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神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[映画] ジョン・カーター

2012-04-22 23:05:10 | 映画
ジョン・カーター - goo 映画


(C)2011 Disney. JOHN CARTER TM ERB, Inc.


言わずと知れたあの名作、『火星のプリンセス』の映画化。原作の初版はなんと1917年である。俺が読んだのも中学生の頃だし、すっかり忘れてしまってますが……。

えーと、ウーラは原作では10本足だし、あんなジャバ・ザ・ハットみたいな顔じゃない。とか、細かな違いはどうでもいいけど、原作の雰囲気はそれなりに出ていたんじゃないか。

何と言っても、地球側の年代を、ちゃんと19世紀末に持ってきたところがいい。スチームパンクと大西部というファンタジックな過去という異界のさらに向こうの異界という距離感が、ファンタジーをすんなりと受け入れる下地になる。これが、21世紀に火星に飛んだらこうだったという話では、ちょと嘘臭さが鼻についてしまう。

ジョン・カーターの力が火星の重力の低さから来るところも、しっかり描画できている。そのために、スーパー能力としてはジャンプ力ぐらいしか取り柄が無いところもばっちりだ。


問題は、原作においてはすべての原点でありながらも、映画としては『スター・ウォーズ』や『アバター』の2番煎じになりがちなところですかね。砂漠が舞台というのも、『スター・ウォーズ』、『砂の惑星』、そして『ジョン・カーター』と、原作と映画が逆順になってしまっていて、なんとなく残念な感じ。

砂をもうちょっと赤くして、独特な雰囲気を出せればよかったのかもしれないけれど。

さらに、デジャー・ソリスがおばさん過ぎ。事前には聞いていたけれど、やっぱりこの目で見てもおばさん。火星のプリンセスじゃなくって、火星のクイーンの貫禄だよ、もう。

緑人族は、4本の腕をもうちょっとビジュアル的に生かせなかったものか。上下の腕がおんなじ動きをしていたり、「俺の右腕」とか言っちゃったり(それはどっちの右腕だ)、いまいち中途半端。

とはいえ、なんだかんだ言っても、とにかくあの火星シリーズの映画化というだけで見る価値ありの映画。SFファンにとってはね。でも2Dで十分だったかも。



[映画] おかえり、はやぶさ

2012-04-08 23:47:46 | 映画
『おかえり、はやぶさ』 - goo映画


(C)2012「おかえり、はやぶさ」製作委員会


“はやぶさ”の映画は3作同時に作られていたのだが、その3作目。

実は予告編の段階では、“はやぶさ”のすごさをストレートに伝えてくれそうな気がして、一番期待していた。まえだまえだ(兄ちゃんの方?)という子供の視点を持って、単純に「すげぇ!」という描写があるかと思って。しかし、すっかり期待外れ。本当にすべてが期待外れで、なんとも言いようがない。

なんでお母さんが病気にならないといけないんでしょうか。そんなことがないと、“はやぶさ”を感動的に描けないんでしょうか。父親と息子の葛藤を無理矢理にでも描かないと、“はやぶさ”の感動を描けないんでしょうか。

宇宙空間で機械の作動音がしているのは、まあ有りがちだからしょうがないにしても、ロケット打ち上げのシーンでも音がずれないとか、スタッフは実際の打ち上げ見たことないんだろうか。もう、科学的、工学的な部分はすべてダメダメで、ウーメラ砂漠のシーンも合成バレバレ。なんというか、悪い意味でのテレビ東京クオリティ。もう、馬鹿さ加減を笑うことしか楽しみがない。

なんというか、日本映画の限界を見せられたような気がして気分が悪かったですよ。


結局、3作見終わって一番良かったのは、最初の『はやぶさ/HAYABUSA』だったかもしれない。竹内結子の役は不要だったにせよ、竹内結子の演技自体は非常によかったし、『はやぶさ君の冒険日誌』は“はやぶさ”ファンには有名なので、巷の「はやぶさがしゃべるなんて」っていう批判は失笑ものだからな。

とは言え、『はやぶさ/HAYABUSA』が映画として面白かったかどうかは微妙なところだし、『はやぶさ 遥かなる帰還』はプロジェクトXの出来損ない。『おかえり、はやぶさ』にいたってはテレビ東京の2時間ドラマレベル。←アニメではなくてドラマというところで察しろ!

