今日は朝から雨が降ったり止んだりを繰り返す、生憎の空模様となりました。そんな中、今日はひたすらデスクワークに勤しんでいました。
ところで、今日はエルガーの誕生日です。
初代準男爵サー・エドワード・ウィリアム・エルガー(1857〜1934)は、イギリスの作曲家、編曲家、指揮者て、もとは音楽教師でありヴァイオリニストでもあった人物です。エルガーが遺した楽曲の多くは世界中の演奏会で取り上げられていて、中でも最もよく知られるのは《エニグマ変奏曲》や行進曲《威風堂々》、《ヴァイオリン協奏曲》、《チェロ協奏曲》、2曲の交響曲などがあります。
1904年、47歳の時にはナイト(騎士)、1931年、74歳の時には準男爵に叙されています。1924年からはイギリス国王ジョージ6世の音楽師範を務めました。
エルガーの来歴についてはについてはかつて書いたことがあるので省略することにして、今日ご紹介するのは《弦楽セレナーデ ホ短調》です。この作品は4月に小田原ジュニア弦楽合奏団が演奏した作品で、エルガーの作品のうちでも特に早い時期に広く認められた作品のひとつです。
1892年ごろのエルガーは、地元ウスターでアマチュア相手にピアノやヴァイオリンを教えたり、指揮者を務めたりしていました。1888年にエルガーはウスターのアマチュア団体を指揮して《弦楽合奏のための3つの小品〜「春の歌」(アレグロ)、「エレジー」(アダージョ)、「フィナーレ」(プレスト)」》を初演してますが、これが改作されて本作になったものと推測されています。
この作品が『セレナード』として完成したのは、1892年5月のことでした。はじめは友人のW・H・ウィンフィールドに献呈され、後に妻キャロライン・アリスに3回目の結婚記念日のプレゼントとして贈られました。
初演は、先ず第2楽章のみが1893年4月7日にヘリフォードで行われ、全曲の初演は1896年7月23日にベルギーのアントウェルペンで行われました。ロンドン初演は、エルガーが世界的作曲家としての名声を得てからの1905年3月5日に、エルガー自身の指揮によりベヒシュタイン・ホールで行われました。
第1楽章はアレグロ・ピアチェヴォーレ、ホ短調、8分の6拍子の三部形式。冒頭で、この楽章を象徴するような軽やかなリズムがヴィオラで奏でられると、それに乗ってヴァイオリンが奏でる明快な旋律が現れます。
第2楽章はラルゲット、ハ長調、4分の2拍子。この楽章のモチーフとなる旋律が第1ヴァイオリンによって呈示されると、これが第2ヴァイオリン、ヴィオラへと受け継がれ、情緒漂う旋律がさらに旋律を生むような形で続いていきます。
第3楽章はアレグレット、ト長調 - ホ長調、8分の12拍子 - 8分の6拍子。3小節の短い序奏があり、生き生きとしたヴィオラの旋律が始まります。
これがカノン風に第1ヴァイオリン、チェロ、コントラバスに引き継がれ、次に第2ヴァイオリンとヴィオラで展開され、第1ヴァイオリンに戻りオクターヴでクライマックスを形成していきます。やがて第1楽章の冒頭のリズムが各パートに繰り返し移行して刻まれ、緩やかに上行する音型で主和音の頂点に到達すると、同じ和音の響きのまま遠ざかるようにピアニッシモで全曲を閉じていきます。
この曲はヴィオラにオイシいところが沢山出てくるので、個人的にも好きな作品のひとつです。エルガーというと、どうしても《威風堂々》や《愛の挨拶》が代表作としてとり上げられがちですが、この《弦楽セレナーデ》はもっと多くの人に聴いてもらいたい作品です。
そんなわけで、今日はエルガーの《弦楽セレナーデ ホ短調》をお聴きいただきたいと思います。アマチュア向け作品からスタートした、エルガーの愛すべき弦楽作品をお楽しみください。