昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

とっちゃんの宵山 ②

2016年07月18日 | 日記
「なんや、とっちゃん!大きな声はあかん言うてるやろ、いつも。もう~!」 小太りのおっちゃんが奥から出てきた。歩くと汗ばむほどの陽気とはいえ、クレープのシャツにステテコは早過ぎる。おまけに、上から二つボタンの外れた胸元からは貧相な胸毛が覗いている。僕は一瞬、目を背けた。 とっちゃんから僕へと向けられたおっちゃんの大きな目は、一瞬ギラリとした後、すぐ柔らかくなった。 「配達?したいんか?」 お . . . 本文を読む