goo blog サービス終了のお知らせ 

碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

テレビの「横並び一斉報道」

2009年05月15日 | メディアでのコメント・論評

昨日発売の『日刊ゲンダイ』(15日付)。

特集記事の「事が起きると一斉に大騒ぎする、最近の芸能マスコミは異常だ」で、コメントが掲載された。

記事全体は、SMAP草メンバーの事件での過熱ぶり、取材ヘリまで飛んだ忌野清志郎さんの告別式、森光子さんの2000回公演へのスポットの当て方など、なんだか「右向け右!」みたいなテレビの“一斉報道”が目立つ、といった内容だ。


記者さんの取材を受けて、私のコメントは・・・

「テレビはいくらなんでも横並びで騒ぎ過ぎ。本当に国民が知りたがっている出来事なのかどうかも疑問ですね」

「清志郎さんが亡くなったことを追悼するのはもっともだし、森さんを祝福するのも結構なことです。ただ、一斉に大騒ぎするテレビはあまりにもおかしい。どこか気持ち悪い」

「国民のすべてが清志郎さんや森さんのファンというわけではないのに、テレビが連鎖的に騒ぐことで、さも一大事のようなイメージを膨らませている」

「国民の関心事とはいえ、テレビが過剰に騒いで“お祭り化”するのはいかがなものか。メディアはもっと冷静な視点を持たなければいけません」

「芸能の話題ではありませんが、“新型インフルエンザ”についての報道もうそうでした。感染が確定したわけでもないのに、感染が疑われている人をまるで犯罪者のように報じていた」

「テレビが飛びつくことで、騒ぎを大きくしてしまうのです。横並びで一斉に騒ぎ立てる最近のテレビ報道は、社会的な“気分の流れ”やムーブメントをつくり出してしまっている。危惧すべきことですよ」


つまり、何かネタになる事象が発生した場合、横並びで集中的にテレビ報道が行われ、まるで「世の中で起きているのはその一件だけ」みたいな空気が生まれることに対する違和感である。

「他に伝えるべきこと」はないのか。

“目をそらす”という意図の有無はともかく、「伝えるべきだが、伝えないでいること」があるんじゃないのか。

そんな気がする。

まあ、しばらくは民主党の代表選挙だろう。

これも政策や論点を明確に伝えてくれればいい。決して2人の候補者の「趣味」や「得意料理」が知りたいわけじゃない。

年に3万2千人もの人が自殺しているこの国の、政権交代に関わる報道を、<ワイドショー的お祭り騒ぎ>に終始して欲しくないのだ。

NHK・ETV2001『問われる戦時性暴力』問題

2009年05月14日 | テレビ・ラジオ・メディア
このところ、NHK「ETV2001・シリーズ戦争をどう裁くか『問われる戦時性暴力』」をめぐる問題で動きがあった。

旧日本軍の従軍慰安婦問題を取り上げたNHKの特集番組で、8年前の01年1月に放送されたものだ。

まず、先月末に、放送倫理・番組向上機構(BPO)の「放送倫理検証委員会」が、この番組に「放送倫理上の問題があった」と認定。

また、番組制作部門の幹部が、放送直前に番組内容を政治家に説明したことに関しても「公共放送にとってもっとも重要な自主・自律を危うくし、NHKに期待と信頼を寄せる視聴者に重大な疑念を抱かせる行為」とした。

