共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

アルトゥール・シュナーベルのベートーヴェンピアノソナタ全集

2020年08月21日 20時55分27秒 | 音楽
今日も尋常ではない暑さに見舞われました。皆様、熱中症対策は万全でしょうか。

こう暑いと何にもする氣が起きません。だからといって、ひねもすダラダラしているのも人として氣が引けます。なので、せめて音楽鑑賞くらいはしようと思い立って押入れの中をガサガサしてみました。すると、すっかり存在を忘れていたCDが出てきたのです。

それが



アルトゥール・シュナーベルのピアノによるベートーヴェンのピアノソナタ全集です。何かの折に廉価版で出ていたものを入手していたのを思い出しました。

アルトゥール・シュナーベル(1882〜1951)はオーストリア生まれのピアニストです。幼い頃から才能を開花させ、ウィーン音楽院で学びました。その頃にあの作曲家ブラームスと会っていて、ブラームスに「将来最も恐るべき天才」と言わしめた程でした。

その後はヴァイオリニストで教則本製作者としてもお馴染みのカール・フレッシュや指揮者のヴィルヘルム・フルトヴェングラー等と共演を重ねて、着実にキャリアを積んでいきました。そして1927年にはベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会を7夜に渡って成功させ、1932年から1937年にかけて、世界初のベートーヴェンのピアノソナタとピアノ協奏曲の全曲をレコード化して世に送り出しました。上のCDは、そのレコードをデジタルリマスタリングしてCD化したものです。

このベートーヴェン全集は、レコード化企画実現のために必要な費用を購入希望者から集めた予約金で賄って制作されたものです。現代でいうところのクラウドファンディングのようなことを、80年以上昔にやっていたわけですね(因みに、このレコード制作に必要だった200件分の予約のうち、実に111件が日本からの予約だったのだとか!)。

シュナーベルのピアノ演奏は、技巧よりも表現を重視したものと言われています。確かに、後の世代のベートーヴェン弾きであるヴィルヘルム・バックハウス(1884〜1969)やヴィルヘルム・ケンプ(1895〜1991)等とは一線を画しているように聞こえますが、とかくブッ叩き系のピアニストが多くなっている昨今、アナログ盤が元になっていることもあってか、シュナーベルのベートーヴェンは安心して聴いていられる心地良さと優しさがあります。

このベートーヴェン全集にはピアノソナタ全32曲と、最後の一枚の後半にト長調の幻想曲とバガテル《エリーゼのために》が収められています。ただ、さすがに今日一日で全曲聴くのは大変なので、とりあえず今日は第1番から第16番までが収録されている前半5枚だけを聴きました(聴いたんかい…)。

その中から、今日はシュナーベル演奏の第14番嬰ハ短調の動画を転載してみました。第14番?と仰る方もおいでかと思いますが、《月光》と言ったらお分かり頂けるでしょうか。

アルトゥール・シュナーベルならではの決して華美ではない、実直で優しいベートーヴェンをお楽しみください。



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