作家 井上香織 Official Blog

せつない純愛小説、やさしい目線で描かれたエッセイで人気の作家 井上香織が贈る癒しの空間 

今年の桜・・・

2020-03-28 | ★Diary★

新型コロナウィルスとの闘いは、

どうやら長期戦になるようですね・・


本日、土曜日。

井上は引きこもり・・

みなさんは、いかがお過ごしでしょうか?

 

こちらの写真は、数日前、買い物のついでに、ちょっと足をのばし、

桜並木をお散歩した際、撮影したもの。

決してお花見の宴に参加したわけではございません・笑・


東京では雨が降りはじめ・・・

おそらく、この雨で桜は散ってしまうことでしょう・・・


今夜未明から一気に冷え込み、明日は雪になる可能性もあるとのこと。

みなさま、体調を崩さないよう、気をつけてくださいませね 

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☆きらきら日記☆ PART 25 キララってもうオジサンだったの!?

2020-03-25 | ☆きらきら日記☆

PART 25   キララってもうオジサンだったの!? 

 

 盗撮男の事件があった翌日の夕方。

 私は早々にパソコンのスイッチを切り、キララとともに中央公園の広場へ向った。

 昨夜のキララの活躍ぶりを誰かに話したくてうずうずしていたのだ。

 とはいえ……..リードを片手に自転車のペダルをこぐ私の中に、

ちょっとした葛藤が湧き起こっていた。

 私は、自身のことはもとより、聞かれもしないのに身内の自慢話を他人に

吹聴するような破廉恥な言動を忌み嫌う謙虚な両親のもとで育てられてきた。

 昨夜のことを公園のみんなに話すことは、いかがなものだろうという

抑制の気持ちが頭をもたげていたのだ。

 しかし、公園が近づくにつれ、胸の中のおしゃべりの虫はすでに、

ざわざわと騒がしくなりはじめており、黙らせておくことはできそうになかった。

 昨夜この公園で起きた一連の出来事をただ語るだけのことであって、

決して自慢ではない。

 私はそう自分に言い訳をした。

 

 広場の横のベンチではディズニー・ママと遥之介・ママが談笑していた。

「こんにちは」

 私は自転車をベンチの横にとめ、キララをリードから解き放った。

 キララは桜の木のあたりをひとり散策していたマメ柴の小梅ちゃんに向って

まっすぐに走り去っていった。

 その姿を見送りながら、

「昨日の夜ね――」

 早くも私は口を開いていた。おしゃべりの虫にせきたてられるように。


「すごーい」

 キャバリアのディズニーを膝に抱き抱えながら、ディズニー・ママは感嘆の声をあげた。

「キララちゃん、警察犬の訓練学校にいたことがあるって言っていたものね」

「うん。でも、実際に怪しい人を見分ける能力があるなんて思ってもみなかったから、

びっくりしちゃった。そいつ、あの茂みに潜んでいたのよ」

 私は誇らしい高揚感を味わいつつ、昨晩、警官に示したのと同様の動作で、

手前にツツジの植え込みがある木立の奥を指差した。

「でも、その黒づくめの男のあとをキララちゃんと一緒に追ったんでしょ?

 逆切れされて、刃物かなんかを持ってこっちに向ってくる可能性だって

あったわけじゃない。怖くなかったの?」

 遥之介・ママが言った。

「怖いなんて感じる暇はなかった」

 私は首をすくめかぶりを振った。

「その男は熊野神社を経由して、十二社通りを突っ切っていったの。

それをきーが追いかけていくものだから、車に轢かれでもしたらどうしようって。

とにかく無我夢中だった」

「ねえ、キララちゃんて、いくつ?」

 唐突に遥之介・ママが言った。

「ええっと。9月に誕生日が来ると5歳?かな」

 私は答えた。

「そう。もう5歳なの」

 そして彼女は犬の年齢について語りはじめた。

「うちの遥もそうだけど、大型犬って年をとるのが早いのよね。

生後1年で成犬って言われてるでしょう」

「成犬って・・・生まれて1年で20歳ってこと?」

 驚きを隠せず、私がそう言うと、遥之介・ママは冷静な口調で続けた。

「ううん、20歳ってことじゃなくて、成犬と同じ大きさまで体が発育するってこと。

人間の年齢に照らしあわせると、生後まる1年で12歳。

2年目からは1年に7歳ずつ年をとるらしいの」

「そうなんですか」

 答えながら、キララは今、いくつなのだろう。私は素早く計算を試みた。

 

 12+(年齢マイナス1年)×7という公式にあてはめてみると33という数字が算出された。

5歳の誕生日まであと2ヶ月ということを考えると限りなく40歳に近い。

 