12日になって、NHKの福地茂雄会長が、「今後は番組制作に携わる職員が政治家に個別番組の説明を一切行わない」という方針を明らかにした。

これはこれで評価できるが、視聴者には、改めてきちんと説明する必要がある。

しかし、NHKは「検証番組」を制作するつもりはない、という。

本当は「検証番組」が作られるべきなのだ。テレビで起きたことに、テレビ自身が決着をつけるためにも。

一番いいのは、当事者が一堂に会して、一種の公開シンポジウムを行うことだ。それを含めた番組とする。

まあ、無理なんだろうけど。


番組はなぜ改ざんされたか―「NHK・ETV事件」の深層

一葉社

このアイテムの詳細を見る



小林信彦さんのエッセイ集『B型の品格』

2009年05月12日 | 本・新聞・雑誌・活字
年に一度、これほど出るのを楽しみにしている本もない。

小林信彦さんのエッセイ集である。

「週刊文春」に連載されたものが、1年分溜まると、出版されるのだ。

今回の『B型の品格』で、実に11冊目。

何が面白いかといえば、やはり小林さんの“目利き”ぶりに尽きる。

特に、小林さんの“映画の評価”には絶大な信頼を寄せている。

アカデミー賞について、予測と結果を記した文章など、いつも感心する。

当たったものだけでなく、外れたものも含めて、その理由を読むと、“映画の現在”が理解できるのだ。

早い時期から、堀北真希や綾瀬はるなに注目し、彼女たちに対する“見方のポイント”を教えてくれたのも小林さんだ。

いや、人物ということなら、ここ何年か、コロコロ変わる歴代首相の“人物評”も、ほぼ外れたことがない。

さらに、“目利き”は、映画や本や人物に限らない。

世の中の“よしなしごと”の本質を、ズバリと言葉にしてくれる。

たとえば、ブルーレイなどの最新AV機器に関して、ベータとVHSの戦いの話、ハリウッドの映画会社に翻弄されたこと、利用者がないがしろにされてきたことを挙げる。

そして、「キカイものの<進歩>はもういい、と思っている」と書くのだ。


私にとっての小林信彦さんは、お会いしたことはなくても、活字を介した“師匠”の一人であり、「ものの見方」についての貴重な“指南役”である。

新刊『B型の品格~本音を申せば』を、毎晩、眠る前に、数ページずつ、ゆっくり読むこと。

これが、なんとも“至福のひととき”なのだ。


B型の品格―本音を申せば
小林 信彦
文藝春秋

このアイテムの詳細を見る


NHKの<忌野清志郎さん追悼特番>を見た

2009年05月11日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨夜、NHK「愛し合ってるかい?~キング・オブ・ロック・忌野清志郎~」を見た。

NHK福岡にいる“教え子”が、こんなメールをくれたおかげだ。


自分が作った番組ではないんですが、身内の番宣をひとつ。
先輩ディレクターが、とても親しかった人を送るため
福岡から東京に乗り込み、追悼番組を現在作っております。
『愛し合ってるかい? ~キング・オブ・ロック 忌野清志郎~』
5月10日(日) 午後11:30~翌日午前0:20(50分)NHK総合
お時間ありましたら、ぜひ。


「とても親しかった人を送るため」ってのがいいじゃないか。

ほんと、清志郎さんへの「愛してます!」の気持ちでいっぱいの番組だった。

「スローバラード」は、やっぱり泣けるね。


金曜の夜、札幌の友人たちと、ススキノで、「忌野清志郎さん追悼カラオケ」をやった。

まあ、要するに、清志郎さんの歌を、それぞれ、またみんなで、大声で歌っただけなんだけど(笑)。

翌日、HTB「スキップ」(写真)に生出演した際、冒頭の“ごあいさつ”で、清志郎さんに触れさせていただいた。

どうしても、そうしたかった。

高校時代、「ぼくの好きな先生」を聴いて以来だから37年。

清志郎さんの曲には、いろんな思い出がある。

2009年5月2日。享年58。合掌。

映画『天使と悪魔』のための前夜祭

2009年05月10日 | 映画・ビデオ・映像

15日公開の映画『天使と悪魔』を楽しみにしている。

何しろ、『ダ・ヴィンチ・コード』のラングドン教授が、新たな“謎解き”に挑むのだ。

ちゃんと「前売り券」も用意してある。

映画『ダ・ヴィンチ・コード』は、原作を読んでいたせいもあるかもしれないが、小説のダイジェストみたいな“圧縮”感というか、“詰め込み”感というか、とにかく慌しかった、という記憶がある。