“はやぶさ”の何がすごかったを知りたい人は、こんな映画なんか見ないで、ニコニコ動画で“はやぶさ”を検索した方が勉強になるし、泣けるし、笑える。つまり、日本の映画人はニコ動の素人に負けっ放しなんだよ。

ちゃんとしたSFの人を監修に付けるだけで随分変わったと思うんだけど、それはSF作家のステータスがいかに低いかの証拠でもあるわけだよな。たとえば、野尻抱介(一部には空飛ぶパンツの人とか、尻Pとかの方が分かりやすいSF作家)がウーメラ砂漠で何をやったかということを知っていれば、それだけで2時間の映画にできると思うんだけど。はやぶさ映画のスタッフは誰もそんなことに興味なかったんだろうな。

[映画] ヒューゴの不思議な発明

2012-03-11 17:15:54 | 映画
『ヒューゴの不思議な発明』 - goo映画


(C)2011 ParamountPictures. All Rights Reserved


見終わって思ったのだが、看板に偽りありだ。

あの自動人形(映画中ではオートマトン!)はヒューゴが発明したわけではないので、『ヒューゴ“と”不思議な発明』とすべき。どうしてこんなタイトルにしてしまったんだろう。原題だと『Hugo』だけだから、『少年ヒューゴ』が妥当なところか。あんまりヒットしそうなタイトルではないけど。

さらに、予告編で流れる不思議な雰囲気はファンタジー映画を思わせるんだけど、まったくそんなことはなくって、どちらかというと映画の黎明期を支えた男の挫折と復活を、少年ヒューゴの目から語らせるといった映画讃歌のヒューマンドラマ。このあたりもミスリードだと思う。

そのミスリードにまんまと乗っかって見に行った俺も俺なわけだが。何しろ、ヒューゴはヒューゴー賞に名を残すSFの父、ヒューゴー・ガーンズバックと同じ名前なもので。


しかし、映画自体はとてもよくできた作品だと思う。さすがにそのストーリーであそこまでの自動人形を持ってくるのはどうかと思うけど。かつての特殊撮影のチープな(失礼!)作りから考えても、あの性能は高すぎ。あれができるんだったら、たとえば後から出てくるドラゴンは人間がロープで動かすんじゃなくって、ぜんまい仕掛けのロボットにできただろう。


この作品は、映画ってすごいよね、小説もすごいよね。エンターテイメントって、ひとを感動させて、夢を観させてくれる素晴らしいものだよね、ってことを観客に語りかけてくる映画だと思う。

そしてまた、そんなすごい男をスポイルしてしまった戦争の悲劇と、その男を復活させた夢の力の強さが描かれている。役割を果たすこと、目的を見つけること、それがいわゆる夢となり、少年ヒューゴは“修理すること”を自分の夢として見つけ、かつての天才を修理することになる。


ドラマとしては、たぶん家族の話なんだろうけど、こっちはちょっと弱いかもしれない。ヒューゴは孤独な少年で孤児院に送られることを極端に恐れている。そして、ヒロインのイザベルもまた実の両親を失っている。最後のセリフ「父親のオートマトン」に込められた多義性には、ちょっと感動した。


さらに、映画の黎明期に特殊撮影という魔法を作り出したジョルジュ・メリエスを称賛し、3D映画という新しい技術によって彼にせまろうとしたマーティン・スコセッシの挑戦ともいえる。

初めて映画を観た観客が、ただ駅に到着する蒸気機関車のフィルムを見ただけで、轢かれるではないかと怯え、興奮したように、3D技術によって蒸気機関車のリアリティを再現し、観客の度肝を抜こうとした挑戦だったのだろう。その結果は、映画館で見て確認して欲しい。


#俺は別に2Dでも良かったと思うけどね、この映画。



[映画] TIME/タイム

2012-02-18 19:01:33 | 映画
『TIME/タイム』 - goo映画


(C)2011 TWENTIETH CENTURY FOX


なかなか面白かった。

基本的に通貨を時間に置き換えた世界の『俺たちに明日はない』。しかし、通貨が時間という設定がうまく活かされた演出が多く、ありきたりな映画では終わっていない。

お金は大切だけれども、一文無しになった時にすぐに死んでしまうわけではない。しかし、この世界では、自分の時間が無くなってしまうと即アウト。なんとかして時間を稼がないと、自分の死=停止までの時間が目に見えている。この焦燥感がすごい。

