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■タイの国防

2018-11-10 | ●タイの国防

■■■■■■■■■■■■タイの国防■■■■■■■■■■■■
■[高まる国防意識             
                      
●日米露やASEAN(東南アジア諸国連合)など18ヶ国の首脳が参加
する東アジア首脳会議が、去る13日シンガポールで開催された。
声明文では、米中の外交問題や中国の南シナ海拠点化問題につい
て直接触れることなく、その懸念に留意するという事で閉幕した。

●いま国際環境は 新しい局面にある。 
自国フアーストを標榜する大国の存在や裏に潜む経済と貿易の国益
優先主義と,世界的な炎上政治家の台頭など、世界はいま、大きく揺
さぶられている。

●地政学的に見て四囲を海に囲まれた日本と、四方を他国と接する
タイとは、国防の理念もその実態も大きく異なるが、まさに迫りくる外敵
から自国を守る国防のために、軍隊が存在する事は、相似している。

 
戦後の日本は、平和憲法で侵略を戒め、自衛隊が専守防衛いわゆる
国防のために存在する事になった。しかし時代の趨勢から 、自衛隊の
存在と運用について,憲法改正の論議が高まりつつある矢先である。
私自身タイの軍事事情について、さしての知識は持ち合わせないが、
タイ国軍が、欧米列強のアジア植民地支配の侵略軍と戦い、自国を守
りぬいた輝かしい実績がある事はよく知っている。

■「平和外交力と軍事抑止力
●時あたかも日本では、幕末の黒船襲来の頃だったが、当時のタイ
の領土は、少なくとも日本の約2倍近くあったと想定される。
欧米列強の英国、フランス、オランダ、米国によるアジア植民地支配
の侵略に対して、食い物にされずに残ったのは、
アジアで
は、わずかにタイと日本の2国だけだった。


●一見温厚な国民性のタイの人たちは、何故、孤高を保って独立を
守りぬく事が出来たのか
今もって 世界の不思議話の一つになって
いる。
タイの属領ルアンパパーン王国(今のラオス)で起きた、フランスに
よる紛争事件は、当時のタイ(シャム王国)にとって、欧米列強による
植民地支配紛争の最初の出会いだった。

カンボジア、そして、ベトナムを保護国にしたフランスは、タイ属国の
ラオスの種族との紛争を仕掛けてきたが、タイは自国を守るのが精い
っぱいで、ことごとく敗退した。 そして属領ラオスをフランスの保護区
に割譲することで、戦争を回避したという。


●後にタイの国王ラーマ五世は、ビルマを植民地化した英国と、ベトナ
ムやカンボジアを植民地化したフランスに対して、タイが政治的な中間
緩衝地帯としての役割を果す事に徹した。
そして英国がタイに攻め込んで来れば、フランスに近寄るという具合に
して、常に英仏の中間にあって大国を翻弄しながら、したたかに生き残
ってき
たという。
 

●その後のタイは、アジアへ進出したロシアと、また近世では共産主義
化阻止で始まったベトナム戦争では、西側陣営の米国に加担した。

そして多くの戦場戦傷兵の受け入れで病院兵站的な役割を果たした。
そして、後のその経験を活かして、タイのメデイカルツーリズム(医療)の
基盤と背景を作ったといわれる。

また、チェンマイやパタヤを多くの米国帰休兵の休息地として提供した
ことで、戦後の欧米向け大型リゾートの開発の糸口とすることが出来た
という。


●振り返れば、第2次世界大戦のときもタイは日本と友好的な軍事同
盟を提携していたが、日本の敗色が濃厚とみるや 終戦前日になって
対日宣戦布告をして、一日にして戦勝国となった。
機を見て敏、その変わり身の早さは まさに伝統的なものと言える。
●ちょうど日本の明治時代、欧米列強の大国を相手に国の存亡を救
った ラーマ五世の名君外交は、タイ王国の伝統的で したたかな平和
外交の規範として、いまも語り継がれている。