『天使と悪魔』も、もしかしたらそうかもしれないが、今回は、わざと原作は読んでいない。

それに、映画館での予告をはじめ、すでに多くの「作品情報」が氾濫しているが、できるだけ目に入れないようにしている。

だって、こういう映画、できれば半端な予備知識なしに、まっさらで観たいじゃないですか。

でも、予習じゃなくて、前景気を煽る(?)、もしくは自分だけの前夜祭(?)をやろうと、『ダ・ヴィンチ・コード』のDVDを入手した。

『天使と悪魔』劇場公開記念キャンペーンとやらの廉価版だ。

劇場以来、3年ぶりとなる画面の中のパリ。

ルーブル美術館。

取材でパリに行きながら、その前を通過しただけで、中を見られなかった悔しさが甦る。

その館内での奇妙な殺人事件から、物語は転がり始める・・・。


ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版
ダン・ブラウン
角川書店

このアイテムの詳細を見る


昭和30年代の美深町から「水曜どうでしょう」の聖地へ

2009年05月09日 | テレビ・ラジオ・メディア

昨日出演した『トークDE北海道』の特集は、明日の「母の日」を前に「母と私の忘れられない物語」だった。

ゲストは作家の吉川千鶴さん。

『胡蝶の灯り~昭和の花街で生きた母と娘』で、第3回感動ノンフィクション賞を受賞された。

描かれているのは、昭和30年代の北海道・美深町だ。

吉川さんのお母さんは、ハチャメチャなお父さんと離婚し、3歳の娘を育てるために、バーを始める。その店の名が「胡蝶」だった。

「飲み屋の娘」「父親がいない」と、いじめられた子ども時代。

今は想像するしかないが、かつて賑やかな「花街」を抱えていた美深の町。

その花街で生きていた、水商売の女たち。

そんな女たちを“エネルギー源”として働いていた男たち。

明治や大正、いや戦前や戦後ではなく、つい昨日のような近い過去に、こんな人たちがいて、こんな光景があったのかと目を開かされる力作ノンフィクションだ。

番組では、吉川さんと、リポーターの安達祐子さんが現在の美深町を訪ねるVTRも流された。

その中で印象深いのが、吉川さんのお父さんが撮ったという8ミリフィルムだ。

若き日のお母さんと、幼い吉川さんが映っている。この時、お父さんは、どんな思いでカメラを回していたんだろう。

そして、ぜひ、この本で描かれた“その先”、吉川さんの青春時代の物語も読みたいと思った。


午後は、『イチオシ!』生出演のために、地下鉄で南平岸へ。

駅から坂道を上がっていくのだが、いつも車が走る大きな道と並行した、1本奥の道を通る。

ひと気の少ない、この道が好きだ。

少し歩くと、HTBのすぐ手前にある「平岸高台公園」(写真)が見えてくる。

フツーの公園なんだけど、小さな丘があって、その傾斜に特徴がある。

ここは『水曜どうでしょう』のオープニングとエンディングを撮影していた場所で、今や「水曜どうでしょう」ファンにとっての“聖地”だ。

そうそう、大泉洋さんが結婚したねえ。

お相手は、フジテレビドラマ制作センターの中島久美子プロデューサーだ。

去年のドラマ「ロス:タイム:ライフ」を思い出し、なるほど、そうきましたか、と納得。3歳年上女房、いいじゃないですか。

聖地より、おめでとう!



