うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

S&V(仮)その6

2016年08月29日 21時19分29秒 | ノベルズ
遠浅の海は朝からダイヤモンドのようにキラキラと輝いている。
夕焼けの海も好きだが、薄水色の海もダイヤモンドのようで、眩しく、愛おしい。まるでカガリのようで。
その彼女と、どうにもここにきてしっくりいかないのは自分のせいだ。つくづく情けないとは思うが、カガリと付き合うようになって、今まで知らなかった自分がどんどん溢れてくる。それはとても嬉しい事なのだが、今まで当然としていたアイデンティティがそのギャップを埋められず、四苦八苦している。
カガリに、そんな自分の悩みを背負わせたくはない。今朝の朝食の時は、普通に「おはよう」を言えた。カガリもいつもの笑顔で返してくれた。だからきちんと謝って、誤解を解いておきたいのだが、どうにも二人きりの時間を持てないまま、アスランは朝のビーチに佇んでしまった。
「アスラン、ちゃんと今日はカガリと向き合ってよ。」
そう後ろからくぎを刺すキラに、「あぁ」と返事し、気持ちを落ち着けようとしたその時だった。
「ごめん、ちょっと遅くなって。」
カガリの声に一瞬緊張が高まった。だが、焦ってはいけない。アスランは己の中の雄が高ぶらないよう自制して彼女に向き合った。が・・・
「カガリ、今日は大人し目にしたの?」
キラの方が残念といった口調をすれば、カガリは「えへへ・・・」と頭をかいた。
昨日のビキニ・・・の上に、たっぷりとしたサイズのTシャツを羽織り、おへその辺りで軽く結んで絞っている。腰には昨日ラクスが身に着けていたスカーフがタンキニのように巻かれていた。
「この方が日焼けしませんわよ。わたくしからカガリさんにお勧めしたのです。いかがですか?」
ラクスの解説と共に、彼女の視線が明らかにアスランに向いた。なるほど・・・ラクスも早々にアスランの『理由』に気が付いていたわけだ。
「ううん、それもボーイッシュで可愛いよ!流石は僕の妹!ね、アスラン?」
急に振られてアスランとカガリの目が合う。
「あ…あぁ、すごく似合うよ。」
「そ、そうか?あ…ありがと…」
ようやく正面からカガリと向き合えた。だが喜びの束の間、カガリの表情に違和感を感じた。
(…カガリ…?)
「じゃ、二人一組に分かれて、ビーチバレーしようよ!」
「うん!」
「賛成ですわv」
何事もなかったかのように、はしゃぐカガリ。このとき、カガリの心の奥に、小さな雲が宿っていたことに気づいたのはアスランだけだった。

