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[SF] 凍りついた空

2015-06-02 23:59:59 | SF

『凍りついた空 エウロパ2113』 ジェフ・カールソン (創元SF文庫)

 

木星の衛星、エウロパを舞台にしたファーストコンタクト小説。

いきなり冒頭から主人公は絶体絶命。おまけに、片方の眼球はつぶされ、頭蓋骨は割れ、手足もまともに動かないのをパワードスーツで無理矢理動かすというかなりグロい状況。

しかも、この主人公は何度治癒して復活しても、また傷だらけにされるという繰り返しで、著者はどんだけサドなのかと。

物語としては、エウロパで発見された生命体はどれだけ知性があるのか、どうやってコミュニケーションしたらいいのかといったことを、遠く離れた地球の外交戦略に左右されながらも現場の科学者たちが苦心するといった内容。

エウロパは木星の潮汐力による摩擦熱で内部が暖かく、海があるかもしれないといわれており、もっとも地球外生命体の存在する可能性が高いとまで言われている星である。そういう環境でどのような生命体が、どのような生態で存在しうるのかという想像は面白いのだけれど、その方面は……。

たとえば、エウロパ人の形体や生態にどのような必然性があるかなどは余り考慮されていないようだ。

彼らにとっての一番の問題は、エウロパ人が知的生命体なのかどうかということ。だからと言って、知性とは何かというテーマが掘り下げられることも無く、クジラ類に対する感情的な議論と同じレベル。

どちらかというと、ファーストコンタクトに対する科学者たちの大変さと、当初の問題が最終的な一発逆転の素になるというストーリー展開の楽しさが売り。