『イチオシ!』では、静内・二十間道路の桜の中継。満開だった。

そして、新型インフルエンザとその報道についてコメント。

番組終了後は、親しい仲間と深夜までテレビ談義。これがまた楽しかった。

胡蝶の灯り―昭和の花街で生きた母と娘
吉川 千鶴
幻冬舎

このアイテムの詳細を見る



今日は、HTB「スキップ」とFMノースウエーブ「大人リターンズ」に生出演し、夜の便で帰京の予定。

テレビ界を描く小説『虚像(メディア)の砦』

2009年05月08日 | テレビ・ラジオ・メディア
札幌に来ている。

思ったよりも暖かくて、桜も終わったらしい。残念。


羽田へのリムジンバスと、千歳に向う機内で、ずっと読み続けていたのが、真山仁さんが4年前に出した小説『虚像(メディア)の砦』だ。

最近の真山さんといえば、外資系投資ファンドと日本経済を描いた『ハゲタカ』で知られるが、『虚像の砦』の舞台はテレビ界である。

誰しも「自分がよく知る世界」を描いた小説を読んだ時、何かしら違和感というか、「ちょっと違うんだよなあ」というモドカシサに襲われることは、よくある。

私も、これまで、テレビ界を舞台とした作品には、ソレを感じることが多かった。

しかし、『虚像の砦』は違った。

その“リアル”に感心したのだ。

海外での人質事件。

テレビ局内の権力闘争。

財務問題。

放送免許の再交付。

24時間テレビ。

カルト教団による殺人事件とテレビの関係・・・。

この一作の中で、複数の「テレビの現実」が交錯する。

それは、単にこの小説に登場する出来事が、実際にあったものを彷彿させるといったレベルの話ではない。

登場人物たち、たとえばテレビ局に所属する報道ディレクター、芸能プロデューサー、その上司の局長や社長、さらにキャスターも、皆それぞれ、確かに“生きて”いるのだ。

それは総務省の人間なども同様だ。

テレビが抱える危うさが、いやというほど出てくるけれど、それを非難したり告発するというスタンスではない。

「なぜそうなっているのか」を、小説という装置を生かして解明しようとしているのだ。

しかも、その底流には、テレビという“荒野”で、何かを為そうとする人たちに対する厳しい愛情がある。

専門的な話をわかりやすく織り込みながらの、巧みなストーリーテリングが見事。

本当に、読み出したら止まらなかった。

テレビ好きにも、その逆の人にも、自信をもっておススメできる一冊だ。

虚像(メディア)の砦 (講談社文庫)
真山 仁
講談社

このアイテムの詳細を見る



今日と明日で、いつものようにテレビ3本とラジオ1本の生出演だ。

本日(金)、午前中はUHB「のりゆきのトークDE北海道」。

午後はHTB「イチオシ!」。

明日(土)は、12時からHTB「スキップ」。

午後4時15分から、FMノースウエーブで「大人塾リターンズ」だ。

多部未華子さんが青春している(?)我がキャンパス

2009年05月07日 | テレビ・ラジオ・メディア

あれ? 見たことのある風景だなあ。

今、NHKで流れている「がんばれ。ルーキー!  NHKで新生活、はじめよう。」のキャンペーンビデオのことだ。

朝ドラ「つばさ」のヒロイン、多部未華子さんが出ている。

彼女は、大学の新入生の設定で、初めての一人暮らし、初めてのキャンパスライフを送り始めたのだ。

そんな“ルーキー(新人)”を「NHKは応援してるよ」ってことらしい。

まあ、「応援するから、若い人も、受信料払ってね」という意味なんだけど(笑)。

実は、このビデオに映っている(つまりロケ地になっている)のが、私のいる東京工科大学・八王子キャンパスだったのだ。

はじめは分からなかったが、何度か目にするうち、わかった。って、遅いか。

教室の中で友だちと談笑。

グラウンドで何かの試合の応援。

大学の建物群を背に、広場で仲間と一緒にワイワイ、というシーン。

そしてラストカットは、美しいグリーン(グラウンドの白いラインも鮮やかだ)をバックに歩く、未華子さんのアップ。

