『孤児たちの軍隊2 ―月軌道上の決戦―』 ロバート・ブートナー (ハヤカワ文庫 SF)
『孤児たちの軍隊 ―ガニメデへの飛翔―』の続編。ガニメデで多大な犠牲のもとに異星人を撃退した主人公の地球帰還後を描く。
ヒーロー扱いされたり、政治の広告塔に使われたりする中で、主人公のジェイソン・ワンダーは戦争をめぐる欺瞞に嫌気がさし、退役しようと試みるが、危惧していた異星人の逆襲に巻き込まれ、再び勝ち目のない戦いへと赴くこととなる。
このところ、読書スピードが落ちていたのだけれど、それを一気に復活させる語り口。これだけ軽い読みやすさなのに、お手軽なだけのヒーローSFではない。歩兵の現実というのは重たいテーマだ。
著者のあとがきによれば、冷戦時代の『宇宙の戦士』、ベトナム戦争時代の『終わりなき戦い』を経て、湾岸戦争や911に代表される対テロ戦争時代の戦争SFを描きたかったとのこと。その試みは充分成功しているといえるだろう。
戦争は大義名分を失い、戦場で兵士は国家や思想のためではなく、家族や仲間のために死んでいく。ゆえに、この物語の主人公は孤児たちであり、戦場で部隊という家族を得て、そして再びそれを失っていく。それがまさしく、原題である“Orphan's Destiny”なのである。
ところがなんと、この物語はさらに続くのであった。これじゃ、戦場における一兵士というには昇格しすぎだ。主人公は異星人の超空間航法を奪い取り、次巻では遂に敵の母星へと赴く。今度は将軍から師団長まで格上げになって。
wikipediaによると、5巻まで出ているようなのだが、これじゃ本当にヒーローものになっちゃうかもね。それでも面白いことに変わりはないのだけれどさ。
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