ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

兼題は〝茸(きのこ)〟

2020年10月30日 | 俳句

 昨日の夕方出かけたとき、見るとまだ明るい東の空にもう大きな白い月が…ああ、そうだ!今夜は「十三夜」の月だったわ…と。家に戻ったのが7時頃。車を降りて、写真でも撮ろうかと見上げると、なんとお月様は?…ウルウルと滲んでまるで〝おぼろ月〟のようでした。だから写真はパス…

 俳誌への原稿もやっと書き上げて送ったし、…あら、まだ自分の今月の投句が残っていたわ!指導している皆さんの句はみんな済んでるので、既に投句されているでしょう。だというのにいつも自分のは最後…それでちょくちょく忘れてご迷惑を掛けてしまうこともあるんです。申し訳ありまっせ~ん。

 今月最後の教室の兼題は〝茸〟でした。この季語は説明不要とは思うのですが、最近はスーパーで年中売っていますので、季語と思わない方もいらっしゃるでしょうかね。

 〝茸〟とは、晩秋、山林の湿地、生きた木の根や幹、または朽木などに生える菌類の総称です。松茸をはじめシイタケ、シメジ、ナメコ、マイタケなど、たくさんの種類がありますが、最近では食用のものを殆どが培養して人工的に栽培していますので、勘違いするのでしょう。しかし、季語としては、自然に生えているものとして詠んでいます。

 文語では茸のことを〝たけ〟とか〝くさびら〟とかいうのですが、私たちは〝なば〟と言っていました。ところが、辞書を見てみると〝中国・九州地方できのこのこと〟ですって。知らなかった!方言だったんですね。

  傘さしてまつすぐ通るきのこ山         桂信子

 これは、第7句集『草樹』(1986年刊)に収められている句です。作者桂信子氏はこの時もう70才過ぎ。氏については俳句を始めてから名前だけを知りましたので、詳しいことは何も知りません。それで、『桂信子全句集』を手がけられたふらんす堂さんの紹介文をご紹介しますね。

 戦後俳句を代表する女性俳人・桂信子の作品五二一八句を収録。昭和の激動期より、90歳でその生涯を終えるまで俳句をつくり続けた桂信子の作品の全貌をとらえる。自らを律することに厳しく、鷹のごとき激しさをその内奥に秘めた信子の作品は、女性ならではの瑞々しい抒情性と清高の気品を湛えている。

 また、この『草樹』を出版したころに、信子氏が「作句信条」として書かれたもの…
 「俳句は平明でなければならぬと思っています。しかし単なる平明な表現がよいと言う意味ではありません。平明な表現のなかにたたえられた滋味、それを感じさせる奥行きのふかい句をつくりたいものと思っています。
 『表現は平明に、内容は深く』ということなのですが、ほんとうによい俳句は口ではちょっと説明出来ないのではないでしょうか。会得するより致し方ありません。いい作品はおのずから光を発するものです」と。
 これらを読んでも分かるように、よい俳句は説明できないんだと…。

 でも、氏の言う「表現は平明に、内容は深く」ということから上掲の句を見てみますと、〈まつすぐ通る〉ところに作者の言わんとするものがあるような気がします。まさにこの姿勢は桂信子氏そのものでしょうか。雨の降るきのこ山を…茸などには目もくれずただひたすら前だけを見て通り過ぎていく姿…。皆さんだったら何を感じますか?読む人それぞれに沸き起こる感情があると思います…いうならばそれが俳句なのです。

 昔よく言われました。〝説明しないと分からないようなのはいい俳句ではないよ!〟と。その通りです。だから何も言いませんので何かを是非心に感じてください。それだけでいいんです。読む人は…

 でも詠む人はそういうわけにはいきませんよ…だから難しいんです!あれ、私何言ってるんでしょう。アハハハ…

 句会での最高点句は〈検査値はともかく今日のきのこ飯〉でした。きのこ飯ではちょっと物足りないのでは?というと、なんと作者は…主人でした。そういえば、前日医大に行って、検査値が少し上がっているから気をつけるようにと言われたんだとか。季語変えるといいよ…と言うと、〝兼題だったから…〟と。ハイ…(笑)

 今年は山口県では松茸が豊作で例年の半額だと、ニュースで流れたので、翌日すぐに買いに行った人がいて…どうだった?と聞くと、売切れだったと。(笑) その松茸の産地は宇部から2時間ぐらいはかかるところなんですよ。本当にみんな熱心。句会もそういうわけでとても盛り上がりました。お疲れ様!

 写真は、我が家の〝紅葉〟。台風で葉がやられてしまってチリチリになっていたのが、新しい芽を出してその若葉が紅葉し始めたんです。みんな自分の役割を忘れずに必死で生きようとしているんですね。花や木にはいつも教えられることばかりです。

コメント (5)
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