神なる冬

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[SF] スワロウテイル序章/人工処女受胎

2012-10-22 20:55:43 | SF

『スワロウテイル序章/人工処女受胎』 籘真千歳 (ハヤカワ文庫 JA)

 

性感染症を封じ込めるため男だけが住む社会を舞台に、美少女型アンドロイドが闇に隠された謎と戦うシリーズの前日譚。

いきなり包帯だらけの病室シーンから始まるので、時系列が混乱してしまった。前日譚とはいえ、すでに揚羽がBRUEとして戦いを始めた後の話。これって、さらに前日譚があったような気が……。


隔離された都市の隔離された学園を舞台にしたセカイ系と見せかけ、意識とは何かというところまで踏み込む、実はかなりコアなSF。ちょっと論理展開に飛躍があり過ぎてついていけない部分もあるが、ラノベ的なイメージ先行の割に、SF設定も深く考えられているっぽいギャップがおもしろい。

ラノベ系の装丁と展開に騙されてはいけない。言ってみれば、これはアシモフのロボット物のラノベ的変奏曲である。

アシモフの3原則に加え、第4原則と第5原則を勝手に加えているが、これがどう考えてもラノベ的で無理やりな設定。しかし、これが人工知性の自意識発生の源ということは、ある意味納得ができる。つまり、意識の発生には、工学的な必然性を越えた物語が必要ということなのだろう。

そして、ラノベ的な萌えと厨二病的な燃えを取り去った後に残るのは、全く持ってアシモフ的な、ロボット3原則、そしてロボット5原則が開発者の意図を越えて働き始めるミステリーである。

前2作の本編で描かれる人工知性の反乱も、アシモフ的文脈で読み解くと、行動原理が分かりやすくなる。物語の中で、アシモフが預言者扱いされてしまうあたりも、もっともな話だ。このあたりの展開はオールドSFファンには興味深かった。

しかし、そんな話はオールドファンをくすぐるための付け足しに過ぎず、やはり少女アンドロイドたちのコメディチックな学園生活と、その裏に隠された少女アンドロイドを巡る陰謀が主題。揚羽を襲う過酷な運命に涙しろ。生き急ぐ雪柳の悲劇に涙しろ。


前作に続いて、読み終わってから感想をアップするまで時間がかかってしまった。それだけ消化不良を起こしつつも、無下に切り捨てられない魅力が、この物語には秘められている。

〈スワロウテイル・シリーズ〉もこれで3作目。文章もだんだんこなれてきたのか、それとも俺がこの文体に慣れてきたのか。なんだかだんだん、この世界に嵌って来た気がする。

 

 



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