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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「ライトノベルス完全読本」 

2004-11-29 | エッセー・人文・科学
 ライトノベルとジュヴナイルとヤングアダルトの区分は難しいです。というより、これらについて語ろうとするなら、まず自分で定義するところから始めないといけないのですね。
 ジュブナイル(Juvenile)というと児童文学全般。ジュブナイルSFというと福島正実らによって1970年代から展開された小中学生向けのSF全集に代表されるもので、昔はどこの学校の図書館にも世界の偉人伝とセットで置いてあった気がします(逆に今は地元の学校や図書館や書店では見ません)。ヤングアダルトやライトノベルというとグッと門戸が狭まって、中高生向けの文庫小説でかつ表紙等にマンガ家やアニメーターまたはその系統のイラストレイターを使用したものといった感じ。どちらかというと、ライトノベルは文庫限定のような気もします。
 今は『ライトノベルス完全読本』とか出ているので、「ライトノベル」が市民権を得たのかなとも思う一方、書き手の側に「ライト」という言葉に書き飛ばすというニュアンスを感じて嫌悪する人もいて……。
 昔の博物学と同じですねえ。まず系統立てた分類が大仕事。

 でも『このライトノベルがすごい!』はちょっと期待はずれ。製作期間相応、値段相応の冊子でした。とりあえずアンケートとってランク付けして、人気キャラや作品を紹介して、ファンの対談を載せて……といったところ。これが唯一無二ならともかく、(歴史的考察も含めて多方面からのアプローチをしている『完全読本』や創生期の一線作家の証言である『コバルト風雲録』など)他にもいろいろ出てきているご時世なので、通り一遍抑えているだけでは物足りず。
 とりあえず今の期待は『文学賞メッタ斬り!』と同じ大森望・三村美衣の共著による『ライトノベル☆めった斬り!』かな。文学賞と並列扱いだよ☆

「ライトノベルス完全読本」★★★★
「このライトノベルがすごい!」★★
「コバルト風雲録」★★★★★
「ライトノベル☆めった斬り!」★★★★

【ライトノベル】
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裏通りの宝石店店主の話

2004-11-11 | 雑談・覚え書き
 11月11日は宝石の日だそうな(農商務省が宝石の単位をカラットと定めた日)。

 昔、住んでいた長屋の近くに小さな宝石店があって、そこで1人の爺さんが店の奥の畳に座って黙々と細工をしていました。今でも元気かしら。
 その爺さんには婚約指輪の注文とかで何かとお世話になったのだけれど、いろいろと宝石の話も実演付きで聞かされました。宝石の相場の話とか、購入価格は資産価値に成り得ないこととか、珍しい宝石の話、そういう珍しい宝石の価格設定の話、そしてクズ石を珍しいものに見せかけるインチキトリックの数々。4畳半も無さそうな店先で、使い込まれた道具箱からさまざまな道具や石が出てきます。そして、おもむろに印鑑用の朱肉が取り出されました。
「台座にはめる前にな、石の裏側に印肉をポンっとつける。そうすると……ほら、このせいぜい1万円の石がこっちの50万円の石と素人目には見分けがつかなくなる」
 うわ、怖い!
 もう宝石を買わないぞと心に誓った瞬間でした。
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「復活の地」 小川一水

2004-11-09 | 破滅SF・侵略・新世界
 10月は大型台風の連続上陸、中越地震と相次ぎ、大きな被害が日本各地で出ていました。そんな中で、小川一水の『復活の地』が完結。謎の大地震により首都は崩壊、高皇を筆頭として閣僚や軍幹部も死亡して国家機能が喪失した、惑星国家レンカの物語。タイムリーといえば、これほどタイムリーな刊行タイミングはありません。
 1巻は突然の震災の発生と対応が描かれ、2巻では震災の収束に伴う権力争いの表面化と新たな震災の発生が予知されます。そして3巻では第2次震災の予知を無視する政府と草の根レベルで対応しようとする現場の人々の姿が、星間外交などを絡めながら語られていきます。
 巻末の参考文献によれば、元ネタは関東大震災と阪神淡路大震災。それをベースに架空世界の震災を構築し、その復興、そして次の震災への備えをどうしたらいいのかというポイントを押さえていくわけですが……本当なら、こんなネタ、SF小説として通用するはずがないのです。現実が、作者と同じように過去の災害から学び、対策を立てていて、それを読者が認識していれば、話の90%はそんなにスゴイ話ではありません。
 まあ、日本人が過去の経験からまったく学んでいないわけではないことも明らかですけれど、あまり成績は良くないんじゃないでしょうか。特に如実なのがマスコミ。いろいろ聞かれる悪い噂がすべてデマとしても、それでも報道の内容がショボすぎ。小説の中にはこんなセリフがあります。

