共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

雨が似合うエリック・サティ《グノシェンヌ第2番》

2023年06月11日 17時18分19秒 | 音楽
今日は朝から雨が降り続き、ジメジメとした中でもそこそこ気温の上がった不快な一日となりました。気圧の降下による天気痛と数日前からの風邪のような症状とが相まって、今日も午前中は寝て過ごしていました。

お昼を過ぎた頃から少しばかり症状が落ち着いてきたので、遅い朝食を兼ねたブランチをとることにしました。その後で雨の降る外を眺めていたら、何だか無性にエリック・サティが聴きたくなってきたのです。



エリック・サティ(1866〜1925)は「音楽界の異端児」「音楽界の変わり者」の異名で知られる作曲家で、ドビュッシーやラヴェルといったどのフランスの作曲家たちにも影響を与えました。《梨のかたちをした3つの小品》や《犬のためのぶよぶよした前奏曲》といった、タイトルを読んだだけでは何だかよく分からない風変わりな作品を多く遺しています。

そんなサティの作品の中でも、とりわけ有名なものといえば《3つのジムノペディ》と《6つのグノシエンヌ》でしょう。タイトルを知らなくても、一度聴いてしまえば

「あぁ!」

と思いつくくらい有名なピアノ作品です。

《3つのジムノペディ (Gymnopédies)》 は、エリック・サティが1888年に作曲したピアノ独奏曲で、特に第1番がサティの代表的な作品としてタイトルとともに知られるようになっています。『ジムノペディ』という名称は大勢の青少年が古代ギリシアのアポロンやバッカスなどの神々をたたえる祭典『ギュムノパイディア』に由来していて、サティはこの祭りの様子を描いた古代の壺を見て曲想を得たといわれています。

《6つのグノシエンヌ(Gnossiennes)》は、サティが1889年から1891年と1897年に作曲したピアノ曲で、特にサティが24歳の時に作曲した第1番から第3番の3曲は《3つのグノシエンヌ》として有名です。こちらの題名は、従来は古代ギリシアのクレタ島にあった古都クノーシスに由来するというのが定説でしたが、1世紀に生まれ、3世紀から4世紀にかけて地中海世界で勢力を持った宗教・思想であるグノーシス(古代ギリシア語で「認識・知識」を意味する)に由来したサティによる造語であると説明する人もいます。

《3つのジムノペディ》も《6つのグノシエンヌ》も、ともに何とも気怠い雰囲気に満ちていて、個人的な意見ではありますが《6つのグノシエンヌ》は雨がよく似合う音楽です。その中でも特に第2番は、しとしとと降る今日のような雨の日にぴったりです。

《グノシエンヌ第2番》は



小節線の無い楽譜に書かれていて、ト短調ともホ短調ともとれるような不思議な調性で展開される音楽です。中間部では長調のような優しげな響きも現れますが、いつの間にか冒頭部のアンニュイなメロディが登場して、最後にはピアノの音が減衰しきって消えていくくらいに音が長く引っぱられて終わります。

ゆったりしたテンポ、長調とも短調ともつかない和声展開、その上をわたっていくアンニュイなメロディ…正にエリック・サティの音楽の真骨頂ともいうべき要素が、この短い音楽に凝縮されています。演奏するだけならそんなに難しくはありませんが、抑制されたシンプルな作品ゆえにセンスが問われる作品でもあります。

そんなわけで、今日はサティの《グノシエンヌ第2番》をお聴きいただきたいと思います。そぼ降る雨の日にぴったりな、サティならではのアンニュイな世界観をお楽しみください。


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