今日は本当なら演奏会がある…はずでした。しかし、再三再四延長されまくっている新型コロナウィルス感染予防対策のための緊急事態宣言延長に伴って中止となり、日がな一日我が家に籠もっていました。
さて今日は、
19世紀末を代表する作曲家のひとりであるグスタフ・マーラーの《交響曲第8番》が初演された日です。1910年9月12日と翌13日に、マーラー自身の指揮によってミュンヘンでこの曲が初演されました。
この曲は、その壮大さと演奏人数の多さから俗に《千人の交響曲》とも呼ばれています。ただ、これはマーラー自身が名付けたものではなく当時の興行主が宣伝のために勝手につけてしまったもののようで、当のマーラーはこのサブタイトルをものすごく嫌がったのだとか。
《千人の交響曲》などというサブタイトルを付けられるだけあって、この曲の演奏には
◎オーケストラ
ピッコロ、フルート✕4、オーボエ✕4、イングリッシュホルン、クラリネット✕4、バスクラリネット、ファゴット✕4、コントラファゴット、ホルン✕8、トランペット✕4、トロンボーン✕4、テューバ、ティンパニ奏者✕2、バスドラム、銅鑼、鐘、鉄琴、シンバル✕3(!)、ハープ✕2、ピアノ、チェレスタ、ハルモニウム(リードオルガン)、パイプオルガン、マンドリン、弦楽器群、
◎声楽
ソリスト✕8、混声合唱団✕2団体(!)、児童合唱団
◎バンダ(舞台外金管合奏)
トランペット✕4、トロンボーン3
というとんでもない人数を必要としています。実際の初演の時には総出演者数1030人を数え、マーラー自身が嫌がっていたにも関わらずサブタイトルどおり《千人の交響曲》となりました。
交響曲とはいいながら、この曲は通常の4楽章ではなく2部構成になっていて、第1部ではグレゴリオ聖歌にもある「来たれ創造主なる聖霊よ」のラテン語のテキスト、第2部ではゲーテの『ファスウト』第2部終結部のテキストが歌われます。宮廷歌劇場の指揮者としても活躍していたマーラーは様々なオペラを演奏したものの自身はオペラを書きませんでしたが、この交響曲の第2部でマーラーはあたかもオペラの如き壮大な物語の世界を作り上げたのでした。
初演の会場にはバイエルン王国皇太子をはじめとした要人の他に、アルノルト・シェーンベルク、アントン・ヴェーベルン、リヒャルト・シュトラウス、マックス・レーガー、ジークフリート・ヴァーグナー、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ、セルゲイ・ラフマニノフといった著名な作曲家や、ウィレム・メンゲルベルク、ブルーノ・ワルター、レオポルド・ストコフスキー、オットー・クレンペラーといった名指揮者たちも臨席していました。特に各指揮者たちは後に自身でもこの曲のタクトをとっていますから、この初演の印象は相当深いものがあったでしょう。
この初演は大成功をおさめ、演奏終了時、会場内は聴衆も演奏者も熱狂の渦に包まれたと伝えられています。この大成功の初演から8か月後の1911年5月18日にマーラーはウィーンで没しましたが、その死後1911年の秋から翌春にかけて、この第8交響曲はウィーンだけで13回も上演されたといいます。
私が初めてこの曲を聴いたのは高校生の時でした。FMラジオから聞こえてきたこの壮大な音楽を聴いて、マーラーに興味を持ち始めていた私はぶっ飛んだものです。
そんなわけで、今日はその《千人の交響曲》の演奏動画を転載してみました。割りと古い画像が多い中、2016年にリッカルド・シャイー指揮、ルツェルン祝祭管弦楽団での演奏でお楽しみください。
ただし全曲で80分以上時間がかかりますので、御覧になる場合は時間的余裕をもつことを心していただきたいと思います(笑)。