いずれも、自分たちがふだん身を置く場所なのに、こうして映像で客観的に見せられると、やけに新鮮だ。


連休が終わり、今日からキャンパスに学生たちが戻ってくる。

<春の改編で見逃せない番組 見てトクする番組>を3本、選んでみると・・・

2009年05月06日 | メディアでのコメント・論評

先日、『日刊ゲンダイ』から、「この春の新番組の中で、大人にオススメのもの、3本を挙げてください」という依頼があった。

大人にオススメ。

うーん、と唸りながら、頭の中で番組表を思い浮かべる。3本って、結構難しい。

私の他には、ジャーナリストの小田桐誠さん、放送評論家の松尾羊一さんが、それぞれ選ぶという。

お二人とも、放送評論の世界での大先輩だ。

何を挙げるだろう、と想像してみたが、記者さんは「重なっても構いません。それも情報です」とおっしゃる。

エイヤっと、3本のタイトル&その理由を説明した。

記事は、1日に掲載された。

3人が挙げた3本は、やはり少しずつダブっていて、面白い。

全体に、NHKが多い。今、「大人にオススメ」となると、そうなるように思う。

私が選んだのも、1本がNHKで、2本がテレビ東京だった。


<春の改編で見逃せない番組 見てトクする番組>

今春は例年以上に各テレビ局がゴールデンタイムの大改編を断行。

あまたある新番組の中から、大人も楽しめる見逃せない番組を松尾羊一氏(放送評論家)、小田桐誠氏(放送ジャーナリスト)、碓井広義氏(東京工科大メディア学部教授)の3人に挙げてもらった。

●「ルビコンの決断」は経済ネタをドラマ仕立てにして秀逸
2人が推奨したのは、木村佳乃がナビゲーターを務める経済ドキュメンタリードラマ「ルビコンの決断」だ。

「テレ東が得意とする経済ネタをドラマ仕立てで伝えていく作り方は面白い」(小田桐氏)

「『ガイアの夜明け』のような完全な経済ドキュメンタリーでは、登場人物の心情や内面を描き切れない。そこを表現するために、あえてドラマ仕立てにしたところが秀逸です」(碓井氏)

●「追跡!AtoZ」は社会面的発想が面白い
同じく2人がピックアップした「追跡!AtoZ」は、社会問題の現場を徹底的に追跡取材するドキュメンタリー。

「切り口と動きが抜群にいい。これまでのNHKは政治ネタや外交ネタが重視されていたが、この番組は社会面的な発想で、我々の目線に立って作っている」(松尾氏)

「不安な時代の社会ネタをどう切って伝えるか、この番組はそのひとつの形といえる。人と金をかけた密着取材は、NHKならでは」(小田桐氏)

同じNHKの「ワンダー×ワンダー」は、「見たことがないような光景や映像の面白さに的を絞っているところに好感を持てる」(松尾氏)と期待大。

NHKのバラエティー「サラリーマンNEO Season4」は、「相変わらずネタが作り込まれているし、シュールでアイロニーたっぷりのコントは大人が笑える」(小田桐氏)と高評価だ。

NHKで評判のもう一本は「タイムスクープハンター」。未来人が時空を超えて過去を探りにいく設定の歴史番組だ。

「過去の世界に降り立って“中継”しているところが面白い。氾濫する歴史モノというジャンルで、新しい手法にトライしている点を評価したい」(碓井氏)

ビートたけしと国分太一がMCを務める「たけしのニッポンのミカタ!」は、「現代を2時間で手軽に読めるのが今どきの『新書』なら、これはそのテレビ版」(碓井氏)。

前クールの「水曜ノンフィクション」をリニューアルした「関口宏モトをたどれば」は、「今回はひとつのテーマに絞って1時間かけて集中的にわかりやすく作っている」と松尾氏は評価している。

【識者3人に聞いてみた!!】
◆松尾羊一
(1)「追跡!A to Z」(NHK/土曜20時~)
(2)「ワンダー×ワンダー」(NHK/土曜22時~)
(3)「水曜ノンフィクション 関口宏モトをたどれば」(TBS/水曜19時55分~)

