午後、近くのスーパーに買い物へ行った帰りのこと。
ちょうど小学校低学年の下校時刻だったらしく、
大通りは色とりどりのランドセルで溢れておりました。
自宅へと向かう小道へ折れると、
少し前をランドセルを背負ったちいさな男の子がひとり、
健気なほどの速足で歩いているのが目に入りました。
小学1年生、あるいは2年生くらいでしょうか。
速足とはいえ、こちらはオトナ 


すぐに追いついてしまいました。
すると、背後から近づく私の足音に驚いたのか身を固くした彼は、
こちらに悟られないようにするためか、
顔を正面に向けたまま鋭い横目で私を確認してきました。
不審者による小学生への声掛けが問題になっているのは存じておりますし、
学校や親御さんから、注意するよう厳しく言い渡されているのかもしれませんが。
そのように警戒心むきだしの視線を浴びせられたことが今までなかった私は
少々傷つきながら、彼を追い抜きました。
追い抜くとほぼ同時にマンションに着いたので、私が正面入り口の方へ折れると、
彼は競歩のようなスピードで、そのまままっすぐ歩み去って行きました。
これ以上、彼に怖い想いをさせなくてよかった・・・
妙な安堵を感じつつ、いつものようにエントランスの少し奥まったところにある
郵便受けをチェックし、エレベーター前へ。
すると。なんとそこにさっきの男の子がいるではありませんか・・・

彼はエレベーターの表示を見上げ、上階から降りてくるエレベーターを待っている様子。
郵便物を手にした私の姿に気づいた彼は、あからさまに顔をこわばらせました。
まさか・・
『帰る場所は同じマンションだったのに、
あなたは私が怖くて一度通り過ぎた後、戻ってきたのね。
賢く懸命な判断だったと思う。
そして、あなたはおそらく私を乗せていったであろうエレベーターが
無人で降りてくるのをこうして待っているのね。
でもね。オトナは外出先からマンションに帰り着いたら、
ポストの確認をしたりするものなの。
もう少し時間をおいてから戻って来るべきだったんじゃないかしら』・・・


・・・なんて言えるはずもなく。
ただ、そのままスルーするのもいけないかなと思ったので。
できるだけ明るい口調で、
「こんにちは」
うつむいたままスニーカーのつま先あたりに視線を落としている彼に声をかけました。
「・・こんにちは」
まさに゛蚊の鳴くような゛声が返ってきました。
ふたりきりでエレベーターに乗るとなると、彼の恐怖心と心労が増してしまうと思い、
私はそのままそこを素通りし、奥の階段で自室へ帰ることといたしました 

荷物を抱え、息をきらし階段をのぼりながら。
私って・・・いくらマスクとメガネだったとはいえ。
そんなに人相が悪いのかしら・・・


ちょっと・・いえ、かなり傷ついた出来事でした 