毎朝目覚めるたびに残り時間を確認する。そして、わずかな時間を稼ぐために工場にいけば、時間切れになった死体が転がっている。しかし、だれもその死体を片付けようともしない。この世界に生きることを想像しただけで怖い。

なんでそうなったかというと、不老不死が実現してしまったために、すべての人間は25歳で老化が止まる。しかし、それだけでは人間が増えすぎてしまう(死なないから)ために、残り余命が設定され、通貨として遣り取りされるようになったという。

もちろん、時間が通貨である以上、どこかで時間の流通は管理される。そして、時間をふんだんに持つ富裕層と、時間を毎日稼がなければならない貧民層が生まれる。彼らは住むエリアも制限され、時間の物価指数は富裕層に管理される。人口を一定に保つためには誰かが死ななければならず、それはスラム街の人々でなければならないからだ。

ここまで説明すればわかると思うが、この映画が投げかけるメッセージは「時間は大切」とか、「時は金なり」といったことでも、「最近の人々は時間に追われている。もっとゆっくり生きよう」ってことでもない。これは明らかに、現代格差社会のひずみを皮肉り、もっと資産を分け合ってみんなで生きようというメッセージと、そのことがいかに困難であるか、そして、それでも無鉄砲に戦い続ける若者を描いた作品なのだ。

生きるのに倦むくらいの時間=使い切れないほどの金を手に入れる必要があるのか。人々と分かち合って生きることはできないのか。

主人公の二人が金を手に入れ、いくらスラムでばらまこうとも、それはスラム街の人々を幸せにはせず、金持ちたちは物価を釣り上げることによって対抗する。スラム街の中では持てる者と持たざる者が生まれ、持てる者は必然的に犯罪の被害者になってしまう。

時間の格差社会は資本の集中や階層の固定化といった現実の問題そのままで、貧者に分け与えるだけでは何も解決しないのも一緒。しかし、時間だからこそ成り立つセリフは、お金に戻してみても容易に納得のいくセリフなのかどうか、考えながら観るといちいち興味深い。

ひょんなことから大金を手に入れ、格差社会の転覆を狙う主人公の若者。その若者に惹かれ、犯罪に手を染める富豪の娘。娘の存在よりも現在の社会=既得権益を守ることに必死な大富豪。スラム出身でありながら、秩序を(正義ではない!)守るために命を掛けるタイムキーパー。それぞれの想いが物語を紡ぎ上げ、永遠に25歳の青春が駆け抜ける(笑)

たしかに、時間を通貨として使うための無理やりな設定が無いわけでもないが、そこは現代の御伽噺ととるのでも、仮想世界でCPU Timeを取り合っているとでも、如何様にも解釈可能。あんまり突っ込まないように。


ちなみに、主演はジャスティン・ティンバーレイク。こいつはどうでもいいのだが、相手役のアマンダ・サイフリッドが良い! ちょっと若作り風なメイクなのに、脱いだらすごいんですのエロカワ系。惚れたわ。



[映画] はやぶさ 遥なる帰還

2012-02-14 21:53:50 | 映画
『はやぶさ 遥かなる帰還』


(C) 2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会


はやぶさ映画はこれが2本目。全部で3本作られるらしいが……。

この映画は、いったいどの層に向かって、どのような物語に、どのようなテーマを載せて語ろうとしているのかがさっぱり見えなかった。

渡辺謙が主演ということでか、平日午前の映画館は高齢の観客が多かったのだが、イオンエンジンやリアクションホイールが何なのかわかって見ていた人はどれくらいいるんだろう。その辺の細かい説明もなく、淡々と話が進むのが気になった。

メーカー側技術者との衝突や小さな町工場の関わりなど、官民一体の開発ドラマを主体にしたかったのかもしれないが、いかんせん、エピソードが細切れで起承転結や物語の盛り上がりがまったくない。

プロジェクトXのようなドキュメンタリーならばそれでもいいのだろうが、それだったら最初からドキュメンタリーで撮ればいいわけで。

小ネタは随所にあり、ネットや講演会で見聞きした内容からしても割と事実に忠実なんだと思うが、それはわかっている人向けであって、しかもわかっている人にとっては二番煎じの再現フィルムに過ぎないので、映画として見る価値があるのかどうか。

