今日は今上陛下の63回目のお誕生日です。皇居では即位後初の一般参賀が挙行されましたが、私は見事に抽選に漏れました…。
ところで、今日は今上陛下の誕生日であるとともに、ヘンデルの誕生日でもあります。
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)はドイツ出身で、イタリアで成功した後にイギリスで長年活躍し、イギリスに帰化した作曲家、オルガニストです。『音楽の父』バッハとともに『音楽の母』とも呼ばれている後期バロック音楽の著名な作曲家の一人で、特にイタリア語のオペラ・セリアや英語のオラトリオの作曲で知られています。
ヘンデルの来歴についてはあまりにも有名なので、今更ここであれこれと書く必要もないかと思います。そこで今日は、ヘンデルが作曲した世界初のハープのための協奏曲をご紹介しようと思います。
《ハープ協奏曲 変ロ長調 HWV294a》は、1736年に初演された世界初の独奏ハープのための協奏曲です。ヘンデルお得意の緩-急-緩-急という4楽章構成の合奏協奏曲スタイルではなく急-緩-急からなる3楽章構成のソロ協奏曲で、1738年に出版された『オルガン協奏曲集作品4』(全6曲)には、ヘンデル本人がこの作品を編曲した別稿が《オルガン協奏曲 第6番 HWV294》として収録されています。
ヘンデルの協奏曲や合奏協奏曲の多くは舞台作品を上演する際に幕間の余興として演奏するために作曲されたものですが、この曲も頌歌《アレクサンダーの饗宴》がコヴェント・ガーデン劇場で1736年2月19日に初演される時に、《合奏協奏曲ハ長調『アレクサンダーの饗宴』HWV318》、《イタリア語カンタータ『チェチーリアよ、まなざしを向けたまえ』HWV89》、《オルガン協奏曲ト長調HWV289》とともに演奏するために作曲されました。ただし、その4曲の中でこのハープ協奏曲だけは幕間用ではなく、頌歌の本編に組みこまれて演奏されました。
当時のバロックハープでは半音階を切り替えることが難しいものでしたが、ヘンデルが使用したハープは
弦が3本交互に張られたトリプルハープでした。このトリプルハープはペダルを使わずにすべての半音が演奏できる画期的な楽器でしたが、その弦の多さから演奏は非常に困難でもありました。
現在ではペダル式のハープを使用するのとによって、より演奏しやすくなりました。今ではバロック期の貴重なハープ協奏曲として人気を博していて、コンサートで採り上げられたりCMをはじめとしたメディアで使われたりしているため、特に第1楽章の冒頭を聴けば
「あぁ!」
と思っていただけるのではないかと思います。
そんなわけで、ヘンデルの誕生日である今日は《ハープ協奏曲変ロ長調》をお聴きいただきたいと思います。ヘンデルが意図したトリプルハープでの演奏で、世界初のハープ協奏曲をお楽しみください。