PART 35 ペットホテル初体験②
翌日、私は大いなる不安とかすかな期待を胸に、キララを伴い再びペットホテルの下見に向った。
事前にリストアップした大型犬OKの三軒のうち、最後のホテルだ。
きれいに磨かれたガラス張りの店内を覗き込むと、十畳ほどのスペースで、
数匹の小型犬と中型犬がのどかに戯れているのが見えた。
ここなら大丈夫かもしれない。
私は自転車をとめ、そのショップの扉を開けた。
「こんにちは。いらっしゃいませ」
出迎えてくれた女の子に
「はじめてなんですけど。この子も一緒にいいですか?」
声をかけると、店名のロゴが入ったトレーナーにジーンズの彼女は、
「ええ、どうぞ」
私とキララを笑顔で招き入れてくれた。
「来週、出張しなければならなくて、この子を預かっていただけるところを捜しているんです」
そう言いながら、私は店内を見渡した。
レジの横に小型犬用の首輪やリード、おやつなどが並べてある棚があり、
その奥にはシャンプーやトリミングをするスペースがあった。
小規模ながら、こざっぱりとしていて清潔そうだった。
「お名前は?」
スタッフの彼女はキララの前にしゃがみこんだ。
「キララっていいます」
「キララちゃん、よろしくね」
飼い主に似て若い女の子が大好きなキララは、さっそく彼女に
愛嬌を振りまきはじめた。
「昼間はこんなふうにみんなゲージの外で自由にしていられるんですか?」
「ええ。なるべくストレスがたまらないように。
スタッフがいる間はずっとここで遊んでもらっています。
夜はそれぞれゲージで休むことになってますけど」
その後、私は、
「この子が入れるゲージもあるんですか?」
「お散歩はしていただけるんですか? 一日何回?」
「食事やおやつは持ち込んでもいいんですか?」
「送迎は?」
彼女を質問攻めにしてしまった。
「当日、ご希望の時間に車でお迎えにあがります。
その際、キララちゃんのお気に入りのおもちゃとか、いつも食べているペットフードや
おやつを用意しておいてください。スタッフに指示していただけたら、
なるべくおうちと変わらないようにしますので」
料金は二件目の高級ホテルの約四分の一。
送迎も無料とのことだった。
飼い主に相談するまでもなく、私はそこにキララを預けることを決めた。