日米の宇宙開発予算の違いや、財務省との厳しい予算交渉のエピソードも、それだけで一本映画が作れるくらいだと思うのだが、小さなエピソードのひとつとして埋没してしまっていて、この映画を観た有権者が宇宙開発予算に好意的になってくれるほどのものではなさそうだ。

正直言って、この映画を見て感動して泣く人がいるとは信じられない。これでは、はやぶさが成し遂げた偉業の凄さも、満身創痍で帰還して燃え尽きた感動も、まったく伝わらない。


これまでのはやぶさ関連コンテンツで、一番泣いたのも一番笑ったのも、ネットに転がっている“はやぶさ”Flashだ。『今度いつ帰る』も、『こんなこともあろうかと』も、『はじめてのおつかい』も、何度見ても泣ける。本当に、マジ泣ける。

当時、まだニコ動が無い頃から無名のアマチュアが、はやぶさの帰還を祈って作ったコンテンツたち。日本の映画界は、いくら金を掛けても、いくら時間をかけても、たとえアカデミー賞俳優を使っても、これらのアマチュアコンテンツにはかなわないということが証明されたという認識でいいのか。それならば、やっぱり映画なんていらないでしょう。


結局のところ、これはNECの宣伝映画だと思っていいのか。そう思うくらい、やたらとNECが出てきた。はやぶさに協力していた企業はNECだけじゃないと思うんだけど。

そして、どうにもならなかったリアクションホイールには、でかでかと“made in USA”の文字が。これは、リアクションホイールも日本製だったら、誰かが「こんなこともあろうかと」と、秘密の仕掛けと神業運用でなんとかなったはずだというメッセージと思っていいのか。だったら、そういう物語の作り方もあっただろうに。


とにかく、何のために作られたのかまったくわからない映画だった。おもしろくないわけでもないのだけれど、誰にも見る価値の無い映画だと思う。



[映画] 宇宙人ポール

2012-01-16 00:00:14 | 映画
『宇宙人ポール』


(C)2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED



twitterにさんざん書いた上にアップを忘れていたので、もう書かなくてもいいかとも思ったけど、とりあえずblog entryとして残しておくことにする。



その手の人たちにはあまりに有名なロズウェル事件。このとき、本当に宇宙人が捉えられていたら。そして、その宇宙人はアメリカの影でアポロ計画や科学技術発展に貢献し、さらに人類と宇宙人の友好的な邂逅のために、自分をモデルにした映画製作にも参加していたら……。

ブラックコメディの国、英国からやってきたワナビーな二人組、グレアムとクライブは、サディエゴのComi-conに参加するついでに、キャンピングカーでアメリカ西部のエイリアン名所巡りを計画する。

その愉快な旅の途中、エリア51近くのハイウェイで事故った黒塗りの車を救助しようとした時、車の中から現れたのはメン・イン・ブラックどころか、グレイ型宇宙人のポールだった。

自分の星へ帰るため軍の収容施設を抜け出して来たポールを、ランデブーポイントの“見ればわかる場所”まで送り届けるために、彼らの珍道中が始まる。



主人公二人はイギリスのオタクで、彼らに対するアメリカ人の扱いはナードとゲイ(もちろん彼らはゲイではない)へのあからさまな差別と偏見に満ちている。しかも、キリスト教原理主義者まで出てきてしっちゃかめっちゃか。この辺りはアメリカを外部から見られる視点ならではのものなのかもしれない。

社会派ネタはその程度で、あとは映画とコミックが中心のオタクネタ満載。スピルバーグネタが多いのだけれど、細かいところまで含めると本が一冊書けるんじゃないかというくらいのネタだらけ。たぶん、オタク度の濃さによって笑いどころが変わってくるので、いろいろ判定に使えます(謎)

それなりの濃さのわたくしといたしましても、冒頭のComi-conからニヤニヤしっぱなしの心地良い映画でした。



twitterに書いてたのはこんな感じ。もっとあるけど。

冒頭とラストの舞台となるサンディエゴcomic-conは実在するコンベンション。

彼らがめぐるエイリアン名所もことごとく実在する。HISとかでツアー組んでくれたら、数千人が行くレベル。

見ればわかるという目的地は確かに見ればわかるのだが、若い人は知らないんじゃないか?

そういうネタがほとんど解説されない。でも、コメディとしてよくできているので、オタクじゃない人も疑問に思わない。ってか、ただのネタだと思ってる?