タイに詳しい柿崎一郎横浜市立大学教授は
タイは、昔から特定の国との関係を強化しすぎるのを好まず、複数の
国を拮抗させて権益の集中を防ぎながら、自らの利益を最大限」引き
出すことを得意としてきた。近年の中国への接近もそのような側面が
あり、クーデター後、冷淡になった西側諸国の態度を軟化させるため
の切り札としての役割を果たしている。」
タイの最近の国際関係について、極めて明確な分析をされている。


 

    (軍事政権暫定内閣プラユット首相)

2014年には、この国軍による奇襲的なクーデターがおこった
その経緯はご存知の通りだが、国軍なかんずく陸軍は、 ASEANのハブ
といわれるタイの政治と経済を掌握して、新しいタイをめざすために、
暫定軍事政権を発足させ既に4年がたつ。
そして来年月には民政化のための総選挙が行われる予定だ。

●米国は、昨年5月のクデターの時に、この暫定政経政権にいち早く
民政化を要求して、軍事援助の凍結の制裁を表明した。
にもかかわらず今年春には、タイ米共同軍事訓練が再開され、日本
の自衛隊も参加した、そのタイ国軍の変わり身の早さと手際のよさに、
周辺諸国は驚いたものだ。
  
(タイ米共同軍事訓練

また暫定政権が中国から潜水艦を3隻購入する仮契約をしたという
報道が流れて、またまた米国との間は、硬直化したように見えたが、
暫定政権側は、全方位外交の証と全く意に介していない。
プラユット暫定首相は、最近渡米して、トランプ大統領を訪問、二股
外交に余念がない。 
東西の大国を相手にしての外交巧者ぶりは、さすがである。

 
■「タイ・クーデターの実情
●タイの国軍は、日本の約2,2倍にあたる30万人の精鋭を長い国境
警備に投入してきた。そのほかにタイ国軍は、タイの政治にも大きく関
ってきたと言われる。
それがタイの政治を大きく転換してきた、いわ
ゆる国軍によるクデターである。


●話は変わるが、アジア諸国の中では、タイを研究する研究者や学者
は比較的多い。またその文献や公開資料も多い。
しかしタイの防衛や国軍やクデターについての公開文献は、極めて
ない。
その要因は、近世におけるクデターのほとんどが国軍によっておきた事、
そして今なお、2015年の国軍によるクーデタ―の暫定
政権下にある事
と関連があるのではないかと思ったりしている。 ただし真偽のほどはわ
からない。

タイでは1900年来、軍事クデターがたびたび起ている
1932年(立憲クーデター)を皮切りに成功したクデターを列挙すると、
・1933年

・1947年
・1951年
・1957年
・1958年
・1971年
・1976年
・1977年
・1991年
・2006年
・2014年 そして現在に至る。
   
   ●その経緯をつぶさに見ると、そのほとんどは国軍が主導し、政権
を替える手段として クデターをおこし、ほぼ成功している。 
そのクーデターは、時の政権への不満が、原因とされる、
   
そして、ほとんどのクデターには、必ず決まった形があり、国軍とは
いえ、その主力をなしたのは、陸、海、空の中の「陸軍」である。
まず

政府機関と放送局を占拠し、
・次いで首相と内閣を更迭し、
・国会の解散、憲法を破棄し、
・国王の裁可をえて、陸軍の長が軍事政権を作り首相に就任する。

その手際のよさは抜群である。その後、文民による暫定政権が発足、
それにゆだねて憲法を起草し、総選挙を行う。
その結果、民意によって新しい指導者が選ばれ、新政権が発足する。

