共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

閏日生まれのロッシーニ〜《6つの弦楽のためのソナタ》より第1番ト長調

2024年02月29日 17時40分35秒 | 音楽
昨日の6年生を送る会準備の疲れがきて、今日は節々の痛みで目が覚めてしまいました。本来なら今日は勤務先とは別の小学校の放課後子ども教室のある日なのですが、有給休暇を取得しているので自宅でゆっくりと過ごすことにしました。

ところで、今日は4年に一度の閏日です。そして今日は、今まで紹介できずに待ちに待ったロッシーニの誕生日です。



ジョアキーノ・アントーニオ・ロッシーニ(1792〜1868)は、言わずと知れたイタリアの作曲家です。今や定番となっている《セビリアの理髪師》や《チェネレントラ(シンデレラ)》といったオペラ・ブッファをはじめとして《タンクレーディ》や《セミラーミデ》などのオペラ・セリアも作曲し、フランスに移ってからは序曲も有名なグランド・オペラ《ウィリアム・テル》を作曲しました。

1792年2月29日にイタリアのペーザロに生まれたロッシーニは、1800年(8歳)にボローニャに移り住み、ボローニャ音楽学校で学びました。1810年(18歳)にはフィレンツェで一幕のオペラ・ファルサ《結婚手形》を初演して、オペラ作曲家としてデビューを果たしました。

1812年(20歳)にミラノ・スカラ座で初演されたオペラ・ブッファ《試金石》が初のヒット作となり、この功績からロッシーニは兵役を免除されました。翌年の1813年(21歳)に発表した《タンクレーディ》や《アルジェのイタリア女》が初演後たちまち大ヒットし、ヨーロッパ中にロッシーニの名声が轟くこととなりました。

1815年(23歳) にナポリで《エリザベッタ》を初演し、以後この地のサン・カルロ劇場の音楽監督として精力的にオペラ・セリアの傑作を生み出すこととなりました。翌年の1816年に《セビリアの理髪師》、更に翌年の1817年に《チェネレントラ(シンデレラ)》を発表したロッシーニは1822年(30歳)に歌手のイザベラ・コルブランと結婚し、翌1823年にはイタリアでの最後のオペラとなる《セミラーミデ》を初演しました。

1824年(32歳)にフランスに移住してパリのイタリア座の音楽監督に就任したロッシーニでしたが、1829年(37歳)の時にグランド・オペラ《ウィリアム・テル》を発表したのを最後にオペラ作曲家としての筆を折って早々に引退してしまいました。その後は美食家として名を馳せたり、ヴェルディやリストといった後進の指導をしたりすることとなります。

そんなロッシーニの誕生日である今日は、《6つの弦楽のためのソナタ》をご紹介しようと思います。

《6つの弦楽のためのソナタ》は、ロッシーニが少年時代に作曲した弦楽合奏のための6曲のソナタ集です。前世代の古典的な型を意識しながらも後年の変化への予兆がみられ、後のロッシーニ・オペラの旋律の才を見せている作品です。

1804年の夏、当時12歳のロッシーニはラヴェンナのアマチュアのコントラバス愛好家のアゴスティーニ・トリオッシの家に滞在していて、そこでこの《6つのソナタ》を作曲しました。ソナタでコントラバスが目立っているのは、トリオッシの影響によるものと思われますが、後年にロッシーニは、

「第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、コントラバスのパート譜。この《6つのひどいソナタ》は、私がまだ通奏低音のレッスンすら受けていない少年時代に、パトロンでもあった友人アゴスティーノ・トリオッシの別荘で作曲したものである。」

「すべては3日間で作曲・写譜され、コントラバスのトリオッシ、(彼の従兄弟で)第1ヴァイオリンのモリーニ、彼の弟のチェロ、そして私自身の第2ヴァイオリンによって聴くに堪えない演奏が行われたが、実を言えばその中で私が一番まともであった。」

と回想しています。

因みに、




このソナタにはヴィオラパートがありません。理由としては高音と低音で全曲をまとめたいという音楽的なものではなく、単に当時周りにヴィオラを持っている人間がいなかっただけのようです(涙)。

この作品は後の1823年から1824年にかけて一般的な弦楽四重奏曲の編成に改められてパリで出版されましたが、一説には1825年ごろに第3番を除いた5つがリコルディ社から発表されたのが初出版とも言われています。後にロンドンでも出版されたほか、アマチュアによる演奏を見込んで、ピアノ独奏や、フルート・ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ、もしくはフルート・クラリネット・ファゴット・ホルンといった管楽四重奏編成への編曲も作られていました。

しかし、最終的にこのソナタの楽譜の所在は不明となって謎に包まれ、研究者たちはそれらが失われたものと推測していました。ところが、1942年にリコルディが出版した楽譜が再発見され、1954年にはロッシーニのオリジナルの譜面がワシントンのアメリカ議会図書館で発見されました。

さて、全6曲紹介すると1時間以上かかってしまうため、今回は冒頭をかざる第1番ト長調をご紹介しようと思います。

この曲は急緩急の3楽章構成で、後のロッシーニのオペラの序曲やアリアを思わせるような軽やかなヴァイオリンのメロディで始まります。続いて、セレナーデのようなしっとりとした第2楽章、スキップでもしなくなるような主題から各楽器にメロディが渡っていくロンドの第3楽章と、イタリアオペラ界を先導していくロッシーニの片鱗が窺える愛らしい作品です。

そんなわけで、今日はロッシーニの《6つの弦楽のためのソナタ》より第1番ト長調をお聴きいただきたいと思います。思わず口角が上がってしまうような、若きロッシーニの可愛らしいメロディをご堪能ください。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 突貫工事の送る会準備と『チ... | トップ | 春の香りにふと思う »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。