おはようございます昌栄薬品の宮原 規美雄です
薬学博士渡辺武著『漢方が救う人体危機』
現代医療の誤りを正す
第1章 漢方薬はなぜ効くか
漢方薬は〝クスリ〟として害はないか?
p82漢方薬は的確に薬を選べばかならず効きめがある!
『中国医学史講義』は、先年、中国で出版された医薬の歴史の書です。
それによると、漢方薬は、秦(しん)の時代(紀元前三〇〇年)から、何億人という人間の体を通して人体実験してきた実績を明らかにしています。
人体実験ということは、たんに効力があるということだけではありません。
効く薬には副作用があります。
副作用を適正な方法と綿密は証の把握で的(まと)をしぼり、スクリーニングされているということです。
薬の選定は、現代医薬のように病名薬と作用薬だけではありません。
まず陰・陽の二つに分けられ、表・裏・半表半裏の六つのパターンで病位病態をとらえ、気・血・水の七つの見方によって病気の原因をとらえます。
そして体質によって汗かき型、肥満型、便秘症、下痢症、脈の浮沈によって、中和のバランスをとらえます。
薬剤は、辛いと書いたものは腸や肺の薬であり、「酸・苦・辛・甘・鹹(かん)」の五つの分類によって、五臓六腑の薬剤に分けられており、熱型か冷え型かでさらに「寒・熱・温・涼・平」の五つに分類されていることはすでに述べました。
証によっていくつもの関門をくぐり、病気の的をしぼって、症状を調整する薬剤が処方されるわけです。
病気には複合病――水の摂りすぎか、代謝が悪いか、血液循環が悪いか、心臓に負担がかかっているか、あるいは神経症か、この二つか三つの複合した病気があります。
これは「気・血・水」の三つのパターンで的がしぼられているのです。
たとえば、左半身不随とか右半身不随とかよくいわれますが、出血が主因で起こった不随なら左上半身が悪くなるわけです。
右半身不随の場合は水帯があって、そのため右下のほうに血証があるということで、この場合は水剤を多く、血剤を少しプラスする処方をします。
左半身不随は直接に心臓がオーバーヒートして障害を起こしているのが原因で、この場合は血剤を多く、水剤を少し入れる処方をすればいいのです。
右半身不随と左半身不随では薬の配分が違うのです。
血剤だけではなく、水剤の配分も考えているのが、漢方の独特の処方です。
皇居新宮殿の表にある高さ二メートルの絢爛(けんらん)豪華な花器の壷を制作した、陶芸家で人間国宝であった加藤土師萠(はじめ)氏は、この壷制作の前に脳卒中で倒れたのです。
病院から制作不可能をいい渡されましたが、最後の仕事として完成したいという願いから、漢方で回復できないかと相談をもちかけてこられました。
そこで証によって「桂枝加苓朮附湯」で痛みやしびれをとり、「黄連解毒湯」で出血を対外に排泄させて、「八味丸」で鬱血(うっけつ)をとる三段構えの薬剤を指示しましたところ、一年で大阪、神戸、九州に制作旅行されるほど、すっかりよくなられ、大作に取り組まれることになったのです。
この加藤さんに処方した三つの薬はどれも脳卒中、高血圧の薬であり、その効力はそれぞれ違っているのです。
漢方の証によって的確に薬を選べばかならず効きめが約束されているものなのです。
草根木皮の自然薬というとばかにする人がありますが、一つの薬草でもたいへんな効力をもっています。
血剤には漢方特有の「柴胡」という薬がありますが、その効用の適応範囲は、新薬と違ってたいへん広いのです。
ノイローゼや不眠症には催眠・鎮静剤として、てんかんには抗てんかん剤、精神分裂症には精神安定剤として、マラリアには解熱(げねつ)剤として、食道狭窄(きょうさく)症、中耳炎、角膜炎には抗アレルギー剤として、そのほか狭心症、高血圧、肋膜(ろくまく)炎、呼吸促進、鎮咳(ちんがい)、胃潰瘍、腹膜炎、胆のう炎にも、上から下までの薬剤として使われています。
いいかえると「柴胡」はこれだけの病気の薬剤としてスクリーニングされてきたということなのです。
こんな多くの病気に効用のある薬剤は、新薬にはありません。
これは自然薬である漢方の一番の利点であり、先人の貴重な遺産です。
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