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[SF] パラークシの記憶

2014-02-13 22:27:04 | SF

『パラークシの記憶』 マイクル・コーニイ (河出文庫)

 

なんと、かの名作『ハローサマー、グッドバイ』の続編。続編といっても、数十世代後の話で、ふたたび厳しい凍期が訪れる頃の話。

主人公たちパラークシの人々は、祖先からの記憶をずっと持ち続けており、記憶は失われることはないという設定になっている。『ハローサマー、グッドバイ』にそんな設定があったっけと思っていたのだが、やはりこれは今回からの新しい設定。そして、これも作品中で解かれていく謎のひとつ。

これはSFであり、ミステリーであり、何より、少年の恋と成長を描いた青春物語である。そして、すべての軸において、名作といえるほどの素晴らしい小説だ。

主人公ハーディの父が殺された事件の謎をめぐるミステリーが物語の牽引役になっているが、それ以上に、この惑星の成り立ちや原住生物の進化の理由、さらには、前作ではほとんど魔法扱いされていたロリンの秘密までもがSF的な論理のもとに明らかにされる。このすべての伏線が一気に収束し、すべての謎が解明されるという様子が実に気持ちいい。

前作から、あまりに瑞々しい初恋の描写のせいで青春小説としての抒情的な部分が大きく取り上げられがちなのだけれど、このシリーズは最初からかなりハードなコアSFだったのだ。それが、今回はさらに輪をかけてSF度が濃くなっている。にもかかわらず、物語は一見、ミステリーだし、初恋の甘酸っぱさは前作同様(いや、前作を超えてラヴラヴハリケーン状態)だ。それでも、実はこれが超弩級のSF大作だったとは、読み進める途中まで気付けなかった。

なんだか、あまりに内容の無い感想になってしまっているが、なにしろ伏線のひとつでも、これが伏線として紹介しようものならば、謎が明らかになった時の驚愕が衰えてしまう。

いったい、何が解かれるべき謎なのかについてすら、ネタバレになるという恐ろしい小説。とにかく、SFファンでなくても、『ハローサマー、グッドバイ』から続けて読むべし。

 



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