昨日はとても良いお天気でしたが、朝夕はちょっと冷えて、最低気温は14度だったと。今日も…と思ったのですが、天気予報をみると、1日中曇りで最高気温も22度なんですって。この調子ならあっと言う間に炬燵が欲しくなりそう…今年は冬が早いのかも知れませんね。
前回、〝思い込み〟はコワイ!ということを書きましたが、似たような言葉で〝思い違い〟というのもありますよね。思い込んだり思い違いをしたまま年を取ってしまって、今にして知ることもよくあります。
そういえば私には忘れられないことがあるんです。長年国語教師を勤めてきたという自負は一応持っていましたが、俳句に関しては全くの素人。〝国語の先生なら俳句もおてのものでしょう。いいですね~〟なんて、よく言われましたが、俳句はそんな生易しいものではありませんでした。
馬酔木に入門して1年足らずの頃、若手勉強会へ参加したときのことが、今でも私は忘れられません。だってあのときの〝恥〟が今の私を作ったといってもいい過ぎではないんですから。
それまでは本格的な句会らしいものに出たことがなく、吟行も初めてという…、なのにそんな勇気がどこにあったのかと今でも思います。そんな自分が全国から集まってきた人たちに混じって、なんとか無事に終わろうとした矢先の最後の句会でした。今までは発言を求められたことが一度もなかったのに、この時は突然〝あなたはこの句をどうして採らなかったのですか?〟と聞かれたんです。もうビックリ!
採った句については内容が分かった上で採っていますから、答えようもあります。この時参加した若手は30人以上はいたでしょうか。そうすれば投句3句でも100句にはなるでしょうし、それが句稿というものではなくて、見たこともない清規用紙というものが次々と廻ってくるのですから…。
地域の句会では、既にプリントした句稿を見て選句していましたので、このような句稿のない句会はしたことがなかったんです。ついていくのがやっと。それで解らない句は飛ばして解る句だけを選句していましたから、そりゃあもう慌てましたよ。そして、口走った言葉が…
〝今日は天気がよくて、雨は降りませんでしたので採りませんでした〟と。みんなが唖然と…したかどうかは覚えていませんが、直ぐにある方から〝木の実時雨というのは、雨ではなくて木の実が時雨のように落ちてくることなのよ〟と。聞いた瞬間顔から火が出るようでした。
そうなんです。〝木の実〟も〝時雨〟も知っていましたが、それが一つになった〝木の実時雨〟という季語を知らなかったんです。今なら笑い話でしょうが、それぐらい何も知らずに参加したんですよ。〝初心者大歓迎〟の言葉につられて…。とんでもないことで、若いといってもみなそうそうたるベテランばかりだったんです。
まだ初心者なんだから…など慰めにもなりませんでした。まるでカルチャーショックです!ここは私のような者が踏み込む世界ではないんだと、その時は本気で思い、もう俳句はきっぱりと辞めようと心に誓って帰りました。ちょっと大げさですか?でも、私もまだ若かったんですからね。それが、今こうしてどっぷりと俳句に浸かって、朝から晩まで俳句三昧ですもの。実は今日も俳句教室で、明日は午前中がきらら教室、午後からは馬酔木句会なんですよ。先のことなんか分からないもんでしょ!アハハ…
今NHKの朝ドラ「エール」の放送で、〝若鷲の歌〟というのがあったでしょう。それを聞いていてフッと想い出したことがありました。
随分前ですが、広島の江田島の見学に行き、そこで句会をしたときのことです。投句の中にその〝若鷲の歌〟を詠んだ句が出ていました。結構点が入っていたような…。それで先生が、採らなかったYさんにどうしてかと聞かれたんです。その答えが、〝若い鷲なんてどこにもいなかったし、見たこともないから採りませんでした〟と。すぐに大笑いになったんですが、当の本人はきょとんとして、なぜ???と。
当時の先輩方は、この歌を唄ったりして、あこがれたんだとか。でも、若い人なら知らないのが当然でしょ。ちなみに今の俳句界では50代でも若いといわれます。当時は40歳までが若手でしたが、今では若い人がいなくなって、私が若手といわれる人たちの選をしている「あしかび抄」は、50歳までなんですよ。最近はそれも1年1年少なくなっていって…これからどうなることやら。頭のいたいことですが…
このように知らないということで、恥をかくことって多々あるでしょう。その時の彼女も、私と同じように笑われた分だけきっと心に深く残り、それからの精進の糧となったに違いありません。だから、今はもう立派な馬酔木同人になっていますものね。
〝聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥〟とよくいいますから、どうせ恥をかくなら早い方がいいですよ。若いときなら尚更…。そういう恥をかいたり失敗を繰り返して、人は成長していくものではないでしょうか。
俳句は、ある程度の年齢になってから始めますので、その〝恥をかく〟ことがイヤ、興味があるけどと…尻込みされる方が多いようです。最初から何でも知っていれば、それはもう初心者じゃないでしょう。何も知らないから初心者…なら恥をかくのも当り前!年齢だけでみるから恥ずかしいのであって、俳句年齢でみれば〝あなたはまだ小学生にもなっていないのよ〟と、私は教えます。だから、小学生が手習いをするように俳句のことは何でも聞いて早く上達して下さいと。
そういう話をして、みなさん納得されると見違えるように上手くなっていきます。ある意味〝学ぶ〟ということは〝恥をかきに来る〟と思ったらいいのかも。
私も未だに恥をかいています。さあ、みなさんも一緒にもっともっと恥をかきましょう。そう考えると、俳句に限らずなんにもコワイものはありませんからね。じゃあ、ガンバリマっしょ!
写真は、夕方の〝酔芙蓉〟。初秋の季語なんですが、まだこんなに咲いています。まるで先日の台風で目が覚めて若返ったように次々と…。