「視聴者なんてどうでもよろしい。いま情報を欲しがっているのは被災者です」

 でも現実では、どうやら、今回いちばん機能していた(避難所や使用できる道路の情報などを流していた)のはローカルFM局、そしてインターネットのようです。他は結局、野次馬に毛が生えただけのものが多かったみたい。

『静粛時間はきっかり五分間で、その間すべての交通機関と動力が停止させられた。人々は足を止め、息を殺して地面に耳を押しつけた』

 そこでは、少なくとも頭上をヘリコプターは飛び回っていません。
 低空から被災地を撮すヘリのカメラ、夜間の救出現場で投光器が据えられるべき位置から回るカメラ、怯える子供に突きつけられるマイク、病院に運び込まれるタンカの前に立ちふさがるカメラマン。各TV局が放映する被災地の様子は、そのまま自らの行為の裏返しなんですけど、平気なんですね。愚かなのか厚顔なのか。

「他人より損な役回りをするから責任者と言えるんだ。そうでない責任者が存在するほうが間違っている」
 小川一水の『復活の地』よりセイオ・ランカベリーの言葉。

 これを読んで『首都消失』を思い出してしまった。どちらも首都を突然失い、それを再建しようという話。幕末物とも近いよね。そして国家存亡の危機にあって、最大の障害はなによりこの期に及んでも私利私欲で動こうとする権力者であり、前例踏襲でしか動けない役人なのでした。
 そして東日本大震災においても、その点については大同小異。かなり正確な未来予測でした。残念ながら。(2013/04/10改稿)

【復活の地】【小川一水】【ハヤカワ文庫SF】【災厄】【マスコミ】【危機管理】
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「神秘家列伝(2)」 水木しげる

2004-11-07 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 水木しげるの新刊『神秘家列伝(2)』が出ていました。

 水木しげると聞くと反射的に第34回日本SF大会はまなこんを思いだし、不機嫌になります。
 そのときオークションがあり、そこに水木しげるのサイン色紙が出品されたのです。そのとき、オークショナー(競売人)は何を言ったか?
「もうすぐ死んじゃいそうだから価値が出るかも」
 言うに事欠いてそれかい!?
 ゲスト参加していた中山星香のサイン色紙(確か『花冠』のカラーイラストだった)も出品されました。
「誰か知らないけど、こんなの欲しがる人、いますか?」
 好き嫌いはあるだろうけれど、日本にファンタジー・コミックを根付かせた功労者の1人だぞ。そしてちょうどその時間に本人自らファンタジーをテーマにした座談会企画をやっていたはず。知らなくても仕方がないとは言わせません。
 それから、やはりゲストに来ていたソ連のSF作家の単行本も出品されていました。
「いまどき、ソ連SFの原書なんてねー」
 仲間内でのことなら、どんな野卑な発言をしたって自由です。
 でもオークショナーってのは、イベントを盛り上げるためにもオークションにかかるアイテムの口上で会場を沸かせるのも仕事。それはアイテムの価値を貶めて下卑な笑いを取れということでもないし、純粋に好意からアイテムを出品してくれたゲストや協力者のプロ作家(たかがシロウトの1ファンが束になってもかなわないキャリア)の人たちを笑い物にするというのは、大会の看板企画の進行係としてどーよ? アイテムの価値も知らなければ、売り込み方も知らない、礼儀も知らない。何も知らないオークショナー……。
 このオークション企画1つで、僕にとっての「はまなこん」の評価は最低になりました。企画不十分といわれた大会は他にもあったけれど、不快になったのはこの大会だけ。

 結局サイン色紙はそれなりの価格で落札され、ロシアSFは(売れ残ってオークショナーに揶揄されるのも面白くなかったので)僕が勢いで落札した。当然、ロシア語なのでいまだ1行とて読んでない。読めない。本棚に並んでいながらタイトルさえ不明なのであった。

【神秘家列伝 其ノ弐】【水木しげる】【角川ソフィア文庫】
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