「キラ、いきましたわよー!」
「それっ!」
鋭く打ち込んでくるキラに、
「カガリ、任せた!」
「OK!」
兄に負けじと高く宙に舞ったカガリの鋭いスパイクがラクスの足元に落ちた。
「やった!これでこっちの完全勝利☆!」
ハイタッチするアスランとカガリに、ラクスが珍しく糾弾する。
「ずるいですわ~。エターナル学院男女1位の運動神経の持ち主二人が相手では、私敵いませんもの・・・」
「え~僕だけじゃダメなの?ラクス。」
「もちろん、キラと一緒のチームは嬉しいですわv」
キラが拗ねれば簡単にラクスは機嫌を直す。このCPは本当にパターンがわかりやすい。
「だったら、今度は『男vs女』でどうだ?ラクスは私が守るぞ。」
「それも嬉しいですわ~v」
ラクスが神にでも祈るように手を握りながら、目を輝かせる。
「え~そんなの、本気で戦えるわけないじゃない。彼女と大事な妹相手じゃ本気になれないよ~。」
「何だ、キラ。今からもう負け惜しみの練習か?」
腰に手を当ててアハハと笑うカガリに、キラが言った。
「それより、今度は海で泳がない?なんか砂まみれになっちゃったから、洗い流したいし。」
「そうですわね。日も高くなりましたし、潮も温かくなったでしょうから。」
ふと、キラが思い出したように言った。
「そうだよ、ラクスも折角の可愛い水着が砂だらけだよ。」
「そうでしょうか?嬉しいですわv」
そういいながら、二人は必死にアスランに視線を送る。
(ここでカガリの水着姿を褒めてあげなきゃ!昨日言ったでしょ!?)
(アスラン、頑張って!)
二人の意図していることに気づいたアスランが、慌ててカガリを見やろうとする。
「そ、そうだ、カガリ。君の水着も・・・―――っ!///」
だが、言葉はそれで途切れてしまった。
「え?」
カガリが振り返りながら、泳ぐに邪魔なTシャツとスカーフをハラリと解いていたのだ。
その艶やかさと色っぽさが、アスランどころかキラとラクスでさえ魅入ってしまった。本人は無意識だったとはいえ、あまりにもタイミングが悪すぎた。アスランだけでなくキラまで<ゴクリ>と喉を鳴らせてしまったが、その沈黙がかえってアスランが先ほど感じていたカガリの僅かな心の曇りを、かえって広げてしまった。
「私の水着…あはは…やっぱり、似合わないよな。」
「そ、そ、そうじゃない!」
慌てて否定するアスラン。
だがカガリは寂しそうに言った。
「だって…だって、昨日だって困った顔してたよな、お前。さっきまでは平気だったみたいだけど、今のお前、昨日と同じ顔してる。…って、そうだよな。私がこんなことしたって似合わないのに。」
「カガリ、違―――」
「ごめん…ちょっと一人で泳ぎたいな、なんて…」
アスランが何か言いかけたみたいだけど、聞こえないふりをして、カガリは一人砂浜を走り出した。

別荘から少し離れた岩場で、カガリは膝を抱えてうずくまった。
(―――「モチよ!ザラ君だって男だもの。彼女の色っぽい姿を見たら、喜んで惚れ直すに決まっているじゃない」)
そういって自信満々に言ったのはフレイだったが、自分で選んだのはカガリ自身だ。
でも、肝心のアスランは喜ぶどころか視線を合わせてすらしてくれない。
「・・・アスランの・・・バカ・・・」
ううん、本当に馬鹿なのは私だ。私が勝手に喜ぶと思っただけだ。実際は目のやり場に困るくらい、アスランを困らせてしまっている。勝手に水着に込めた思いを押し付けたのは私の方だ。こんなへこんでまたアスランを、キラやラクスも困らせたらいけないのに。
「少し泳いで、すっきりするかな。」
そう思い、岩場の上から深い緑の海へと飛び込んだ。
<ザパーン>
深い…そこは想像していたより深い海の底。あぁそうか、深いからアスランの瞳みたいな濃いエメラルドをしているんだ。なんか押されるみたいに底の方へと導かれている…
(・・・―――っ!?)
カガリが異変を感じたのはその時だ。深いところへ潮がカガリを押し込んでいく。
(浮上しなきゃ!息が持たない!)
慌てて海上へと手をかき、足をバタつかせるが、一向に体が浮かんでいく気配が感じられない。
(―――「左の方に岩場があるが、そこは潮が巻いていて危険だから。」―――)
そうアスランが言っていたのを、今になって思いだす。
(そんな、私―――このまま溺れて―――)
背後にはすぐに迫った命の危機。それがカガリをパニックにした。懸命にバタつかせた足が悲鳴を上げた。その時
<ビンッ!>
(痛っ!)
右足が動かない。痙攣。足がつったんだ。
(キャァァーーーーッ・・・)

カガリの声にならない悲鳴が、水底へと沈んでいった。

・・・(続けっ!)

***

嗚呼、8月中に終わらせたかったのに・・・
ハツカネズミがウダウダしているおかげで、また延長ですよ。
てか、カガリちゃん、大ピンチっす!
誰か、早く助けてあげてくれぇぇーーーっ!!


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