「オールタイム・ベストSF映画総解説 PART1」と題して、1902年『月世界旅行』から1988年『ゼイリブ』まで、計250作を掲載。1ページに3作品のミニレビューがずらずらと並ぶのは圧巻。
なんだか見覚えがあるというか、懐かしい気持ちになるのは、大学SF研時代に似たようなことをやったことがあるからだな。規模は10分の1にも満たないけれども、朝から晩までレンタルしたビデオを必死になって(だってレビュー書かなきゃいけないし!)見ていたのはいい思い出。
やっぱり70年代以降だとそれなりに見ているものや、見ていないまでも知っている映画が多いけれど、それより以前は歴史的資料という感じ。でも『カリガリ博士』とか、見たような記憶も、見ながら寝たような記憶もあって、かなり曖昧。
残念なのは、総解説に力を入れ過ぎで、年代による傾向などを俯瞰した記事が無かったこと。とにかく漏らさず数で勝負というのはわからないでもないけれど、それだけの数のレビューから浮かび上がってくる意味を読み解くような記事があっても良かったんじゃないかと思った。
あと、この手のSF映画って、映像が素晴らしいのか、撮影技術が素晴らしいのか、はたまたストーリーが素晴らしいのか、といういろいろな軸で語れると思うのだけれど、そういう分類や分析も面白いんじゃないか。PART2ではそういった記事も期待したい。
特集以外で目についた、というか、気づいたのは、連載小説の多さ。長短含め、なんと7作品が連載小説。いや、なぜか連載コラム分類の『おまキュー』や『あしたの記憶装置』を入れると9作品だ。それに引き替え、読み切りはコミックを入れても3本。しかも一つは分載なので、実質は小説1本、コミック1本だ。
隔月刊になってから、連載は厳しいと言い続けているんだけど、逆行しているこの現状。原稿料の問題や、タイミング的に掲載作品がなかったということならばしかたがないけれど、意図的に連載強化しているのであればやめて欲しい。新規の読者が入りにくいし、継続して読んでいても2か月前のストーリーなんて覚えていないし、コラムだけを立ち読み推奨な雑誌になってしまいそうで。
○「翼の折れた金魚」澤村伊智
生命倫理、差別、教育、親子関係……と、いろいろとテーマが詰め込まれた重たい作品。ただ、設定が極端すぎてテーマ性だけが前面に出過ぎな感じもした。議論のための呼び水として書かれたものであればよいが。
○「鰐乗り〈後篇〉」グレッグ・イーガン
2か月前の〈前篇〉から一気読み。スケールの大きな話で、ちょっと実感がわかない。どこからかアクエリオンの主題歌が聞こえてきそうなラブストーリーと解釈した。で、白熱光とどうつながるんだっけ。
○「と、ある日の二人っきり」宮崎夏次系
今回はピンと来ない。芝生って、ネット用語的な“草生える”を意味してたりする?
ここからは連載。
○「椎名誠のニュートラル・コーナー」椎名誠
エッセイの連載名のまま、いつのまにか連載小説と化していた。それもあって、なんだかよくわからん。
○「マルドゥック・アノニマス」冲方丁
「法と正義を信じる」というのが、これからの対決のキーワードになりそう。
○「プラスチックの恋人」山本弘
笑ってしまうくらいネット論壇そのもの。山本弘本人も参戦している論戦そのものが思い出されて、メタに面白い。
○「忘られのリメメント」三雲岳斗
相変わらず急展開すぎて、どこに向かっているのかさっぱりわからない。
○「マン・カインド」藤井太洋
まだまだ世界観の序の口。