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■凄絶,日本の戦後

2023-08-15 | ●山田語録

■■■■■■■■■凄絶,日本の戦後■■■■■■■■■


■■「日本の敗戦
🔵戦後78年にあたる。かねてから触れてきたが,戦争の語り部で
ある戦争体験世代の人達が,既に
90歳を超え,全人口の2%を切る
に及んで,敗戦当時の記実や記憶が,遠い昔の幻と化してしま
いそ
うで心もとない。

そんな時代状況の中で,今回のウクライナ戦争の勃発は,平和憲法
があれば, 自国防衛が出来ると信じてき
た平和ボケの日本人にと
って, まさに晴天の霹靂であったに
違いない。
私達の
日本は, 私たち日本人で守るべきとの 戦争体験世代の正論
が, ようやく日本国民
の心に届いたといっていい。

筆者は,先の大戦の体験世代でもあり、毎年8月の終戦記念月には
戦争の愚かさ,
馬鹿馬鹿しさ,
非人道さ
について、様々な視点から
訴え続けてきた。

ただいくら負け戦とは言え,勝者が絶対正しいとは言えない 一面
もある。人の喧嘩
同様,両者にそれぞれの言い分があり, ときに勝
者が不条理にも不利を背負うことになり
かねない側面もある。
また旧くからの「喧嘩両成敗」という考え方もある。

🔵太平洋戦争の足跡

                            🔵出所:JIJI通信
戦後の平和思考, いわゆる勝負(戦争)をよしとしないと考えで生
れた国際連合
のような平和調停活動は, いまや世界の良識となり
つつある。
しかし最近では,大国の覇権による 世界を分断する流
れが生じ,世界の国々を包括する
連合機関でさえ,平和への合意が
できないという悲しい現実がある。

⬛️⬛️「敗戦直後の日本
78年前の8月,広島と長崎に原子爆弾が投下された。
全国主要都市への大空襲が続いた。
(出典:JIJI通信)

1945年8月15日, 無条件降伏勧告のボツダム宣言受諾を知らせる
天皇の玉音
放送で,4年に及ぶ太平洋戦争は終結する。

🔵日本の戦後は,GHQ(連合国軍総司令部)の米軍統治により ス
タートを切った。最高
司令官のマッカーサー元帥は, 日本軍の解
体や,
軍事産業の解散などを指示し,日本国の民主化に着手する。
(出典:JIJI通信)
しかし戦後の日本経済は,極度に疲弊し,鉱工業生産は平時の2割
に落ち込む。そして年率100%を
超える悪性インフレが, 日本全
土に襲いかかる。
都会地は,極度の食糧不足に襲われる。食べるものがない。食糧
を手に入れるため,物々交換の箪笥
の晴れ着を 手にした男達は、
競って田舎の農家をめざしたという


 🔵太平洋戦争、海外引き揚げ者の内訳
 
                        (出典:厚生省)
🔵終戦時を海外で迎えた軍人や軍属や民間人など 在外邦人の生
存者630万人が, 引き揚げ船で
佐世保や舞鶴など全国の港に続々
と復員し
てきた。
港の埠頭のスピーカーからは、
田端義夫の「かえり船」がながれ,
出迎えの人たちの感涙を誘った。

一方,東京上野駅の地下道は,東京空襲で焼け出された人たちや,家
のない海外からの
引き揚げ者で埋まった
戦後すぐの都会の焼け跡には、早くも露天(ブラックマーケット)
が現れ,
売物のおでんや芋などに,腹ペコの市民が列をなしたとい
う。政府の米の配給は,遅配や欠配が続出する。
47年(昭和22年)には,東京地裁の
裁判官,山口判事が極度の飢えで,
不遇の死を遂げるという悲劇が起きる。

🔵戦後の国民にとって,食糧不足の不安もさることながら,更なる
不安は,
敗戦直後から猛威を振い続ける 悪性インフレだった
戦後物価は,
・45年8月から11月の3ヶ月間に20%の高騰、
・12月には66%高騰した

