付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「その者。のちに…」 ナハァト

2024-07-27 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 結婚の約束までしていた幼馴染みを勇者に取られた青年ワズは、自分の弱さに絶望して「山」に引き篭もっていたのだが、実はそこは人跡未踏でS級魔獣が跋扈する秘境。そこで獣の肉を食いあさって生き抜いたワズは、いつの間にか女神の加護まで手に入れて人外の力が身についていた。
 しかし、本人にはあまり自覚がない。殴り合ってマブダチとなった竜と別れ、2年ぶりに人里に降りてきたのだが……。

 いつかハーレムをつくれるようになるといいねとハイエロフに感化された青年の無双譚。直球勝負の成り上がり冒険談としては先駆けの作品です。

【その者。のちに…】【ナハァト】【三弥カズトモ】【アーススターノベル】【小説家になろう】【エルフ】【ドラゴン】
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「スープ屋かまくら来客簿」 和泉桂

2024-07-26 | 食・料理
『てめえに何が出来るかなんて考えるうちは、まだまだひよっこなんだよ。てめえの居場所あるんなら、そこで何かができてるってことなんだからな』
 カーブミラーは、乾に説教する。

 北鎌倉にイケメン兄弟の経営する「スープ屋かまくら」がある。メニューは週替わりのスープのみという小さな店だ。だが、料理は美味いが人づきあいが苦手な緒方琳とフロアを切り盛りする乾には「見鬼」の力があった。
 兄弟は付喪神の存在を感じられるし、見て話をすることもできるのだ。そして、付喪神は人間に愛着を持って使われる事で生まれるものなので、モノによっては数年で付喪神化する。なので鎌倉には付喪神がけっこう多い。そんな付喪神が人に害を与えるようになった時になんとかするのが彼らの一族の使命みたいになっているのだが、三兄弟の長男はそれを嫌って出奔中だ……。

 北鎌倉の小さなスープ専門店を舞台にした、人とあやかしの物語。

【スープ屋かまくら来客簿~あやかしに効く春野菜の夕焼け色スープ】【和泉桂】【細居美恵子】【富士見L文庫】【】【ぬいぐるみの病院】【狛犬】【カーブミラー】【しらす】【灯籠】【春野菜たっぷりトマトスープ】【牛乳と味噌の春キャベツスープ】【スパイシーなカレースープ】【アスパラガスとあさりのスープ】
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★小規模事業ミステリ

2024-07-25 | ランキング・カテゴリー
 近所のそこそこ大きい本屋の店頭で定点観測していた経験からすると、2011年刊行の『ビブリア古書堂の事件手帖』がヒットして以来、なんとなくお店屋さんモノが増えました。都会の裏通りとか下町とかに喫茶店とか古道具屋とかのお店を舞台にした、都会の日常系ミステリ奇譚とか人情伽の連作短編シリーズのことです。
 でも、これって栞子さん発かと思っていたけど、オカルト方面に走りがちでなんか違うのが混ざり始め、妻と話していて「ああ、これ波津彬子の系譜だね」と合意ができたわけですが、よくよく見ると混ざってます。目立たないところにお店があって、ひっそり美人のお姉さんやカッコいいおにいさんのいて、そこにそこに持ち込まれる品や訪れる人がもたらす謎や怪異や人間模様を解決したりしなかったりするというフォーマットは踏襲しつつも、さっくり3系統くらいありそうです。

■不思議なお店・商人の幻想怪異譚
『雨柳堂夢咄』 波津彬子(1991)
 店の入り口に大きな柳の木がある骨董屋・雨柳堂には何やらいわくつきの品物が集まってくるのだが、それらに宿る想いを読み取り、秘められたさまざまな物語を解き明かすのは、店主の孫で年齢不詳の美青年・蓮だった……。
 「眠れぬ夜の奇妙な話」掲載のアンティーク・ロマンシリーズ。

『唐人屋敷』 波津彬子(2000)
 アメリカ東部でお祓いを生業にしている全身黒ずくめの東洋系青年が、エクソシストでは対応できない古い屋敷の怪異や東洋由来の骨董品を調査し、それらに憑いている異形たちと語り、事件を解決していく。
 「眠れぬ夜の奇妙な話」掲載のオリエンタル・オカルト・コミック。

よろず占い処 陰陽屋へようこそ』 天野頌子(2011)
 母親の気まぐれから陰陽師の店でバイトすることになった中学生の瞬太。イケメンだけれど口先ばかりのいい加減な陰陽師・祥明の占いにイライラかりかり。しかし、瞬太にも秘密があった。彼は赤ん坊の頃、稲荷神社に捨てられていたのを今の両親に拾われたのだが、彼は妖狐だったのだ……。
 ホストあがりのいんちき陰陽師とキツネ耳中学生のコンビが、遺言書の隠し場所を探したり行方不明の娘捜しに奔走する話なのだけれど、基本的にはへっぽこコンビのほのぼのミステリ……というか探偵物語。2007年に単行本、2011年に文庫版。

沢木道楽堂怪奇録』 寺本耕也(2011)
 沢木はなんでも屋だ。便利屋ではないから便利じゃないが、霊を見ることができるので、その手の仕事が舞い込んでくることもある。そんな沢木のもとに、幽霊に取り憑かれたんじゃないかと女子高生が連れてこられたのだが……。
 なんでも屋のしょぼくれた男と元気な女子高生を中心に繰り広げられる怪奇譚。軽く読めるけど、しっかりホラー。

