1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「拝啓、愛しています」

2013-01-26 12:07:01 | 映画
韓国映画「拝啓、愛しています」を見ました。原題は'그대를 사랑합니다 'と言います。妻に先立たれ、牛乳配達をしながら生計を立てている70歳後半の男性が、牛乳配達の途中で、ひょんなことで少し年下の女性とめぐり合うところから物語は始まります。この時出てくる慣用句が、'옷깃만 스쳐도 인연이 있다(えりだけ擦れても因縁がある)'。日本語の「袖すりあうも多少の縁」にあたる言葉です。老いた男女の、とてもピュアーな愛の物語です。

韓国語に日本語の「分ける」を意味する'나누다 'という動詞があります。'나누다 'は、日本語の「分ける」より意味が広くて、「分かち合う」という意味を含んでいます。韓国語では、'이야기(話)'も、'술(酒)'も、'밥(ご飯)'も、'슬픔(悲しみ)'、'기쁨(喜び)'も、'사랑(愛)'も、'나누다 'します。ともに語り、酒を飲み、ともに食事をし、ともに悲しみ、そして愛し合う。'나누다 'という言葉が、ぴったりの映画でした。 

老人の孫娘が、老人に、「おじいさん、好きな人がいるなら、『당신을 사랑합니다(あなたを愛しています)』と言葉でつたえなければだめだよ」という言葉をかけるのですが、老人は、「'당신(あなた)'は、長年つれそった妻のためにとっておく言葉なのだ」と答えます。そして老人は、新しくめぐり合った女性に、'그대를 사랑합니다 'と愛を告白します。この'그대를 사랑합니다 'が映画の原題なのですが、'그대 'をどう訳したらいいのか、この文章を書いている今も、僕にはわからないのです。

長年寄り添った亡き妻への思いがこもった'당신 'という言葉と、今をともに歩みたいという思いがこもった'그대 'という言葉が、とても心にしみた映画でした。