・自由物価の闇市場の価格は、公定価格の30倍に及んだ。
・卸売り物価指数は, 終戦時の45年8月から49年12月の4年間に
 65倍と言う驚異的な高騰をみせた。
理由は,国内生産力(供給)が極度に縮小して,需要に追いつかない
状況が続いた
からだ
という。しかも想像を超える悪性インフレ
だった


 
⬛️⬛️「恐怖のデフォルト
🔵政府は,日本経済の本質的な改善を進めるために,まず当面する
悪性インフレをいかに克服するか、必死に取り組んだ
・「預金 封鎖
・「財産税法案
預金封鎖の前日に,政府は「新円の切替」を行い,預金の引出し
を禁止。
そして今までのお金が使えなくなるので, 銀行で新円と
交換する
よう国民に促した。

2月16日, 
緊急の金融処置として 日本初の金融緊急処置令
を発表し,預金封鎖を実行した。
理由は,戦後の需要に対して物資が足りず,悪質なハイパーインフ
レを
防止するために,預金封鎖を行う必要があったとした。

お金の引き出しは1ヶ月1人100円、世帯主でも300円しか引き出
せないという厳しいもの。
そして3月3日以降,旧円は全て無効と
なった。
財産税は,現金,預金,株式,不動産など金融資産を対象に 10万円以
上の個人財産に課税された

これが,いま噂のディフォルト(金融緊急処置令)の正体である。
 

🔵今回の記実に際し,77年前の日本初のディフオルトの実態を 探
るべく
戦後の日本経済の再建構想の記実や識者による記録や専門
書など、2日に亘り公定図書館や専門図書を探し歩いた。
戦後日
本経済のドキュメントとしては, 極めて重要な文献資料と思えた
が,全く見当たらなかった
挙句の末,あてもなく手を伸ばした検索サイトで,偶然出会ったの
が,
下記の学術論文だった。(A4版約30ページの著作)
実は,この貴重な資料とデータに助けられ,いまこのブログの論旨
を書き進めている。

🔵表題
敗戦後日本の巨額の戦時国債は,どう処理されたのか

  副題   (インフレ、財産税、戦時保証債務、国債負担の顛末)
 著者は、中央大学教授、経済学部長  関野満男氏
(この論文を基に2021年下記の本が中央大学より上梓された。) 
終戦時の預金封鎖と緊急金融処置の概要は下記の通り
(中央大学、関野教授の論文資料より引用)

⬛️「敗戦直後の日本財政(緊急金融処置が行われた市場背景)
国債残高1408億円と国債約2000億円の政府債務残された。
生産力の崩壊
極度のインフレ
経済危機
財政危機
の中で
政府大蔵省は,1回限りの財産税で、国債の償却と財政再建
を勧めようと計画した。

🔵昭和21年度(1946年)政府予算の概要)
・租税収入   120億円
・歳出     172億円
・財源不足額    52億円
政府債務総額  2174億円(45年末現在)

(その内訳)   
国債       1560億円

・臨時軍事費      150億円(借入金)
政府保証金等       460億円
(注)膨大な国債費を赤字国債発行で賄えば、財政破綻と悪性
           インフレや
社会秩序の崩壊が危惧された。

   
🔴敗戦直後のインフレは厳しかった
戦時のインフレが継続、深刻化した
卸売物価     45年12月 公定価格の2倍
・卸売り物価指数は、45年12月、66%上昇
自由物価(闇物価)は,公定価格の30倍になり国民生活を圧迫