 継母である私に対するやんちゃな行動から鑑みるに、まだ反抗期の少年くらいだと

思い込んでいたのだが……..。

 もうオジサンと呼ばれる年齢なのではないか。

 軽いショックを受けている私に彼女は、

「その年齢っていうのは、あくまでも肉体の年齢。

小型犬はもう少しゆるやかに年をとるみたいだけど、大型犬は寿命が短いの。

人間より早いスピードで老化に向かっていることを知るためにも、

年齢を知っておくことって大切なんですって」

 そう言って微笑んだ。

「うちは遥が20歳になる日を計算して、成人式をしたのよ」

「成人式?」

 私は目をまるくした。

「そう、神社でお宮参り。神主さんにお願いしてお払いもしていただいたの」

 彼女はちょっと照れたようにそのときの様子を写した写真を携帯で見せてくれた。

 彼女は萌黄色の和服姿、鼻の下に立派な髭をたくわえた御主人は

きちんとダークスーツを着て首をたれ、遥之介くんと三人で厳かに式に臨んでいる。


 詳しく訊いたことはなかったが、熟年のご夫婦の間にお子さんは

いないらしい。

二人がどれだけ遥之介くんに愛情を注いでいるのか、あらためて

わかった気がした。

 そのとき、愛娘の様子を見守っていた小梅・パパが、

「小梅、帰るぞ」彼女の名前を呼んだ。

 その声を聞くやいなや、小梅ちゃんはまっすぐにパパのもとへ

駆けもどってきた。

 彼女のあとを追ってキララがこちらへ走ってくる。

 つい先日、お風呂に入れたばかりなので、ふわふわとした

首のあたりの毛が夕陽を浴びて黄金色に輝いていた。


「九月に誕生日を迎えたら、四十歳なのね」

 思わず、しみじみとした口調のそんな独り言が口をついていた。

「へんなこと話しちゃって、ごめんなさい」

 遥之介・ママが申し訳なさそうに言った。

「ううん」

 私は慌ててかぶりを振った。

「そんなことない。教えていただかなかったら知らないまま

過ごしていたかもしれないし」

 彼女はほっとしたような笑顔を浮かべ、傍らでパグのナナちゃんと

戯れている遥之介くんの頭を撫ぜた。

「でも、だからこそ、毎日毎日を大切に慈しんであげないとね」

 そんな遥之介・ママの言葉は私の心にあたたかく、そしてせつなく

沁みわたっていった。

 

 二ヵ月後。

 はじめて一緒に迎えたキララの誕生日。

 私は心づくしのバースデー・プレートをつくった。

(ハムやソーセージの下は、いつも通り、おからを混ぜ込んだ

グレービーソース風の缶詰)

 

「お誕生日、おめでとう。これからもずっと元気でいてね」

 そう言って私はプレートを差し出した。

 残念ながら、キララはその言葉の意味を深く考えようともせず、

いきなりプレートに鼻を突っ込み、がしっがしっと音をたてて

咀嚼しはじめた。

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母の庭の花々~ムスカリ

2020-03-20 | ★母の庭の花々★

昨日、実家へ行ってまいりました。

約二週間ぶりの母の庭は・・

ちょっと見ただけでは目立たないのですが、

かがんでよく見るとホトケノザやハコベなどなどの雑草が・・・


ということで。

途中、母にアイスの差し入れをしてもらい、

約4時間ほど頑張りました 


上の写真は・・・

秋に植え戻した球根の ムスカリ

植え戻しの効果があったみたいで、

今年はたくさんの花をつけてくれました 


追伸

迷った末、花粉症の薬を飲んだので、庭仕事中に症状は出なかったのですが。

お年頃(・・笑・・)のせいか、ひどい腰痛に見舞われてしまい・・・

母が整形外科で処方してもらっている湿布を腰に貼り、

帰宅後はベッドに入る前にストレッチ・・・

 

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ベランダ便り~ビオラ

2020-03-16 | ★ベランダ便り★

ここ数年、植物を種から育てることにはまっている妹。。。

昨年の秋、

「何色の花が咲くかわからないけど」というコメントつきで、

プレゼントしてもらったビオラが、

春の陽ざしの中、次々と元気に花を咲かせてくれています 


近々、また庭仕事のため、実家へ帰らなければならないのですが。

今年も花粉症の症状がひどく、ちょっと憂鬱・・・

この間は、[眠くなりにくい]という花粉症対策の薬を飲んでみたところ、

庭にいる間は、目のかゆみもなく、鼻の具合も驚くほど快適だったのですが、

午後になって、抗いがたいほど強い眠気に襲われてしまいました 

午前3時起きで睡眠不足だったこともあるかと思われますが。。


母と一緒の時間を楽しむためには、どんなにくしゅくしゅで辛くても、

薬は飲まない方がいいのかしら・・

そう思いつつある井上なのでした 

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☆きらきら日記☆ PART24 盗撮男発見!!

2020-03-11 | ☆きらきら日記☆

PART 24  盗撮男発見!

