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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

2012年 テレビは何を映してきたか (1月編)

2012年12月15日 | テレビは何を映してきたか 2010年~13年

なんだかんだと言っているうちに、今年もあとわずかになりました。

そこで、2012年のテレビを、「日刊ゲンダイ」に連載している番組時評「TV見るべきものは!!」で振り返ってみようと思います。

実は昨年分にあたる「2011年 テレビは何を映してきたか」も、全部アップしてないままなのですが(笑)、順番にやっていると年を越してしまいそうなので、まず2012年を整理してみます。

(以下の文章は、同時代記録という意味で、掲載当時のままです)


2012年 テレビは何を映してきたか (1月編)

 
「最後から二番目の恋」 フジテレビ

今期の連続ドラマがほぼ出そろった。人気小説の原作物からオリジナルまでさまざまだが、大人が参加できる1本と言えそうなのがフジテレビ「最後から二番目の恋」だ。

バリバリの仕事系だった45歳独身の女性プロデューサー(小泉今日子)が鎌倉の古民家に移り住む。と聞けば、いかにも今どきの流行に追随という感じだが、嫌みにならないのは岡田惠和の周到な脚本と小泉のお手柄だろう。

移住先の隣人が市役所観光課職員(中井貴一)。本人は妻を亡くして娘が一人いる。同居の弟(坂口憲二)や妹(内田有紀)もちょっと訳ありふうである。いや、すぐ下の妹(飯島直子)だって家庭に問題を抱えているらしい。

初回は物語設定の紹介と登場人物たちの顔見せ的な展開だったが、シリアスとコミカルのバランスがちょうどいい。何より会話の妙が楽しめる。小泉と同年代仲間(森口博子・渡辺真起子)の、友達だけどプチ・ライバルな関係を思わせる会話。

また小泉と中井との中年男女ならではの本音と建前が入り混じった会話。あらためてドラマの脚本は「台詞」と「ト書き」(説明文)で成り立っており、中でも台詞がドラマのテイストを左右することがよくわかる。

それにしても小泉今日子のリアルな中年女性ぶりはどうだ。中井一家とひとりで渡り合う、堂々の座長芝居だけでも一見の価値がある。

(2012.01.16)


「聖なる怪物たち」 テレビ朝日

テレビ朝日の連続ドラマ「聖なる怪物たち」は病院を舞台にした医療サスペンスだ。主演はイケメン俳優として売れっ子(「平清盛」では源頼朝役)の岡田将生。だからといって若者向けと判断して見ないでおくには惜しい1本である。

そもそも岡田が主役だと思うからいけない。実質は中谷美紀のドラマなのだ。しかも青年医師の物語というより大人たちのドロドロ群像劇。いわば“夜の昼ドラ”である。

外科医の岡田が勤める病院の看護師長が中谷。その妹が加藤あい。加藤は学園グループの御曹司(長谷川博己)と略奪婚するが、流産して子宮摘出手術を受ける。長谷川には前妻との間に息子がいて、このままでは後継者はその子になってしまう。加藤は中谷に代理出産を依頼する、というのが第1回目だった。

謎はいくつもある。番組冒頭で病院に担ぎ込まれて亡くなった妊婦は誰なのか。残された新生児はどうなったのか。早くに両親を亡くして2人で生きてきた中谷・加藤姉妹の過去。岡田を産むと同時に死亡したという母親(佐々木希)の存在。もちろん男たち女たちの愛憎もたっぷりとトッピングされている。

そんな昼ドラならぬ夜ドラで、中谷美紀は持ち前の「目ヂカラ」を遺憾なく発揮。かなり怖い。先が読めないこのドラマのキーパーソンとして君臨し続けるはずだ。

(2012.01.24)


「サワコの朝」 TBS

「週刊文春」で必ず読むものに、「阿川佐和子のこの人に会いたい」がある。すでに900回を超えるが、この手のインタビューは「その場ならでは」の話をどれだけ引き出せるのかが命。阿川佐和子は自分と相手との距離のとり方、またどこまで突っ込んだ話を聞くかなど、そのバランス感覚が見事である。

そんな阿川のトーク番組が「佐和子の部屋」、じゃなくて「サワコの朝」(TBS)だ。先週のゲストは清水ミチコ。自身のモノマネを点線系、震え系などと分類しながらの解説と実演は楽しく、憧れの矢野顕子や恩師としての永六輔にまつわる裏話も興味深かった。「聞き手が阿川だから」の雰囲気がうかがえた。

テレビは雑誌と違ってゲストの表情や声のトーンまで伝えてしまう。いいことを言っていても顔を見れば嘘がバレてしまう怖さがある。また、いわゆる番宣やPRで出てきたゲストもその意図ばかりが目立って恥ずかしいものだ。その点、この番組は気持ちがいい。

これまでの放送の中では作家の綿矢りさ、宮沢りえ、バイオリニストの高嶋ちさ子などの回も見ごたえがあった。普段は見えない部分、知っているようで知らない側面が自然な形で出ていたからだ。天才的“聞き役”アガワ、円熟の技である。

(2012.01.31)


読まずに死ねるか!「東西ミステリー ベスト100」

2012年12月15日 | 本・新聞・雑誌・活字

「週刊文春」の臨時増刊が出た。

その名も「東西ミステリー ベスト100」。

副題なのか、コピーなのか、「死ぬまで使えるブックガイド。」と自信満々だ(笑)。

かの内藤陳さんは言いました。

「読まずに死ねるか!」

東西ミステリーの、それぞれの「ベスト10」は、まさにそんな感じ。

全部読んであると思っていたら、未読が2冊ありました。

まだ死ねません(笑)。