銀行から帰って家に入ったら、
「おとうさん、おとうさん」と叫ぶ声。
何事が起きたのかと出て見れば。
「あんた何しとるんがいね」と恐い顔。
どうやら玄関に通帳が落ちていたらしい。
複数の通帳を持って歩いていたので、もしや!とカバンの中を見れば。案の定一銀行の通帳が見当たらない。
青くなってそこいらじゅうを探したがない。
「すぐ銀行へ電話しなければ」としきりにせかす妻。
通帳がないので銀行の電話番号が分からない。
「104で聞けば」と妻がせっつく。
早くしないと誰かに悪用されるかもしれないとせかすので、仕方なく電話する。
「お止めすることは出来るけど、その後の手続きが面倒なのでもう一度探してください。それでも出て来なかったら再発行になって、初めから通帳の作り直しとなるので印鑑を持って来てください。」
「今歩いて来た道を戻って探しなさい」と妻がうるさい。
しかたないなぁ。と探しに出かける。歩いた距離が長いので探すのが大変。はたして見つかるだろうか。
人通りが多いのでその可能性が少ないが、そうするしか外に道はない。
歩いて来た道を遡ってキョロキョロ見て歩いていたら、携帯電話がけたたましくなった。
気の立っている時に何の用なんだ。と携帯に出て見れば、
「〇〇銀行です。通帳をお忘れではないでしょうか。」
「はい、ありましたでしょうか」
「それでしたら、何か本人を証明できるものを持って取りに来てください」
大急ぎで家に引き返した。何しろ車ではないし、道のりもだいぶ来ている。銀行が閉まるまで間に合うだろうか。
家に着いて、家内に銀行から電話がかかってきたかときいたが、掛かってこないという。どうやって携帯の電話番号が分かったのだろう。
早速、自動車免許証を持って銀行に急いだ。
「先ほどお電話されたのはあなたでしたか。」
「そうです。でもどうしてこちらの電話番号が分かったのですか」
「ハイ。登録されています。通帳があっても印鑑がないと現金を引き出せないので、戻ってくることが多いですね」
有難うございますと、丁寧に頭を下げてお礼を言う。
考えて見れば、 通帳だけあってもキャッシュカードがなければATMから現金を引き出せないんだ。
付け上げだけだったのでキャッシュカードを持っていかなかったので良かった。
気が付くと鞄を逆さに持ち歩いていることが多いのでいつかやるかも知れないと思っていたが・・・。
「なんでチャックを締めておかないのよ!」と家内から強いお達し。
おおこわ!!