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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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小林信彦さんのエッセイ集『B型の品格』

2009年05月12日 | 本・新聞・雑誌・活字
年に一度、これほど出るのを楽しみにしている本もない。

小林信彦さんのエッセイ集である。

「週刊文春」に連載されたものが、1年分溜まると、出版されるのだ。

今回の『B型の品格』で、実に11冊目。

何が面白いかといえば、やはり小林さんの“目利き”ぶりに尽きる。

特に、小林さんの“映画の評価”には絶大な信頼を寄せている。

アカデミー賞について、予測と結果を記した文章など、いつも感心する。

当たったものだけでなく、外れたものも含めて、その理由を読むと、“映画の現在”が理解できるのだ。

早い時期から、堀北真希や綾瀬はるなに注目し、彼女たちに対する“見方のポイント”を教えてくれたのも小林さんだ。

いや、人物ということなら、ここ何年か、コロコロ変わる歴代首相の“人物評”も、ほぼ外れたことがない。

さらに、“目利き”は、映画や本や人物に限らない。

世の中の“よしなしごと”の本質を、ズバリと言葉にしてくれる。

たとえば、ブルーレイなどの最新AV機器に関して、ベータとVHSの戦いの話、ハリウッドの映画会社に翻弄されたこと、利用者がないがしろにされてきたことを挙げる。

そして、「キカイものの<進歩>はもういい、と思っている」と書くのだ。


私にとっての小林信彦さんは、お会いしたことはなくても、活字を介した“師匠”の一人であり、「ものの見方」についての貴重な“指南役”である。

新刊『B型の品格~本音を申せば』を、毎晩、眠る前に、数ページずつ、ゆっくり読むこと。

これが、なんとも“至福のひととき”なのだ。


B型の品格―本音を申せば
小林 信彦
文藝春秋

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