スピルバーグの映画はポールのアイディア。きっとルーカスもそう。

Webとかのキャスト紹介で、シガニーは完全にネタバレ。

ソーセージは食べる癖に死んだ鳥は食べない。あと、M&M'sも好き。

ID説信者の改宗にはスパゲッティーモンスター教より強力。ラーメン。

育ちきった悲劇のヒロインにも優しい。年増好みかもしれない。

いつも半ズボンを穿いているが、上半身は裸。見えなくなる時には全裸になるがあの下には下着を穿いてないので、たぶんあれは半ズボンじゃなくて、大きめのパンツ。

この映画が作られらた理由は実在するエイリアンに出会っても気絶しなくなるように大衆を教育するため。(そうだろ、白状しろよCIA!)

右隣りでポップコーンを食い続けるカリポリ夫婦も、左隣のちょっと臭うおたく(笑いのツボが似てる!)も、真後ろのリア充カップル(彼女談:なんかよくわかんなかった)も気にならないくらい笑えた。



最後にちょっと蛇足。巷では泣ける映画みたいに言われているけど、実は自分としてはそこの部分の評価は低め。そもそも、ポールのあの特殊能力は不要だと思うんだよね。あんなのが無くても、十分泣かせるストーリーにできたと思う。エイリアンは特殊能力を持って当然みたいな考えがあるんだろうか。生身の生命体なら、機械無しじゃ何もできないくらいでもよかったと思うんだけど。



[映画] ロボジー

2012-01-15 22:54:24 | 映画
『ロボジー』


(C)2012 フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ


ロボット博で発表直前にぶっ壊れたロボットの代わりに、その場しのぎで作ったキグルミロボットが人命救助をしてしまったばっかりにマスコミで評判になり、引っ込みがつかなくなって……というSFでもなんでもない映画。ゆるーい感じのコメディでした。

通天閣ロボットやら、出渕裕デザインのHRP-2だのムラタくんだの、実在ロボットもちょっと出てくるけど、あんまり詳しくは紹介されないのでいまいち。大学生たちがロボットについて白熱した議論を行うシーンでも、なんだか単語が言い馴れなさ見え見えの某読みでもう少し頑張ってほしかった。

ヒロイン役の吉高由里子は可愛いんだけど、やっぱり年相応。あの役なら、金朋までとは言わなくとも、童顔女優じゃなきゃまずいでしょ。メイクや髪形を工夫していても、ちゃんと普通に大学生に見えるぞ。ただ、端役のエキストラと違って、ロボットおたく役には違和感なかったかもね。普段からあのしゃべり方だから、DCブラシレスモータとか型番とか言っても、そこだけ棒読みになってるようには聞こえない(笑)

主演のミッキー・カーチスじゃなくて五十嵐信次郎は確かに怪演。うざい耄碌爺にすっかりはまり役だった。彼の演じる鈴木さんは居場所のない独居老人で、フラストレーションが溜まっていたところに天職が見つかって調子に乗っちゃった役どころ。開発側に肩入れして見ると、本当にうざいです、あのじじい。しかし、若い人にはミッキー・カーチスなんて言ってもわかんないだろうな。ラストでかかる「Mr. Robot」は五十嵐信次郎版ってことで、やっぱりちょっとじじ臭かった。

ロボットネタやら、コスプレネタやらいろいろあって面白かったんだけれど、やっぱりこれは一般向けかな。濃い人にはちょっと物足りない。腹をかかえて笑うほどではなく、くすくす笑いが絶えないゆるーいコメディで、ラス前にちょっとどんでん返しあり。でも、やっぱり鈴木さんはうざいじじいだ。あのラストシーンにその笑顔は無いだろ(笑)



ああ、そういえば、『リアル・スティール』の子役が日本に来たとき、ロボジーこと「New湘南」に会ってるんだけど、あれってキグルミだってばらしてなかったんじゃなかったっけ……?


[映画] リアル・スティール

2011-12-13 21:06:45 | 映画
『リアル・スティール』 - goo映画



(C)DreamWorks II Distribution Co. LLC


超悪男子! 苦痛末期! 極楽拷問!

