共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

なんじゃそら!?な最高裁判決

2022年10月24日 19時25分35秒 | 音楽
今日は朝から曇りがちだったこともあってかあまり気温が上がらず、肌寒い一日となりました。こう寒いとジャンパーを出してもいいかと思いましたが、10月に引っ張り出すのもどうかと躊躇したりもしました。

さて、今日のニュースで音楽教室と日本音楽著作権協会(JASRAC)との間で争われていた著作権料について、以下のような報道がありました。


『音楽教室でのレッスン演奏に関し、日本音楽著作権協会(JASRAC)が著作権使用料を徴収できるかどうかを巡って争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は24日、生徒の演奏に対しては徴収できないとした二審の判断を支持し、JASRAC側の上告を棄却した。 レッスン中の生徒の演奏を音楽教室による楽曲利用とみなし、教室から使用料を徴収できるかどうかが争点だった。』

『一方で教師の演奏からは徴収可能との判断が確定。JASRAC側が従来想定していた使用料は教師と生徒双方を徴収対象とすることを前提としていたため、実際の金額は今後改めて協議される見通し。』


これはレッスンで使う楽曲について音楽教室が著作権使用料を支払う必要があるかどうかが争われた裁判で、最高裁判所は

「生徒の演奏は対象にならない」

とする判決を言い渡し、先生の演奏に限って教室側に使用料を徴収できるという判断が確定しました。音楽教室での著作権について司法判断が確定するのは初めてのことです。

ことの発端は2017年、楽曲の著作権を管理するJASRACが音楽教室に対して、レッスンでの楽曲の使用料を請求する方針を示したことでした。音楽教室関係者からしたら正に寝耳に水で、ヤマハ音楽振興会などおよそ250の音楽教室の運営会社などはJASRACに対して、

「支払う義務がない」

と主張して訴えを起こしました。

1審の東京地裁は

「先生・生徒双方から著作権料を徴収できる」

と判断しましたが、2審の知財高裁では先生と生徒の演奏を分けて考え、先生の演奏については使用料を徴収できるとした一方で生徒の演奏は対象にならないと判断されました。最高裁では、JASRACが主張するように

『生徒の演奏についても音楽教室から使用料を徴収できるか』

が争われていました。

今日の判決で、最高裁判所第1小法廷の深山卓也裁判長は

「音楽教室での生徒の演奏は技術を向上させることが目的で、課題曲の演奏はそのための手段にすぎず、教師の指示や指導も目的を達成できるよう助けているだけだ」

と指摘しました。その上で、

「生徒の演奏はあくまで自主的なもの」

として、

「音楽教室が演奏させているわけではない」

と判断し、生徒の演奏について音楽教室から使用料をとることはできないとする判決を言い渡しました。

私に言わせれば、何の不思議もない至極真っ当な判断だというだけです。最近CDの売り上げが落ち込んで著作権料のピンハネが思わしくなくなったJASRACが苦し紛れに捻り出した浅知恵なのでしょうが、音楽を志す子どもたちから著作権料の大義名分で金を掠め盗ろうなどとした目論見は見事に潰されたことになります。

ただ、この判決によって

「先生の演奏に限って使用料を徴収できる」

という判断も確定しました。つまり、

「アンタらプロの演奏者でっしゃろ?なら、たとえ子どもに対しての模範演奏でも一人のオーディエンスに向けて『演奏行為』をしたんやから、払うもん払うてもらいまっせ。」

ということです。

となると、先生が演奏する場合にはすべからく著作権料の納付が義務付けられるわけですが、楽譜を購入した際に既に著作権料が取られた上に更に演奏の著作権料も徴収されるとなると著作権料の二重取りになるのではないかと…いったモヤモヤポイントは今後の協議次第ということになりました。とにかく、音楽教室講師の立場としては釈然としないのが本音です。

確かに、著作権は音楽を生み出した芸術家に対する大切な権利です。かつてそうした権利が蔑ろにされていたことを憂いて古賀政男をはじめとした面々が設立したのが日本音楽著作権協会のはずなのですが、今やこんなゴタゴタを引き起こす厄介な鼻っつまみ団体になってしまっているのが現実です。

これを期に、そもそも『著作権』とは何かについて改めて議論すべきなのではないかと思えてなりません。少なくともそれが音楽を学びたいと欲する子どもたちの足を引っ張るようなものであるなら、本末転倒です。


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