共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日は《ラプソディ・イン・ブルー》が初演された日〜小曽根真のピアノによるジャジーなガーシュウィン

2022年02月12日 15時00分25秒 | 音楽
今日も、日中は陽射しの暖かな一日となりました。そんな中で私は、一日中どこへも出かけず自宅でヌクヌクしておりました…。

さて、今日2月12日は《ラプソディ・イン・ブルー》が初演された日です。

《ラプソディ・イン・ブルー》といえば



『アメリカ音楽』というジャンルを打ち立てたと言っても過言ではない作曲家ジョージ・ガーシュウィン(1898〜1937)の代表作のひとつです。元は《アメリカン・ラプソディ》という題名だっうですが、兄で作詞家でもあったアイラ・ガーシュウィン(1896〜1983)が現在の題名を提案して変更したといわれています。

この曲が作られることになった発端は1924年1月3日に、他の仕事で多忙だったガーシュウィンが兄のアイラとビリヤード場に息抜きに行った時に手にした新聞で、

「ポール・ホワイトマンがガーシュウィンに曲を発注した」

という記事を見つけたことでした。そんなことを聞いてもいなかったガーシュウィンは翌日、当時最も人気のあったジャズバンドであるホワイトマン楽団を率いていた



指揮者のポール・ホワイトマン(1890〜1967)に抗議の電話をかけました。

しかし、実はこの新聞記事はホワイトマンがガーシュウィンを自分の元に呼びつけるためにわざわざ作った偽記事だったらしく、

「もう、こうやって新聞記事にまでなってしまったんだから作ってくれ」

とホワイトマンに押し切られてしまいました。そのように既成事実を突きつけられたかたちで作曲されたという、何とも突拍子もない出来事がきっかけで誕生したのが《ラプソディ・イン・ブルー》でした。

それでもガーシュウィンは、この曲を約2週間で一気に書き上げたといいます。ただ、当時のガーシュウィンはまだきちんとしたオーケストレーションに精通しているとはいえなかった上に作曲の期間がかなり限定されているという事情もあったので、ホワイトマン楽団のピアニストであり専属の編曲家でもあって、中学校の音楽の教科書の鑑賞教材として掲載されている《グランド・キャニオン組曲》の作曲家でもある



ファーディ・グローフェ(1892〜1972)が代わってオーケストレーションを行いました。

当初ガーシュウィンは2台のピアノを想定しながら作曲していましたが、それをグローフェが編曲していってガーシュウィン自身が弾くソロピアノと小編成のジャズバンド向けの版が完成され、1926年の2月12日にニューヨークのエオリアンホールで開催された『新しい音楽の試み』と題されたコンサート《ラプソディ・イン・ブルー》がで初演されました。その後もいくつかの版が作られましたが、同じ1926年にグローフェが再編曲したオーケストラ版と、ガーシュウィンの死後の1942年にグローフェ編曲版に更なる加筆修正を加えた版がよく知られていて、現在では主にこの1942年版が演奏されています。

《ラプソディ・イン・ブルー》はピアノ独奏が入るため、一種のピアノ協奏曲風な雰囲気もあります。この曲は発表当時から、ヨーロッパのクラシック音楽とアメリカのジャズを融合させたシンフォニックジャズ作品として高く評価されました。

ピアノ独奏のカデンツァの部分は、仕事でボストンに向かう際に乗った列車の走行音から着想を得たとされています。また冒頭の印象的なクラリネットによるグリッサンドは、元々は



このように楽譜に17音の音階が書かれていたのですが、ホワイトマン・バンドのクラリネット奏者がふざけてグリッサンドでフィ〜ン♪と演奏したのをガーシュウィンが気に入って書き改められたと伝えられています。

因みに《ラプソディ・イン・ブルー》というタイトルは『ジャズの語法によるラプソディ』といった意味だそうです。ラプソディ(日本語で狂詩曲)という言葉には『民族音楽風で抒情詩的な、特に形式がなく自由奔放なファンタジー風の楽曲』という意味があるので、このタイトルからガーシュウィンはジャズを『アメリカにおけるある種の民族音楽』と捉えていたことが窺え、実際にこの作品は現在、アメリカ的な芸術音楽の代表格とみなされています。

そんなわけで《ラプソディ・イン・ブルー》初演日の今日は、ジャズピアニストの小曽根真さんがニューヨーク・フィルハーモニックと共演した演奏動画を転載してみました。ジャズピアニストならではの洒脱なピアノ独奏と、シンフォニックなオーケストラとの共演をお楽しみください。



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