◆小田桐誠
(1)「ルビコンの決断」(テレビ東京/木曜22時~)
(2)「追跡!A to Z」(NHK/土曜20時~)
(3)「サラリーマンNEO Season4」(NHK/日曜23時~)

◆碓井広義
(1)「ルビコンの決断」(テレビ東京/木曜22時~)
(2)「たけしのニッポンのミカタ!」(テレビ東京/金曜22時~)
(3)「タイムスクープハンター」(NHK/火曜深夜0時10分~)

(日刊ゲンダイ2009年5月1日掲載)

ドラマ『ハゲタカ』と映画『ハゲタカ』

2009年05月05日 | テレビ・ラジオ・メディア
やるなあ、NHK。

ゴールデンウイークに、『ハゲタカ』全6話を3日連続で再放送。

みんながみんな、1000円高速で“お出かけ”しているわけじゃない。“自宅レジャー”の人も多いのだ。

ここで面白い連続ドラマを一挙放映ってのは、視聴者の“ニーズ”に応えていたりする。

何しろ『ハゲタカ』である。

第33回放送文化基金賞・テレビドラマ部門「本賞」。主演の大森南朋さんの「出演者賞」。

第44回ギャラクシー賞「優秀賞」。「マイベストテレビ賞グランプリ」。

第6回放送人グランプリ「特別賞」。

そして、国際番組コンクール「イタリア賞」も受賞した。

ここ数年間のドラマの中ではピカイチだったのだ。

これまでも何度か再放送はあったが、見るたびに面白いし、再発見もある。

「一緒に日本を買い占めましょう。甘ちゃんのこの国を」

そんな台詞が、今だから、なおさら“効いて”くる。


さて、これだけ評判をとったドラマなのだから、続編が望まれるのは当然だ。

そのうち制作されるかも、と思っていたら、昨年、“映画化”決定の知らせ。

そうか、そうきましたか。

かつての「踊る!大捜査線」から「相棒」まで、ヒットドラマ→映画化の図式は民放のお家芸みたいになっていたが、ついにNHKも進出したわけだ。

公開は、6月6日。

元々は5月の予定だったが、例のリーマンショックという、フィクションを凌ぐ“すごい現実”が起きてしまったため、軌道修正に時間を要したという。

「ドラマから数年が経過した日本を舞台に、日本の基幹産業・大手自動車メーカーに買収を仕掛ける中国系ファンドと天才ファンドマネージャー・鷲津政彦が繰り広げる激しいマネー戦争」である。

主演はドラマと同じ大森南朋さん。監督の大友啓史さん、プロデューサーの訓覇圭さん、そして脚本の林宏司さんもドラマのメンバーだ。

これが嬉しい。

もちろん映画も楽しみにしている。公開されたら、すぐに映画館に行くつもりだ。

ただ、個人的には、本当は「テレビで、ドラマとして、続編を見たかった」という思いがあるのも事実。

NHKが展開する多角的ビジネス、いや“事業”ということでは、映画事業もその一環にすぎない。当然の流れ、ではある。

でも、ドラマ『ハゲタカ』を楽しみ、支持してきた“テレビの視聴者”のすべてが、映画館に足を運び、入場料を支払ってこの作品に接する“映画の観客”になれるわけではない。

願わくは、映画公開から出来るだけ早い時期に、NHKで、テレビで放映して欲しいな、と思う。

まあ、気が早い話ではありますが。

さて、ドラマ『ハゲタカ』。

映画公開へ向けて、最高の“前宣伝”であり、“露払い”でもある連続放映は、明日6日が最終日だ。


ハゲタカ(上) (講談社文庫)
真山 仁
講談社

このアイテムの詳細を見る


信州の大地を疾駆する“田んぼのF1”