🔵国内の生産力)
・国内農産物生産指数 59%
・国内鉱工業生産指数 26%
国内製造業指数   17%

🔵日銀券の流通量の急増)
・45年末、         554億円
●民間金融機関への貸し出し急増、
・45年末、             378億円

🔵予想される政府(国庫)負担)
1)連合軍駐屯費      30億円(直近3ヶ月分)
2)戦地軍事費の処理経費   580億円
3)連合軍への実物賠償           (不明)
4)軍需企業への補償ほか    668億円
5)戦時中の政府保証債務
  (
上記を国債や借入金で賄うとすれば、利子だけで100億以上)
・赤字国債の累積発行は、容認できないとした。
・日本の財政を根本的に立て直すことが喫緊の課題とされた。
・全く革新的な方法を講じることが必要だった。
 そこで発想されたのが、財産税構想である。

 
⬛️「財産税の概要
・課税対象は、46月3月の申告財産価格による、
・税率は、25%〜90%(超過累進税率)(免税は10万円以下)

🔵財産税額の見込みは、
個人財産総額、  1438万戸 4032億円
・課税10万円以下    1383万戸 2681億円
課税10万円超       55万戸 1351億円
財産税課税対象    51万戸 1281億円

 (国内総世帯数の3,5%,平均負担率34%)

🔵財産税の課税構造の内容)
・預貯金  28.3%
・土地      20,4%
・家屋   17,9%
・株式等  12,0%
・国債     1,3%
課税総個数 46,6万戸


出典:朝日新聞社

🔵私は,戦時中に疎開移住した倉敷市の郊外で終戦を迎えた。
私の拙い記憶によると,
昭和21年,中学2年の2月, 倉敷市の中心街
にある中国銀行倉敷支店前の多くの人の
列に,旧円の百円札を手
に祖父と共に並んだ、そして無事に
新円の百円札と交換(兌換)し
た事を覚えている。
しかしそれ以上の事は、覚えていない。

              🔵出典:JIJI通信
🔵戦後,突然の金融封鎖は,敗戦後の疲弊した日本の家庭に
大きな衝撃を与えた。極度の食糧難の上に金融難、一般家庭の生
活は,困窮を極めた。改めて戦争の悲哀,特に敗戦の苦渋を,全国民
が等しく味わう事になる。

     
⬛️⬛️「戦後の厳しい財政」
🔵「いま日本の借金(国債発行残高)が1100兆を超えた。国民
1人当たり1000万円の借金」
大蔵省筋の公式発表とする新聞報
道がでた。手元の携帯には、フエィクとおぼしき情報も飛び込ん
できた。

 
来年に迫った新しい1万円札の発行に際して「2000兆円(日銀
調べ)とも言われる日本の「家計金融資産」をターゲヅトに新
札交換と金融封鎖があるのでは」
との巷の噂が後を絶たなぃ

🔵数量学者の高橋洋一さんによると,日本の国家財政を貸借対称
表的分析を加えるとすれば,全く安全だという。
但し一部の学者が、マルクス学派のMMT理論などをを持ち出して,
話をややこしくしている側面もあると言う。
最近の経済誌の情報
や「経済学の基本がわかる本」入江雄吉著
などによると, 高橋洋一さんの説が正しいと思う。

  
                                                 🔵2出典:ニッセイ基礎研究所

「戦前,
戦後約120年にわたる政府債務残高の推移

    
             (出所:ニッセイ基礎研究所)

🔵戦後78年のいま,世界有数の経済大国の日本が現存し,現に90
歳の老人
が確かな年金で元気に暮らしている事をみるとき,改め
て日本経済の力強さと日本の平和を確信した。

今回記実した 中央大学関野教授による終戦直後の日本経済の現
況分析は、極めて貴重な研究成果であり、改めて戦争の恐怖を
知る事が出来た。
データサイエンス時代のいま、無謀な戦争を抑止するに足る貴
重なデータや情報の収録だった。

いま日本と言う国が存在するのは, 終戦時の日本
の先達たちが,
敗戦という極めて厳しい現実の中で, ただ
ひたすら日本
再興の
ために 献身努力した事に負うところが大きい。
後世に生きる私たちは, ひと時もこの事を忘れてはならない。
                        (山田)

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