山から下りて、深田さんの百名山など、著作に目を通すこととしているが、北八ヶ岳の略称を北八(きたやつ)と記載・表現していたが、日本百名山・蓼科山の項には、「蓼科山は俗に北八っと称せられる連嶺の一番北の端に・・」の記載があった。北八ヶ岳の戦後の古典たる山口耀久(やまぐちあきひさ)さんの「北八ッ彷徨」などからも、北八(きたやつ)ではなく北八っ・北八ッ(きたやっつ)と促音で発音し、表記するのが正しいのだろう。これから、深田さんに倣って、北八っ(きたやっつ)と発音し、書き記すことにしよう。が、ワープロで一発変換しないのがつらい。
その北八っの旅では、活火山周辺である以上周囲の温泉も目当てにしていたが、狙いは何と言ってもこれまで素通りしてきた「日本最高所の露天風呂」を有する本沢温泉であった。ここには、内湯「こけももの湯」もあり、内湯としても、立山の室堂(みくりが池温泉や地獄谷など湯舟は4つあるが、)についで「本邦第二の高所温泉」(2150m)である。
そして、何と言ってもこの温泉は、立山と違い通年営業しているので、そういう意味では、年中入れる(行こうと思えばの話ではあるが、)日本一の高所温泉である。
その本沢温泉には、もともと旅の後半にテント持参で立ち寄って、近くのテント場にテントを張ってお湯だけ入らせてもらって帰途に着こう思っていたが、土壇場での計画変更により白駒の池を起点に北に進路をとることにしたため、テント用具と食料の一部を白駒池の青苔荘にあずけて、荷を軽くして天狗岳登頂後、宿に泊まりに行った。素泊まりは、オイラ一人だけだったが、親切にも自炊室(乾燥室)にストーブを焚いてくれた。
連休前の平日とあって、思っていた通り、宿は閑散として、朝まで内湯に2度ほど長く浸かり、翌日夜明け時刻を狙って、徒歩7,8分の露天「雲上の湯」に向かった。あたりはガスが立ち込め、微かに硫黄くさい湯川の沢音と針葉樹のシルエットに囲まれた湯舟で30分、たった一人の至福の時を過ごさせてもらった。こけももの湯と雲上の湯とも硫黄分を含んではいるが、異なる泉質。やや温めで、長く浸かって、一日中山の気を吸っていたかった。
雪の季節訪れたら、どんな感じだろう。人気の山岳地帯だから、ラッセル跡はあるのだろうが、スノーシューで来られるのだろうか。いや、雪が閉まった4月、5月頃はどうだ・・・となんか、考え事しながら、シラベの森をたどり、白駒に戻る。
本沢温泉HPから
http://www.yatsu-honzawaonsen.com/onsen.html
北八っの麓には、魅力的な温泉がいっぱい点在している。帰りは、親湯プール平の蓼科温泉共同浴場に浸かったが、このあたりは、日本列島の地震(津波)と火山をもたらす、太平洋、北アメリカ、ユーラシア、フィリピンの4つのプレートがひしめいていて、新旧日本列島の大きな裂け目、世界第一級の地質構造線で、「パワースポット」に当たるそうなのだ。何やら恐ろしくも、火山の恩恵に浴している「平穏無事」な今という時間をありがたく感じながら、バス時刻まで塩化物・硫酸塩泉に浸かって帰る。
蓼科三室温泉HPから
http://www.chinocci.or.jp/tateshina-mimuro/about.html
登山の起点々に、渋の湯、唐沢鉱泉、夏沢鉱泉、稲子湯などなど、まだまだ、魅惑的な湯宿が点在している北八っ、あと何回、この山域に向かうのだろう。