付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「マジカルパンプキン44キロ」 木村航

2009-10-02 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「行こーぜ。今しか見られねーもんを見よう。いつか出会う未来は、取っといてやるんだ。今と違うオレたちのために」
 自分たちはこれからだ、確定した未来なんか見たくないという小太郎。

 13時13分に大通りのスクランブル交差点でおまじないを唱えると悪魔に出会えるという。そんな噂にすがりつかないといけないほど、芽々吹千草は追いつめられていた。
 身長155センチ、体重50キロ。ミノウエさんが小柄な大学生と見誤るくらいだが、千種はまだ小学4年生。あと2週間で転校しなくちゃいけないけれど、それまでに学校で栽培しているオバケかぼちゃよりも軽くなって賭に勝ち、大好きな男の子に告白したいというのだ。呆れるミノウエさんだが、千草の相手がゲゲゲのコタローこと遠野小太郎と聞き、願いを叶えてくれそうな悪魔を紹介してくれる。ところが現れたメフィスとフェレスは、魂を代償にした悪魔の魔法くらいじゃ痩せられない、「ダイエット指導は徹底的な健康管理が肝心です」と告げるのだった……。

 寝る前に少し読んでおこうかと思って開いたら予想以上に面白く、つい深夜2時まで読みふけってしまって翌日が辛かった……。
 『ミラクルチロル44キロ』の後日譚というかスピンオフ小説だけれど、別の話なのでチロルチョコは読んでなくても問題ありません。木村航作品としては初心者向き。少女の恋……未満の想い、ヘンな悪魔、深夜の学校でおばけ退治、元気の良いクラスメートたち。どちらかというと「青い鳥文庫」とか「角川つばさ文庫」で出した方が良かったかも知れません。すごくそっちの方が向いていると思います。今までの作品にあった「リアルの痛さ」が見えなくなっているのでとっつきやすいのです。無条件にお話の世界を愉しめるのです。
 そう言う意味で、今までの木村作品の粉砂糖をふりかけたブラックさが見えにくくなっているのが物足りないという人はいるかも知れません。いくら周囲が善意の人ばかりでファンタジーな世界でも借金は返さないといけないし、怪我すれば痛いし生きている者はいつかは死ぬし、治らない病気は受け入れて生きるしかない。そんな現実をふいに突きつけてくるところが常でしたから。

 さて、気になるキャラクターは『絶対可憐チルドレン』の明石薫にも似ているセクハラ少女トーコ。「何かあったら必ず教えて。この佐々木童子が見届けてあげる。すべての謎と、すべての不思議を」などとカッコイイことを言いつつ、基本的に見届けるだけで解決しようという気はないですよね? 私は行きたいところに行くのよ!とばかり、悪魔の張った結界さえ無視するトーコのゴーイング・マイウェイっぷりに、こいつ人間じゃないんでない?と疑ってます。『ぺとぺとさん』の世界ではないですが、悪魔がいるなら鬼や天狗だって居てもいい気がしますから。 

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「ぬすまれたタイムマシン」 レイ・カミングス

2009-10-02 | 時間SF・次元・平行宇宙
 SFパルプ小説の父(の1人)レイ・カミングスによるタイムトラベル小説で、岩崎書店が復刻した冒険ファンタジー名作選シリーズの第5巻。

 ある夜、テレビに映った不思議な光景は、セントラルパークに不思議な塔が出現するというものだった。さっそく、セントラルパークに出かけたアランたちはまさしく、巨大な塔とそこから出てくる美少女リアを目撃する。
 それが盗んだタイムマシンを使って世界を支配しようとするターバー一味とアランの仲間たちの戦いの始まりだった……。

 神出鬼没の巨大な塔というあたりで、ナゾータワーを連想してしまいましたが、時間移動ができるだけ、こちらの方が上ですね。ろーんぶろぞー。
 同じ作者の『時間を征服した男』がタイムトラベル戦争巨編なら、こちらはタイムトラベル・スパイアクション。盗まれたタイムマシンをめぐって、過去へ未来への追跡劇。密林での捜索、病院への潜入、未来都市を圧巻する巨大機械!
 でも、小学生向けに翻訳された古い話なので、今の時代に良い大人が読んでもたいして面白くないです(←あたりまえ)。小学校の図書館にぜひ寄贈したいもんです。

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