 
 バーニーズの事件以来、キララは私のそばから片時も離れないようになっていた。

 パソコンに向かっているときは足元でうたた寝。

 お風呂に入っているときも狭い洗面所にうずくまって待機している。

 その頃、使っていたバスマットはクリーム色だった。

 視力の弱い私はバスマットと間違え、彼を踏みそうになり、慌ててよけようとして

洗面所で転倒しかけたこともある。


 その日、締め切り間際の原稿に没頭していた私は、

「ねえ、お散歩はまだ?」

 足元で催促するキララを「ごめんね。もう少しで終るから」となだめつつ、

ようやく原稿を書き上げた。

「一時間ほど留守にしますので、連絡は携帯にお願いします」

 というメッセージとともに原稿を送信し、私はキララと中央公園に向った。


 あたりには夜の帳が訪れていた。

 いつもの散歩コースを辿り広場に到着したが、夕刻に集まる顔馴染みの人たちの姿はもうない。

 夜の公園は見慣れた風景とは異なる顔をみせていた。

 点在するベンチには密接に体を寄せ、小声でささやきあう男女の姿があった。

「お友達もいないし、今日はもう帰ろう」

 私がそう言うと、キララはベンチの奥の暗い植え込みに向って、

突然「うううっ」とうなりはじめた。

「ねえ、なに?」

 濃密な刻を過ごしている恋人たちの邪魔をするような無粋なことはしたくない。

「帰ろうよ。明日はお友達がいる時間に来るから」

 私は促すようにキララのリードを引いたが、彼はなにかを警告するかのごとく

後ろ足で立ち上がり、大きな声で吠えだした。

「ねえ、どうしたの!?」

 問いかけても、彼はまっすぐに植え込みの奥を見据えたまま、

そちらに向かって駈け出そうとしている。

 そのあまりの力強さに自転車ごと倒されそうになり、私は思わずリードを握る手を緩めてしまった。

 次の瞬間、キララはリードを引きずったまま、植え込みの中に飛び込んで行った。

 

 すると暗闇からあぶりだされるように、一人の男が飛び出してきた。

 黒いキャップに黒いTシャツの男は手に小型ビデオカメラを持っていた。

 キララは執拗にその男に向って吠え続けている。

 薄暗いベンチで体を寄せ合っていた男女は慌てて身づくろいして立ち去って行った。

 黒ずくめの男は逃げるように熊野神社の方へ続く緩い坂道へ駆けてゆく。

 キララは男を追って走りはじめた。


「きー、待って」

 私は自転車を放り出し、慌ててキララを追った。

 坂道を駆け下りてゆく途中、たまたま自転車であたりを巡回していた警官と行き会った。

「何事ですか?」

「ビデオカメラを持った怪しい男がいて」

 息を切らしながら私は訴えた。

「うちの犬がその人を追いかけて行ったんです。黒いキャップに黒い服の男。

まだ、それほど遠くには行っていないと思います」

 事態を把握できていないらしい警官に私は続けた。

「うちの子は警察犬訓練学校にいたんです。だから、早くあの黒い服の人をつかまえて!!」

 警察犬訓練学校という言葉が効いたのか、警官はきりりとした表情になった。

「その男、どっちへ行ったんですか?」

「たぶん大通りの方だと」

「わかりました」

 警官は自転車の方向を変え、大通りの方へ向かった。

 私もあとに続いた。

 男は神社を通り抜け、ちょうど赤信号で停止していた車の隙間を縫うようにして

前の通りを突っ切ってゆく。

 その背後にはリードを引きずったまま疾走するキララの姿が見えた。

 信号が青になったらと思うと、身がすくむ思いだった。

 

 十数分にわたる逃走劇の末、黒ずくめの男は確保された。

そして、やがて到着したパトカーに乗せられ、どこかへ護送されていった。

 夜の中央公園で繰り広げられる恋人たちの愛の行為をビデオにおさめ、それをDVDに焼き、

ネットで販売していたらしい。

 

 経緯を聞きたいとのことで、私とキララは交番に招き入れられた。

「キララくん。お手柄だったね」

 ほめ言葉はキララにとってなによりのご馳走だ。

 彼は凛々しい横顔で警察官の賛辞を受けとめた。

「警察犬の訓練学校にいたんだって?」

「ええ。とても優秀だったそうです」

 飼い主からそう聞いただけで詳しいことはなにも知らないくせに、

私もつい自慢げな口調になってしまう。

「あ、そうだ。ちょっと待っていて」

 若い警官は一度、奥へ入るとシュークリームを手にして戻ってきた。

「これはごほうび」

「ありがとうございます。でも………」

 私は鼻をくんくんひくつかせているキララの頭を撫ぜた。

「この子、今ダイエット中なんです」

 私が言い終わらないうちに、キララはかぷりとシュークリームを頬張った。

そしてろくに噛みもせず、ごくりと飲み込んだ。

 その一連の行動は目にもとまらぬ素早さで、私は「あっ」と息をのんだあと、

「こらっ、ダメでしょ」

 キララを睨みつけた。

「たまにはいいじゃありませんか」

 警官は笑った。

 調子にのったキララは、

「そうだよ。おからダイエットには飽き飽きしてるんだ」

 とでも言うように鼻を鳴らした。そして、

「ノド乾いた。おうちで牛乳飲みたい。早く帰ろう」

 リードを引っ張りはじめた。

 

 

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