昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

とっちゃんの宵山 ⑤

2016年07月29日 | 日記
4月になった。 勉強しなければ、と思う心に反して、気力は生まれてこなかった。このまま気力なんて喪失してしまうのではないかとさえ思うほどだった。寝転び天井を見つめまどろみ、想い浮かべるのは、初恋の人とのごくわずかの時間と、啓子と過ごした2時間のことばかり。突然背中を突き抜ける不安に目覚めても、身体は敷きっ放しの布団の上にだらしなく沈みこんだまま、という状態に陥っていた。 啓子に返事を書いた。伝え . . . 本文を読む