンの放送作家・1933~2016)

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