村の樹八島 太郎創風社このアイテムの詳細を見る |
また今年も、終戦の月を迎えます。
八島太郎氏の絵本です。軍事教練を拒否して東京美術学校から退学処分を受けた人。小林多喜二のデスマスクを描いた人。弾圧を逃れて、夫婦でアメリカへ亡命し、アメリカから、日本向けの反戦ビラやパンフを描くことで、反戦運動を続けた人。そうした人が、居た事を誇りに思います。
八島氏には、子どもの頃を描いた絵本作品がいくつかありますが、この「村の樹」も、自分の子どもの頃を、平和の気持ちも込めて、懐かしんで書いたものなのでしょう。生まれた南の島の村の真ん中に流れる川、その川岸に立っている大きな樹。夏の間の、子ども達のその樹を中心にした生活を描いています。虫取り、樹上の家づくり、川遊びなど、あの時代、他の地域でもあったであろう子ども達の世界を、生き生きと描いています。
実際の日本は、その後、戦争への道をひた走る暗い時代を迎えます。作者が、戦後、故国の日本の、未だ、子ども達がのびのびと生きた時代を懐かしんで描かれたその絵は、不思議な魅力を持ってものです。決して、可愛らしい絵ではありませんが。
私達の国には、かつて八島太郎という人がいました。