神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] クラーケン

2013-08-15 21:19:00 | SF

『クラーケン(上下)』 チャイナ・ミエヴィル (ハヤカワ文庫SF)

 

世は深海ブーム。きっかけとなったNHKドキュメントと同じグループの、ちょっと前の業績にインスパイアされたマジックリアリズムの大作。

日本でダイオウイカと深海モノが盛り上がる前から翻訳が決まっていたらしいが、なんたるシンクロニシティ。国立科学博物館の深海展へもとっとと行ってこなければ。

 

舞台は現代のロンドン。普通に暮らす人々には知られていないものの、その古き街の陰では魔術を操る魔法使い、占い師、カルト教団、暗殺集団、化け物から超能力者まで、ありとあらゆる不可思議な者たちがしっかりと息づいていた。

いわば、この裏ロンドンが真の主人公と言えるかもしれない。思えば、ロンドンも古い歴史を持つ街なので、こういう怪しげな存在が跋扈しているのは当然だ。東京もいろいろヘンテコな街だが、ロンドンも観光地を外れれば、東京以上にヘンテコな街なのだろう。

そんな世界で、博物館から盗まれたダイオウイカの標本を皮切りに、ロンドンを焼き尽くすハルマゲドン、ラグナロクへとつながる陰謀に巻き込まれた博物館員の物語。

ダイオウイカを神様とみなすカルト宗教とか、knuckleheadの意味通りの間抜け部隊が出てきたりとか、どこまでが本気でどこまでがギャグなのかさっぱりわからず、大真面目に不真面目なことをやっている感が満載。

面白いのは、“社会情勢”や“本人の趣味”により魔術的能力の名称や解釈がSF的、もしくは、コミック的な内容に変わってきたという記述があること。たしかに、物質瞬間移動というより、「スコッティ、転送を頼む。」の方がわかりやすい。

クラーケンというタイトルだが、クトゥルフ関係はそういうネタ扱いで出てくるだけで、物語の筋とは関係なかった気がする。そうではなくって、イカのイカたる所以の部分が重要だったというわけ。

このイカを巡って、Xファイルみたいなオカルト捜査官、ダイオウイカを崇めるイカ教団、ボスが刺青そのものなマジック犯罪集団、博物館の守り神、ロンドンそのもので占いを行うロンドンの語り部、使い魔を束ねる人形の精霊にしてストライキの首謀者、最後は〈海〉まで出てくる始末。あれやこれや、なんやらかんやら、覚えきれないほどの勢力が合従連衡しながら、盗まれたイカの行方を追う。

そんな感じで物語世界での現実とオカルト+SFネタをひたすら詰め込んで、コンデンス状態の嵐の中に巻き込まれたように、数ページ読むたびに平衡感覚が無くなり、頭がクラクラしてなかなか前に進まない。読みづらいというわけではないのだけれど、何が起こっているのか把握するのがとにかく大変。

そしてこのラストシーンがまたすごい。そこでダーウィンを持ってくるのか。そして、世界は生まれ変わるわけだ。転送ビームが死と再生を生み出すがごとく。

正直言って、すべてを理解できた気がしないのだけれど、凄いの読んじゃったなというのが素直な感想。

 

 


特別展マンモスYUKA@横浜

2013-08-15 20:41:19 | Weblog

特別展マンモスYUKA@パシフィコ横浜

 

ヨコハマまで行って、マンモスYUKAちゃんに会ってきた。

オフィシャルtwitterでチケット販売列30分待ちとかツィートされているのを見ていたので、Web割引やらなにやらを振り切って、コンビニで当日券を購入。手数料と割引料金の分を丸損。そのおかげで、スムーズに入場できた。

お盆の平日午前中だったので混み具合が心配だったが、さほどのことは無く、比較的ゆっくり見られた。だいたい1時間半から2時間ぐらい。

まず、ちょっと驚いたのが、マンモスは大きくないということ。確かにアジアゾウに比べたら大きいけれども、アフリカゾウに比べると同じくらい。キバが巨大なせいで、大きさを誤解されている模様。

さらに、マンモスにも種類があるということ。今回の展示はおもにケマンモス。ケ?と思ったら、要するに「毛マンモス」。毛長マンモスのことを最近はこう呼ぶらしい。

ケマンモスならまだわからないでもないが、ケサイというのもいる。これはWebの見どころにも載っているのだけれど、会場にいくまでマジでなんのことやらわからなかった。ケサイ=毛犀なのね。wikipediaではケブカサイの表題で掲載されている。

「けさい」といえば仙台ですがなにか。って、もう昔の話ですが。

肝心のYUKAちゃんは写真撮影禁止の暗い箱の中。フリーズドライされた身体はミイラというより、もっと生々しい死体のようだった。

それよりも、同じように暗い箱に安置されていたケサイのKOLYMAくんの方がすごかった。長すぎる角がそのままフリーズドライされ、眠るような顔つきのまま横たわっていた。ケマンモスよりもケサイの方が希少らしいが、あまりに希少すぎて知名度が低いのが残念。これの方がもっと感動的。

他にも冷凍(ミイラ?)ウマの頭部も展示。こちらは特別扱いじゃなくて普通に展示してあった。マンモスが生きていた時代には、ケマンモスやケサイだけではなく、こうしたウマ(モウコウマ?)やホラアナライオンといった様々な動物たちが、マンモス・ステップと呼ばれる草原に生きていた。まさしく、『はじめ人間ギャートルズ』の世界。

マンモスはツンドラが融け出すのに伴い、次々と発見され、マンモスの牙を採取して生計を立てるマンモスハンターなる人々もいるらしい。ツンドラの大地は氷河のように流れるべくして流れているのか、それとも温暖化のおかげで融け出しているのかよくわからない。

しかし、YUKAのようにフリーズドライになって、脳までが採取できるようになると、マンモスクローンの研究に俄然信憑性が強まってきた。恐竜は無理でも、マンモスの復活は現実的に可能かもしれない。

そして、ツンドラの下には、マンモスステップに生きていたさまざまな動物が眠っているはず。もしかしたら、いずれとんでもない大発見が出てくるのじゃないだろうか。

出口近くには、『はじめ人間ギャートルズ』の原画も展示。すべての展示を見終わった後で、『やつらの足音のバラード』の歌詞を読むと、なんだか涙が出そうになったよ。

 

この日はアイドルの握手会はやってなかった。

 

ケマンモス全身骨格。キバは巨大なわりに、体格はアフリカゾウ並。

 

マンモスの頭骨。どう見ても、モノアイ。でもこれは鼻の孔。ちなみに、現存するアジアゾウもアフリカゾウもモノアイ。

 

これがケサイ。これも現存するシロサイ、クロサイに比べて角が巨大すぎる。

 

いろいろ触れます。レプリカじゃなくって本物!

 

YUKAの故郷、ユカギルの人々はアイヌっぽいと思う。なんだか親近感。これもグレートジャーニーの足跡なんだな。