一部で話題になっているあのロボットは主役メカではありません。こいつ(Noisy Boy)は主人公のオヤジが息子の養育権を叔母夫婦に売り渡した金で買った型落ち格闘ロボット。日本やブラジルを経由してきたせいで無様なカスタマイズを施されているも、基本性能はちゃんとしていたので、前座試合で勝てばそれなりに稼げたものを、意地でメインイベントにぶち込んだものだから敢え無く敗退。スクラップと化したのであった。残念。

これに変わって親子が手に入れたのが、マックスがスクラップ置き場で拾ってきたATOM。名前をカタカナで書けないのは、大人の事情。向こうじゃAstro Boyだからな。

このATOMは本来ならばロボットバトルに参加できないG2ロボット。バトル用ロボの打たれ役でスパーリング専用機。しかし、これがモーションキャプチャによる模倣機能(シャドウ機能)を持っていたことから、話はうまい方向へ転がり始める。

とにかく打たれ強いので、防御は抜群。これに元ボクサーのオヤジの攻撃パターンと、息子のダンスセンスをミックス。ついでにNoisy Boyの4ヶ国語音声認識システムを搭載して、最強ロボットATOMが誕生した。

なんでもありのロボットバトルのはずなのに、ボクシングスタイルでの応酬が多くなるのがアメリカ人の想像力の無さなのだが、今回はオヤジのボクシングパターンをロボットにコピーするという設定なので、その描写には違和感が無い。

ロボットバトルが盛んになるという背景も、昨今のUFC流行りを取り込んで、より残虐なバトルを観客が望んだ結果、人間が試合をしなくなったというのも、ある意味皮肉が効いている。

その残虐バトルを望んだ結果が、冒頭のロボットvs猛牛(リアル)の戦いなのだろう。しかし、この冒頭のバトルからしてものすごい。牛にタックルしてねじ伏せるなんて、どうやって撮ったんだ、あのシーン。まさか、牛までフルCGでもあるまい。

趣味の都合上(笑)ロボットバトルにばかり目が行ってしまうが、ダメ父親チャーリーと、気の強い息子マックスのドラマも泣ける。予定調和で裏切りの無いストーリーだが、それだけに、あきらめるなというメッセージがストレートに伝わってくる。

ロボットATOMの演技(!)もいい。ATOMの顔はただの金網なのだが、この金網が微妙に歪んでいることでいくつもの表情を見せることになる。本当に歪み位置を微妙に変えたりしているのかもしれないが、これがすばらしい。マックスが最初にチャーリーに会った時の嫌そうな顔が、どんな風に変わっていくのかを見ていても面白い。

そして、超悪男子に代表されるロボット・ニッポンのリスペクト。Noisy Boyを操作する音声コマンド、「ミギ、ヒダリ、アッパカットニカイ!」にも笑った。最後のMIDAS vs ATOMでマックスが着てたTシャツにカタカナで「ロボット」とか。敵のエンジニアが日本人っぽいとか(俳優は中国系?)、ロボット=ニッポンなリスペクトに、なんだか申し訳ないぐらいだった。日本のロボット産業は期待に応えてもっと頑張らないとね☆



[映画] インモータルズ

2011-11-13 23:19:45 | 映画
『インモータルズ -神々の戦い-』 - goo映画



(C)2010 War of the Gods, LLC. All Rights Reserved.


古代の神話は大好物である。日本神話もエジプト神話もマヤ親神話もアイヌのユーカラも、もちろん、ギリシアにローマ、オリンポスの神々は高千穂の神々とお友達!

さて、この映画もギリシア神話を下敷きにした3Dアクション活劇……のはずが、なんじゃこりゃ。

かなり大々的にキャンペーンを張っていて、予告編もすげぇーって感じだったのに、予告編を越えるシーンが無いとは。最近、こういうの多くないですか。短期間に観客を集めることができても、期待を裏切って長期的には逆効果だってことをなぜ気付かないのだろう。

主人公のテセウスはミノタウロス退治の勇者で、妻はパイドラ。そこまではいい。というか、それだけ。

テセウスはなぜか農奴の息子だし、パイドラはオラクルかよ。タイタンは巨人じゃなくて闇の戦士だし、牛の仮面をかぶった男は出てくるがミノタウロスは出てこない。

敵役のハイペリオンは、疫病で妻子を亡くしたことから、神々を信じなくなった暴君として描かれているが、ギリシア神話のハイペリオンってタイタン族じゃん。おまけに、神々の中にヘラクレスがいたり、この脚本家はいったい何を考えているのか。神話に対する敬意も何もあったもんじゃない。

インモータル(不死)である神々が、タイタン族との戦いの中で死に至るという皮肉な衝撃を描きたかったのかもしれないが、ギリシア神話という異文化をキリスト教的光と闇の戦いにしか解釈できないあたりが、キリスト教徒の発想の限界なのだろう。

