神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 天冥の標7 新世界ハーブC

2014-01-18 23:09:29 | SF

『天冥の標7 新世界ハーブC』 小川一水 (ハヤカワ文庫 JA)

 

やられた。そうだったのか。薄々は気づいていたけれども、まさかそんなに直球なネタだったとは。

遂に人類は新天地、ハーブCに到達し、その地は“メニー・メニー・シープ”と名付けられる。こうして、めでたく第1巻へ繋がることになった。

しかし、物語の内容はまったくめでたくない。著者が「今度は『蠅の王』をやる」と宣言した通りの展開。しかもそれは想像を超える壮絶さ。

救世群がばらまいた原種冥王班ウィルスにより絶滅の危機に瀕する太陽系。準惑星のセレスもまた、断末魔の悲鳴を上げる。地下に隠されたシェルターに子供たちだけでもと非難させる人々。しかし、閉ざされたシェルター内では、わずかばかりのロボットたちと、子供たち有志による、混乱と逸脱とエゴと正当化と慈愛と悲哀に満ちた秩序への戦いが始まった。

一部のエピソードは客観的に淡々と記述されるのみで、それに直面した登場人物たちの心情は明かされることが無い。しかし、それを想像するに、壮絶な生き残りのための葛藤があったことは間違いが無い。

ハン・ロウイーも、セアキも、ミゲルも、ユレインも、そして、サンドラも、彼らはすべて最後のシェルターであるブラックチェンバーを生き永らえさせようと努力した。その結果がどうあれ、彼らの歩んだ道を誰も否定することはできないだろう。

はたして、この混乱の中へ放り込まれたとき、自分はどのように生きるだろうか。そして、生き残ることができるだろうか。考えれば考えるほどに恐ろしく、哀しい。

やはり、混乱期には絶対的な独裁制が必用なのかと思う反面、混乱にまかせ、収集がつく程度に人口を減らした方がいいのかとも思ったりする。しかし、実際の場面になってしまえば、そんなことは言ってられないだろう。

そして、彼らにとって僥倖ともいえるのが、高度な科学技術を持った(一部の)カルミアンたちの寝返り。これが無ければ、シェルターは早々に潰れていたに違いない。さらに、ノルルスカインが果たした役割も大きいのだろう。

この混乱を乗り越えた果てに生まれた新天地があれで、これがそれで、あれがそれで……。つまりはすべてがつながったというわけ。次はやっと1巻の続きが読めるんだろうか。それとも、一度は途絶えたリエゾン・ドクターが復活するエピソードがあるのだろうか。

「誰が救世群と話をするのか」という指摘は、確かに重たいよな。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