ところが2014年に起きた今回のクデターは、従来といささか異なり、
今も民政移管がないまま、国軍による暫定軍事政権が続き、既に4年
を超える。

今回のクーデターの背景には、国民を2分した タクシン派掃討という
極めて難しいタイ独自の政治課題が潜む。

本来、国防にあたるべき国軍が、軍事政権として政治に介入するのは、
新興国に多いケースだが 中進国のタイで常套化したのは極めて珍し
いケースと言っていい。
国民もまた平然とその成り行きを見守っている節があるし、国内の治安
に問題はない。経済も輸出も好調であるから、不思議である。

但し70数年間、平和な環境にある日本人にすると、アジアで一番の友
好国タイの武力抗争の様相は、どこまでも不安de恐怖に映る。
それだ
けに1日も早い民政移管を望む声は大きい。

■「タイ国軍の実力
●ここまで潜在的な実力を持つタイの国軍とは、いかなるものか、その
実情に触れておきたい
■「タイ国軍の現況国連資料(2012年)
) (項目)       (タイ王国)
●人口        6813万人
●GDP名目        3457億 ドル
●軍事予算        1685億バ―ツ 
●兵役                     2年
●総兵力           30,5万人
●陸軍戦力            19万人
●戦車                283両
●海軍戦力        4,6万人
●総隻数           119隻 
●航空母艦            1隻保有
●空軍戦力       4,6万人
●作戦機            165機
●海軍機           39機

  
東支那海の警備に当たる米航空母艦)
■「軍事予算から見た世界ランキング」(2017)
(順位) (国名)      (軍事費)
1位  米国          609,758
2位  中国               435,005
3位  インド              235,092
4位  サウジアラビア 180,028
5位  ロシア             157,598
6位  フランス            64,509
7位  イラン               55,062
8位  英国                 52,320
9位  日本                 51,788
10位  ドイツ               50,775

11位  韓国           50,560

16位  イタリア             36,591
24位  台湾                 21,627   
26位  カナダ              21,210
27位  タイ                  17,226 ●
(出所:World Bank)

 


■「軍事力総合評価からみた世界ランキング」(2017)
(順位) (国名) (兵力数) (航空機)  (戦車) (潜水艦)(航空母艦)
1位    米国  140万人  13,444     8,848        75    19
2位    ロシア    77            3,429   15,398        60     1
3位    中国    243            2,942     9,150        68     1
4位    日本      25            1,590        678        17    (2)●
5位    インド   133            2,086     6,464        14     3

7位    韓国      63           1,451     2,381        15     1
13位   台湾       30              815     2,005          4     0
16位     タイ       31               551       722          0       1●
(出所:Global Firepower )

(
日本が誇る「最新鋭のヘリコプター空母)

軍事力の総合評価は、必ずしも予算額では決まらないという
軍隊の構成や、戦略的な最新戦備、その運用能力などが、評価の対
象になる。
日本の場合、海洋国家であるので兵力は少ないが、最新の戦略戦備
が、実際の戦争になると、効果的だと評価されたようだ。タイも予算ラン
クよりも、軍事力の評価は高い。

因みに、日本の2017年度の国防(防衛)予算は、5兆1251億円。
日本の自衛隊兵力は、総兵力 24万人、うち陸上兵力19万人である

●2015年ASEANは、設立40年にして ようやく念願の経済統合が実現
した。

その6億人という巨大市場は、日本にとっても、タイにとっても当面する
力市場と言える。 しかしそのASEANでは、中国の南沙諸島などの
不法海洋進出問題など
覇権トラブルが後を絶たない。
また一時的に平穏になったとはいえ、北朝鮮の今後動向には、いささか
も気を許す訳にはゆかない。果たしてタイを初めアジア諸国の軍事力
が、
戦争や紛争の抑止力として充分に機能するのか。

タイにとっても、ASEANにとっても、日本にとっても、覇権国家中国の
台頭や北朝鮮の今後動向は、共通の不安要因である事に変わりはない。

「参考文献」●「タイ中進国の模索」末廣   昭著 岩波新書
         ●「タイの基礎知識」  柿崎 一郎著   めこん


 


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