庭仕事を兼ねて実家へ帰るときはいつも、
玄関のドアを開ける前に、
庭先を眺め、草が目立ちはじめた場所等を確認し、
その日の作業を組み立てつつ、家へ入るのですが。
先日、帰った時は・・・
敷地内に入る前に唖然とし、思わず立ち止まってしまいました。
表通りに面したところに茂っていたはずのヒイラギが、
太い枝と幹だけ残して丸坊主になっているではありませんか
首謀者は母に決まっていますが、
着いて早々に口喧嘩はしたくなかったので、
なるべく、穏やかな口調で、
「ねえ、あのヒイラギ、どうしたの?」
さりげない様子を装い、訊いてみると。
母は・・・
「あの葉っぱ、節分のときにしか使わないし、ちくちくして痛いでしょ。
それに、最近は赤い実もつけてくれないから・・・」
「それで・・・? 切っちゃったの?」
「・・・・」
「でも、大変だったでしょう?」
「・・・・」
「〇ちゃん(妹)が手伝ってくれたんでしょ?」
「・・・・」
どうやら一人で行ったみたい・・・
長さ二メートルはある高枝切りばさみを手にした母。
足元がおぼつかず転倒するシーンが容易に想像でき、
ぞっとすると同時に憤りに似た感情すら湧いてきてしまいました。
定期的に整形外科に通院するたび、
股関節の専門医である担当医師から、
「次に転んで大腿骨を骨折したら、うちでは手術できないどころか、
もう完全に寝たきりになりますよ」
そう言われていたのに。
母はあの言葉をどう受け止めているのか。
数年前の大雪の日・・・
折れた骨が骨盤の方まで入り込んでしまっていたため、
すぐに手術ができず、右足をけん引した状態で約一週間、まさに寝たきり。
身動きもできず、痛みに耐え続けていた母・・・
その姿が蘇り、私は湧き上がる感情を
隠すことができなくなっていました。
「あの樹を切りたいと思っていたなんて・・・
今までひと言も言ってなかったじゃない。
ちょっと言ってくれたら、私がやったのに」
「だって・・・草取りだけでも大変なのに・・・」
「これからは、絶対にひとりでやらないでね」
高枝切りばさみ。
そして、全長約数十センチの刈込ばさみ・・・
厳重に鍵でもかけて使用禁止にする方法を真剣に考えております。