本所ななふしぎ斉藤 洋偕成社このアイテムの詳細を見る |
何度目かの妖怪ブームのときに、大映で妖怪映画『妖怪百物語』が上映されました。妖怪好きな僕は、早速、弟を連れて映画館に観にいきました。
作品のタイトルの百物語というのは、江戸時代の町人の夏の暑気払いの風習でした。暑い夏の夜に、部屋の中に百本のろうそくを立て、怖い話を一つ話し終わるごとに、ろうそくの火を一本ずつ消していきます。そして、百番目の怪談が終わったときに、部屋の中に訪れる漆黒の闇。もちろん、この催し物の後には、お祓いをしたということです。
映画の中では、先代の林家正蔵、後の彦六師匠が百物語の噺家の役を勤めておりました。
その語りの中で、本所の七不思議が取り上げられていました。「置いてけ堀」でしたね。江戸の本所は、隅田川河口に湿地地帯で、明暦の大火以降に開発されるまでは、ひとけのない、まさに物の怪が跋扈していたような所だったのでしょう。
人が住むようになってから、湿地の水抜きと水上交通のためなのでしょう、本所には、堀が張り巡らされるようになったとのことです。そうした開発後の本所に起こった七つの怪異についての伝承は、時と共に忘れられるかと思っていましたが、こうした絵本が出版されたことも何かの縁なのでしょう。伝えていきたいお話です。
最近は、日本製のホラー映画がハリウッドに逆輸入されることがありました。日本の作品の特徴の一つは、お化けや幽霊などが出現するのにはっきりとした理由がないことでしょうか。祟られたり、呪われたりした人間には、とても理不尽なことです。
そうした傾向は、この江戸時代の伝承である、本所七不思議の中にも垣間見ることができます。怪異の出現に特に理由がないんですね。
さて、七つの怪異譚については、本書を読んでいただくということで、七つのタイトルだけ紹介して、この文章を終わりにしたいと思います。
おいてけぼり、あしあらいやしき、おちばなき しい、たぬきばやし、かた葉のあし、あかりなしそば、おくりちょうちん