2009年05月04日 | 日々雑感


毎年恒例、信州にある家内の実家で「田植え」の手伝いだ。

とは言っても、一番活躍するのは“田植え機”である。

私たち助っ人は、回転半径の関係で(四角い部屋を丸く掃くことになる)田植え機が植え残した、田んぼの隅のスペースで“手植え”を担当することになる。

このISEKIの田植え機、相当に優れていて、大人5人が必死で行う田植え作業を、一人で、いや1台で淡々とこなしてしまう。

“田んぼのF1”ともいえる田植え機のお値段は、トヨタiQとほぼ同じだ。

iQの定員は3.5人だが、ISEKIは1人

トップスピードは時速4キロで、人が歩くくらいだ。もちろん、植える時は、もっとゆっくりと動く。

iQが、いわば最先端のデジタルなら、ISEKIは思いっきりアナログだ。田植え以外の汎用性もない。デザインだって無骨過ぎるかもしれない。

しかし、ISEKIが、信州の山々を映す水を張った田んぼを、悠々と進んでいく姿は、とても美しい。

“田んぼのF1” ISEKI。

明日も頑張れ!

ニューゴルフに試乗!

2009年05月03日 | クルマ


新型のゴルフに試乗してきた。

ゴルフⅥってわけだ。

もうⅤから替えちゃうんだね。

全体のサイズや横からの見た目は、ほとんど同じだ。似ている。

でも、正面の“顔”が違う。

いわゆるワッペングリルをやめて、水平タイプ、つまり以前のゴルフの顔をリファインしたような感じだ。

うーん、悪くないです。

実は、あの大きく口を開けたような、“カニのおなか”みたいなデザインのワッペングリルが、ちょっと苦手だった。

今度のすっきり型は、私には好ましい。

さてと、車内に入ろう。

あれ? ドアを閉めるときの感じが、何か違う。

何だか軽いのだ。ドアが軽いような・・・気がした。

軽量化、ですか? 

「国産車みたい」とは言わないが、あのがっしりした剛性感、鉄のカタマリ感に満ちた、これまでのドアとは違うようだ。

ま、いいけど。

インテリアは、Ⅴと比べて洗練というか、おしゃれというか、ちょいスポーティというか。

でも、私はⅤの質素というか、質実剛健なたたずまいも嫌いじゃなかった。

エンジンをかける。

おお、何て静かなんだろう。エンジンがかかっていないみたいだ。静けさはⅤを上回る。

走り出す。

乗り心地はやや硬めだが、ハンドルの重さや動きも快適。

加速は楽チンで、レーン変更もすいすいだ。いいぞ、TSI。

走りは、文句ないなあ。

気持ちよくて、もっと走りたかったけど、あっという間にディーラーへと帰還。

うーん、確かに進化している。

20年前に乗っていたゴルフⅡを思えば、モデルチェンジ毎に全体が大きくなって、今や後部座席の居住性も向上。家族4人で1台所有でも、コレで十分だ。

私一人の通勤用じゃ、もったいないかも。

あらためて、さすがの基本性能というか、クルマの基本を実感。安心感、信頼感が抜群なだけでなく、運転していて楽しかった。

ゴルフ、恐るべし。

名監督のシブ~イ佳作『グラン・トリノ』

2009年05月02日 | 映画・ビデオ・映像

クリント・イーストウッド監督・製作・主演の映画『グラン・トリノ』を観た。

『スペース カウボーイ』(00)
『ミスティック・リバー』(03)
『ミリオンダラー・ベイビー』(04)
『硫黄島からの手紙』(05)
『父親たちの星条旗』(06)
『チェンジリング』(08)
そして
『グラン・トリノ』(08)

