夏とくれば冬。『世界の涯ての夏』で第3回ハヤカワSFコンテスト佳作となった著者の第二弾。この作品も、ノスタルジックなジュブナイルの雰囲気が溢れている。
都市は菌類に覆われた深い森に侵されている(住んでいるのは蟲じゃなくて蟹だけどな!)とか、『ナウシカ』の腐海のパクリかオマージュかと思えば、それだけでは終わらず、ちゃんとその先も用意されているというところは評価したい。といっても、梗概でも帯でも、そのあたりはネタバレしまくりなんだけれど。
そこは読みどころではなく、やっぱり主人公の少年少女たちが目指す未来が主題だというべきか。
なぜ生きるのか。なぜ死ぬのか。山の向こう、空の向こうには何があるのか。そうした幼年期の素朴な疑問と好奇心が、大人になった今でも、心の奥底からボクらを駆り立てて止まない。そんな焦燥感を呼び起こされる。
そして、たぶん、それこそが、SFを読まずにいられない理由のひとつなんだと思う。
そんな感じで、中学生、高校生時代の読書体験まで思い出させるような小説だった。
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