テセウスが住む村の神殿は地下迷宮で、テセウスは自分の足を傷つけ、その血痕を頼りに地上へ戻るなど、ギリシア神話を元にしたと思われる小ネタはいくつかあるのだけれど、まったく神話とは関係ない別物の物語。しかも、面白くない。

しかも、字幕を訳した人も良くわかってないのか、肝心のゼウスが「mortal」と呼びかけるところを、単純に「人」と訳してどうする。そこはちゃんと「死すべき者よ」とか、「死すべきさだめよ」と訳さないと、意味がないだろうが。

先日見た『三銃士』には原作に対する愛と敬意があり、あれだけ派手に改変しながらも、大枠の話は変わっていなかった。しかし、『インモータルズ』はただのインスパイア、パクリ、盗作。まったくもって、程度が低い。

映像的には飛び散る血飛沫やぱっくり割れる身体が3Dで見られるので、その手の趣味の人には好評なのだろうが、はっきり言ってそれくらいしか見るべきものがない。しかも、肝心の3Dも戦闘シーン以外はわざとらしすぎる。手前に物を置いておけばいいというやっつけ感満載の演出。

どうしてこんなものを大々的にプッシュしようとしたのか全く理解不能だ。金返せ。



[映画] 三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船

2011-11-13 11:14:45 | 映画
『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』- goo映画


(C)2011 Constantin Film Produktion GmbH, NEF Productions, S.A.S., and New Legacy Film Ltd. All rights reserved.



これは楽しい映画だった。

誰もが知っている古典を現代風にアレンジして生き返らせる。珍しくも無い趣向だが、なかなかうまくはいかないものだ。しかし、小手先でストーリーを変えるのではなく、大まかなストーリーはそのままに、人物設定や演出を大幅に変え、3D時代にふさわしいアクション映画に変えてしまった。

冒頭のミニチュアによる歴史背景説明とか、枢機卿の部屋の世界地図のインテリアとか、まさしく3D映えさせようとする演出がそこかしこに。(見たのは2Dだけどさ!)

三銃士とミレディの登場人物紹介が、絵画調というか劇画調でこれまた細かい演出。この3人の男と腹黒い美女の構成って、思いっきりルパン3世じゃないか。ミラ・ジョボヴィッチは峰不二子。格好良くてセクシーで腹黒。何度も言うけど腹黒過ぎ。さすが、不二子ちゃ~ん。

ちょいブサなアンヌ王妃と超絶美人の侍女コンスタンスなんて絶対に狙ってやっただろ。何、その相対効果。もう、ルイ13世とのイケてないカップルっぷりが涙を誘う。

ダルタニアンは餓鬼のくせして自信家で無鉄砲で阿呆。どうしてこいつが三銃士に気に入られたのかわからない。それに比べて、三銃士の渋い男っぷりよ。この映画ではバッキンガム公とミレディにやられたり、銃士隊が解散して無職の飲んだ暮れになってたりとさんざんな設定だが、やっぱり最後は格好良く決めてくれる。

敵役となるバッキンガム公はなんとオーランド・ブルームで、彼の乗る飛行船は船首に骸骨髑髏が! それ、なんてフライング・ダッチマン号(笑)大砲ばんばん撃ち合う空中戦は、ほんとパイレーツなんとかさながら。さらにラストシーンでは東インド会社の大艦隊が!(違)

SF的には、サブタイトル通りダヴィンチの飛行船(これダヴィンチの設計したやつじゃないじゃん)が目玉。スチームパンクの世界というか、ファイナルファンタジーの世界。あの雲へ入れ!ってラピュタみたいなシーンも。

そういえば全体的に演出がアニメっぽいかも。しかも、日本のアニメ。これは日本の若者に受けるでしょう。ああ、でも監督のポール・W・S・ アンダーソン は「ボンドガール」って言ってんのか。


ところで、この映画にはロシュフォールという名前の悪役が出てくるが、ロシュフォールと言えば有名なベルギービール。さらに、バッキンガム公が掲げる白地に赤十字は言わずと知れたホワイトシールド。一方、三銃士が「酒だ酒だ酒だ」と呼ぶのはワイン。つまり、この映画はワインによるビール退治の物語だったのだ。ΩΩΩ<なんですってぇ!