今年79歳だそうだけど、いやあ、益々の名監督ぶりであります。

クルマの街、デトロイトが舞台。

破産報道があった、あのクライスラーも、ここが本拠地だ。

イーストウッド演じる主人公は、長くフォードに勤め、リタイア後もこの街で一人暮らしだ。妻はもう亡くなっている。

2人いる息子のうち一人が、日本車のディーラーで仕事をしている、という設定も、まさに今どきだ。(映画の中にはホンダ車がよく出てくる)。

イーストウッドは、フツーにいえば、偏屈な頑固爺さん、といった役どころ。そんな男の隣に住むのが、モン族の一家である。

モン族。恥ずかしながら、今回、初めて知りました。

ミャンマー、タイ、中国などにまたがった地域に暮らす民族だ。もちろん、一家は移民としてアメリカに来た。

映画は、イーストウッドと、このモン族一家の子ども(若者)たちとの“関わり”が軸になっている。


”移民先の国”で、マイノリティーとして暮らす彼らの現実・日常。

朝鮮戦争での体験を胸の奥に抱えながら、“自分の国”の現在(いま)に、納得できないでいる老人。

“人生という名の兵学校”があるとすれば、去り行く者(老兵)が、これからを生きる者(新兵)に対して、何ができるのか。いや、すべきなのか。

監督イーストウッドと、俳優イーストウッドが、まさに自らの“行い”で教えてくれる映画だ。

ずしんとくるが、暗くはない。

“誰かに何かを託す”ことで生まれる、希望のようなもの。それが感じられるからだ。

きれいな女優さんやスターで成立している作品ではない。知っている出演者はイーストウッドだけ、と言ってもいい。

脚本の出来のよさ。そして、イーストウッド監督のストーリーテリングの妙技。

名監督が、シブ~イ佳作をまた1本、作り上げた。

深夜の読書人?

2009年05月02日 | 本・新聞・雑誌・活字

深夜。

私の他に、まだ誰か、起きているような気配が。

で、見に行ったら・・・いた。

読書中だった。

読んでいたのは、熊井啓監督が書いた『黒部の太陽~ミフネと裕次郎』だ。

しかも、その横には、ディケンズの『大いなる遺産』。

なんで?


黒部の太陽
熊井 啓
新潮社

このアイテムの詳細を見る


大いなる遺産 (上巻) (新潮文庫)
ディケンズ
新潮社

このアイテムの詳細を見る


メディアの誤報にどう対応するか

2009年05月01日 | メディアでのコメント・論評

本日発売の月刊『広報会議』6月号。

つい先日参加させていただいた座談会「メディアの誤報にどう対応するか」が掲載されている。

参加者は、大阪経済大学客員教授で経済評論家の岡田晃さん、元日本コカ・コーラ広報担当副社長の山根一城(やまね・かずき)さん、そして私の3人だ。

岡田さんは日経新聞とテレビ東京での経験から、新聞とテレビの違いについて指摘し、山根さんはBMWジャパンや日本コカ・コーラでの広報体験を元に対応策を語っていらっしゃる。

私はテレビメディアの現場を踏まえたアドバイスをさせていただいた。

たとえば・・・


テレビは「印象のメディア」である、ということ。

「誰が何をしゃべったか、どこの会社が何を伝えたか」というところが本来の“情報”だが、テレビでは「表情」一つが情報になる。

その人の発言内容だけではなく、「表情、服装、姿勢」すべてが情報になってしまうのだ。

また、「報道のワイドショー化」という傾向の中で、分かりやすくて面白いものが、テレビ報道により強く求められる。

その点、船場吉兆の「ささやき女将」などキャラクターがあるケースは、テレビ報道にとって実に“美味しい”ものとなる。

ただし、キャラクターに焦点が当たれば当たるほど、ものごとの本質論がどこかへ行ってしまう。

キャラクターによって事実や真実が矮小化されてしまうのだ。

視聴者や企業はその点に気をつけなくてはならない。

テレビは「印象のメディア」であるだけでなく、「情緒のメディア」でもあるのだ。


・・・といったことを話している。

掲載された座談会を読み返してみて、他のお二方の発言が多くの示唆に富んでいることに、あらためて感心した。


広報会議 2009年 06月号 [雑誌]

宣伝会議

このアイテムの詳細を見る