共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はレハールの誕生日〜ウィンナ・ワルツの代表的レパートリー《金と銀》

2022年04月30日 11時30分55秒 | 音楽
昨日の荒れ模様から一転して、今日は爽やかな晴天に恵まれました。なので、久しぶりにベランダにテーブルと椅子を出して、様々なレコードを聴きなながらお茶をしました。

ところで、今日4月30日はレハールの誕生日です。



フランツ・レハール(1870〜1948)はオーストリアやドイツを中心にウィンナ・オペレッタの分野で活躍したオーストリア=ハンガリー帝国生まれの作曲家で、特に1905年に代表作であるオペレッタ《メリー・ウイドゥ》を初演して大成功を収めたことで国内外で称賛され、その名声を一気に高めました。

1882~1888年、プラハ音楽院に入ったレハールはヴァイオリンや理論習得する傍ら、



チェコを代表する作曲家アントニン・ドヴォルジャーク(1841〜1904)に作曲の指導を受けました。卒業後はラインラントで劇場のヴァイオリン奏者を務めた後に軍楽に入り、各地の少年連隊や海軍の軍楽隊を移動することとなります。

多くのウィンナ・オペレッタを発表した華やかな活動の一方で、レハールは



ナチス党党首アドルフ・ヒトラー(1889〜1945)との関係が取り沙汰されることも多くあります。このヒトラーとの関係は、残念ながらレハールと彼の周囲の人々に大きな不幸をもたらす事になっていきました。

レハールの妻ゾフィーはユダヤ人だったにもかかわらず、彼女は強制収容所送りにはなりませんでした。その背景には、ヒトラーがレハールの代表作《メリー・ウィドゥ》を愛好していたため、その贔屓目で当時ドイツを率いていたナチス党政権の庇護を受けることができていたことが理由にあるとされています。

レハール自身もそれに応えるかのように《メリー・ウィドゥ》のスコアをヒトラーに贈っていて、こうしたことからも二人の緊密な関係がうかがえます。しかし、レハール自身は政治に関して殆ど無関心であったにも関わらず、こうしたヒトラーやナチスとの様々な繋がりがあったことによって「ナチスへの協力者」と呼ばれることとなり、戦後オーストリア及び旧西ドイツで非難される事となってしまいました。

はからずも現在、ウクライナを侵攻しているロシアのプーチン大統領と親交の深かった指揮者のワレリー・ゲルギエフやソプラノ歌手のアンナ・ネトレプコが、ロシアに対する世界的な制裁の延長線上で世界の音楽シーンから爪弾きにされています。『歴史は繰り返す』と言いますが、ヒトラーと作曲家レハールや指揮者フルトヴェングラーのようなかつての権力者と芸術家との関係性の事例が21世紀になってまで起きてしまっているということに、言い様の無い思いを抱いてしまうのは私だけでしょうか。

さて、今日演奏されるレハールのワルツの多くは《メリー・ウィドゥ・ワルツ》や《ルクセンブルク・ワルツ》など自作のオペレッタから編曲されたものが多いのですが、今日はそれらとは違うウィンナ・ワルツ《金と銀》をご紹介したいと思います。今日ウィンナ・ワルツといえば圧倒的にヨハン・シュトラウスを始めとしたシュトラウス一族の作品が有名ですが、レハールの《金と銀》も今日ではウィンナ・ワルツの代表的なレパートリーとして、シュトラウス一族の作品に引けを取らない人気を博してよく演奏されています。

このワルツ《金と銀》はオペレッタを編曲したものではなく独立した管弦楽用ワルツとして誕生した作品で、1902年の謝肉祭の間に催されたパウリーネ・メッテルニヒ侯爵夫人主催の舞踏会のために作曲されました。タイトルの《金と銀》というのは舞踏会の課題名で、会場は銀色に照らされ、天井には金色の星が煌き、壁一面に金銀の飾りが付けられ、参加者も金銀に彩られた思い思いの装飾を纏っていたと伝えられます。

この《金と銀》は、《メリー・ウィドゥ》をはじめとした数々の作品を手掛けたレハールらしい甘美なメロディに満ち溢れた華やかなワルツとなっています。ヨハン・シュトラウスとはまた違うどことなく素朴さを含んだレハールのワルツは、今日でも各地の演奏会や舞踏会で愛されています。

そんなわけで、今日はレハールのワルツ《金と銀》をお聴きいただきたいと思います。ヴラディーミル・フェドセーエフ指揮によるウィーン交響楽団の演奏でお楽しみください。



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