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神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 郭公の盤

2011-02-20 14:24:50 | SF
『郭公の盤』 牧野修+田中啓文 (早川書房)



『郭公の盤』プロモーションヴィデオ(オフィシャル)


なんとe-novelsでの連載小説の書籍化。

e-novelsといえば、昨今の電子書籍ブームに先駆けて、作家たちが株主となって始めた電子書籍配信プロジェクト。その流れは電子書籍「AiR」(http://electricbook.co.jp/)に受け継がれているものの、今現在、電子書籍だなんだと騒いでいる人たちは、一度、このe-novelsや先行の電子書籍がなぜ失敗したのかを総括しておくべきだと思うんだけどねぇ。


e-novelsでの連載開始が2000年(くらい)ということもあり、2008年から雑誌(ミステリマガジン)連載用にリライトしたとはいえ、社会情勢は当時のまま。右翼系大物代議士はすべての敵(笑)

また、交互執筆での競作のせいか、物語の主軸は右往左往。重大な伏線っぽい記述は放置で、いきなりの飛び技が炸裂したり。とにかくカオス過ぎて凄い。

そのあたりの事情はふたりの紆余曲折曖昧模糊なあとがきにもうかがえるが、よく完結したものだ。


タイトルの“郭公の盤”とは古代日本の呪術的オーパーツ。これをどうにかすると日本がどうにかなってしまうという凄いもの。これを追う物語の中で、イザナギ、イザナミ神話まで遡って、超古代日本文明に隠された秘密が明らかになる。

記紀の神話に加え、厩戸皇子やら平家物語やら耳無し芳一やら、歴史上のあれやこれやをオカルティックに再解釈しなおして、“郭公の盤”の存在をリアルに描き出すという歴史ミステリーの側面と、血潮と汚物にまみれたエログロ描写が見事なバランス。

ただ、紆余曲折のおかげで、どうしても納得のいかない件がいくつか。

外山金四郎の名前はただのギャグだったのか。桜吹雪はどこへ行った?

稗田佳枝って、どう考えたって律子の母親じゃないのか。これとジュンと名付けられた赤ん坊の件はどう繋がっているのか。はたまた繋がっていないのか。

第3の耳を持つ“蓮華”と、眼が耳になる一族は繋がりは無いのか。どう考えたって、初期設定と変わってるだろ、これ。

で、最後のスカイツリー崩壊時に律子はどこにいたんだっけ?

そのほか、あれやこれや……。

カオスの狭間に埋もれて読み落としたものがあるのかもしれないけれど、これが競作の醍醐味であり、問題点だろうか。


それにしても、古代日本は興味深い。東北縄文とか、卑弥呼の墓とか、出雲対伊勢とか、ネタはいくらでもあるのだけれど、もうちょっとフツーの日本人もこのあたりに興味を持ってくれるといいんだけどね。北海道みたいな新開拓地は別として(あそこはあそこでアイヌ神話、ユーカラをなんとかしろと)、自分の住んでいる土地の神様の由来とか、どれほどの人が知っているのだろう。それは宗教的な問題じゃなくって、身近な歴史ミステリーなんだよね。

この物語に出てくる日本の創世神話とか、最初に生まれたヒルコの話などにしても、マニアックな話題じゃなくて、一般常識レベルになってもいいと思うんだけど。


ところで、よく見たら、表紙がネタばれではないか。帯の下でよく見てなかったよ。



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