共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はアルビノーニの誕生日〜ハインツ・ホリガーによる《オーボエ協奏曲 ニ短調 作品9-2》

2023年06月08日 17時15分17秒 | 音楽
今日、関東地方で梅雨入りが発表され、いよいよ本格的な雨のシーズンに突入しました。そんな中、今日は小田原の小学校の放課後子ども教室がスタートする日…のはずでしたが、学校側のスケジュールの都合で中止となってしまったのです。

急に暇になってしまったので、今日はとりあえず晴れている隙に洗濯物を済ませてしまうことにしました。これから雨が続くようですから、思わぬ洗濯物チャンスとなりました。

ところで、今日6月8日はアルビノーニの誕生日です。



トマゾ・ジョヴァンニ・アルビノーニ(1671〜1751)は、イタリア・ヴェネツィア共和国で活躍したバロック音楽の作曲家、ヴァイオリニストです。

かつてバッハは、ヴィヴァルディやマルチェッロといったイタリアの作曲家と同様に、アルビノーニの器楽曲にも非常に高い関心を持っていました。バッハはアルビノーニの主題によるフーガを少なくとも2曲遺していて、息子たちの和声法の実習においてもアルビノーニのバス課題をよく利用していたといいます。

アルビノーニの有名な作品といえば、一般的には何をおいても《アルビノーニのアダージョ ト短調》を思い起こされる方も多いかと思います。しかし、ご存知の方も多いかと思いますがこの曲はアルビノーニが作ったものではなく、実際にはイタリアの音楽学者でアルビノーニやヴィヴァルディなどの評伝を執筆したレーモ・ジャゾット(1910〜1998)という人物が作曲して、1958年に初めて出版した独奏ヴァイオリンと弦楽合奏とオルガンのための楽曲です。

この作品はアルビノーニの《ソナタ ト短調》の断片に基づく編曲と推測され、その断片は第二次世界大戦中の連合軍によるドレスデン空襲の後で、旧ザクセン国立図書館の廃墟から発見されたと伝えられてきました。しかし、あくまでもこの作品はジャゾット独自の作品で、原作となるアルビノーニの素材は全く含まれていません。

さて、高名な作曲家としての生前の地位のわりには、実際のアルビノーニの、特に後半生の生涯については殆ど分かっていません。

トマゾ・アルビノーニは、裕福なヴェネツィア貴族の家系に生まれました。少年期から本格的な音楽教育を受けたアルビノーニは1694年に《トリオ・ソナタ作品1》を作曲して、アルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713)のパトロンとして有名なピエトロ・オットボーニ枢機卿に献呈しています。

アルビノーニは多くのイタリア都市においてオペラ作曲家として名を上げ、たとえばヴェネツィア、ジェノヴァ、ボローニャ、マントヴァ、ウーディネ、ピアチェンツァ、ナポリなどではかなり有名だったといいます。この頃には器楽曲も勢力的に作曲していて、1705年以前には多くのトリオ・ソナタやヴァイオリン協奏曲などを遺しています。

その後は1715年にアムステルダムのエティエンヌ・ロジェ社から初のオーボエ協奏曲を含む《5声の協奏曲 作品7》を出版し、1721年に《6つのソナタと6つの三声の舞曲 作品8》を出版しました。1721年には声楽の学校を開設して多くの生徒を指導したと19世紀の歴史家の記録にある…のですが、学校の開設時期や具体的な活動内容については不明です。

多くの同時代の作曲家とは違ってアルビノーニには教会や貴族の宮廷の楽団に地位を得ようとした形跡が見当たらず、独自の財源によって独力で作曲する自由を得ていたようです。そのため先にも書いたように後半生については不明な点が多く、1740年にヴェネツィアでアルビノーニの最後のオペラ《アルタメーネ》が公演された以後のアルビノーニの足取りは詳しく分かっていません。

さて、アルビノーニの誕生日にご紹介するのは、名作の誉れ高い《オーボエ協奏曲 ニ短調 作品9-2》です。

アルビノーニは1722年にバイエルン選帝侯マクシミリアン2世エマヌエルに招かれ、自作のオペラを指揮しました。同じ年には


(写真は初版の表紙)

アルビノーニのもっとも有名な曲集《5声の協奏曲集 作品9》がアムステルダムのミシェル=シャルル・ル・セーヌ社から出版され、当主であるバイエルン選帝侯に献呈されました。

《オーボエ協奏曲 ニ短調 作品9-2》は、この曲集の2曲目に収録されている作品で、アルビノーニの真作としては最も有名なものです。付点音符のリズムが心地よい第1楽章、ヴェネツィアの大運河カナル・グランデのさざ波のような弦楽合奏とその上を吹き渡る薫風のようなオーボエのロングトーンが美しい第2楽章、オーボエソロと弦楽合奏の疾走感あるやり取りが魅力的な第3楽章と、どこをとっても魅力的な作品です。

そんなわけで、アルビノーニの誕生日である今日は《オーボエ協奏曲 ニ短調 作品9-2》をお聴きいただきたいと思います。ハインツ・ホリガーのオーボエとイ・ムジチ合奏団とによる1967年の録音で、バロック時代のオーボエ協奏曲の名品をお楽しみください。


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