鴨川貴族邸宅の茶飯事』 範乃秋晴(2012)
 鴨川沿いの貴族邸宅には“バトラー・オブ・ザ・フォー”だと囁かれる優雅な4人の執事に傅かれる貴族邸宅サロン、アイディールプリンスがある。だが、この執事喫茶には隠された目的があった……。
 古武術を身につけた……しかし、それ以外は何も知らない無骨な男が、執事をめざして獅子奮迅の研修を繰り広げる執事小説。もちろん、この場合の「執事」とは伝統的な意味での職業ではなく、乙女ロード的な意味合いで。

紳堂助教授の帝都怪異考』 エドワード・スミス(2013) 若くして帝国大の助教授の肩書を持つ紳堂が、博学多才にして超自然的なことにも通じているのは周知のこと。なので警察の手に余る怪事件が起これば、彼のもとに持ち込まれることになるのだ……。
 大正時代の帝都東京を舞台に、帝国大の助教授を務める美青年が、美少年を助手としてさまざまな怪事件を解決していくミステリー短編集。美青年が表紙の軽いミステリが流行り始めた時期の作品。

『ふるぎぬや紋様帳』 波津彬子(2014)
 インテリアコーディネーターの伊都子が偶然に足を踏み入れたのは、古い着物を扱う「ふるぎぬや」。そこは特別な想いの宿った着物だけを扱う、必要としている者にしかたどりつけない不思議なお店だった……。
 「月刊フラワーズ」掲載の和の世界観満載な幻想奇譚。


■飲食店を舞台にした人間模様
『味いちもんめ』 あべ善太&倉田よしみ(1984)
 東京新宿にある「藤村」は名の通った一流料亭。そこに務めることになった伊橋悟は、料理学校首席卒業だがお調子者。先輩に怒られ殴られたり、誉められたりしながら、下っ端の追い回しから少しずつ成長していく。
 料亭を舞台にそこで働く板前たちの葛藤や訪れるお客たちが本当に求める味などを描いた料理マンガ。病院の待合に並んでいて、そこでよく読みました。雑誌でもちょくちょく。

『西洋骨董洋菓子店』 よしながふみ(2000)
 甘いものが苦手なのにケーキ屋を始めようとした男のもとに集まってくるのは、同性愛者で彼を巡るトラブルが絶えない天才的パティシェ、甘いものは好きだが作ったことはないという挫折したボクサー少年。深夜営業の奇妙な喫茶店はこうして始まった……。
 若い男性ばかりで内装や食器がアンティークショップ張りというケーキ専門店「アンティーク」を舞台にした人間ドラマを描いたコミック。作者による同人版はBL耐性が無いと読めません。

『深夜食堂』 安倍夜郎(2006)
 ゴールデン街にある「めしや」の営業時間は深夜0時から朝7時ごろまでで、メニューは豚汁定食とアルコール類しかない。あとは注文があれば、できるものなら作るよというスタイルの店。そこに訪れる客は学生からヤクザ、ストリッパー……。読むとタコさんウインナーとか豚汁が食べたくなります。実写ドラマ版も良かったです。
 「ビッグコミックオリジナル」で連載されている、深夜食堂を舞台にした人間模様。

路地裏ビルヂング』 三羽省吾(2010)
 辻堂ビルヂングは路地裏に建っている、築49年の雑居ビル。エレベーターは狭くてすぐ壊れるし、区画整理の波も少しずつ押し寄せてきている。そんなオンポロビルには、うさんくさい健康食品を訪問販売する会社やら学習塾やらがテナントに入っていて……。
 雑居ビルの各階に入っているテナントそれぞれを舞台にした連作短編集。それぞれの話に登場する1階の飲食店が、登場するたびに業種が違っていて、しかも不味い店というのがポイント。

真夜中のパン屋さん』 大沼紀子(2011)
 三軒茶屋の深夜営業のパン屋さんを舞台に、パン作りがへたくそなオーナーに、口の悪いイケメンなパン職人、転がり込んだ女子高生の3人を中心に繰り広げられる人間模様。
 ホームレスになったオカマさんやら親に捨てられた子供など、いろいろな意味で困った人たちが登場し、彼らの過去と現在が交錯しながら、その困った人たちをパン屋さんが救い、そしてパン屋の人たちも救われる話。一章ごとに語り手が代わり、それぞれの視点で一連の事件が語られていきます。けっして完璧無比なハッピーエンドではないけれど、とりあえず納得できる、みんなが前に進める終わり方でした。書店員さんの間で評判良いという話も聞きました。

異世界居酒屋「のぶ」』 蝉川夏哉(2012)
 京都にある寂れた商店街の一角でオープンしたはずの居酒屋「のぶ」だったが、なぜか店の表口が異世界のアイテーリアにある古都の路地裏に繋がっていた。それはともかく店主の矢澤信之は何処の誰であろうと客は客だと誠心誠意料理を作り続けるのだ……。
 いろんな悩みや苦労を抱えた人が居酒屋で食事をし、酒を呑み、語り合っているうちに問題解決の糸口をつかむという、食堂・居酒屋話の基本フォーマットなのだけれど、その相手する客が仕事帰りのサラリーマンやOL、年金暮らしの老人ではなく、異世界の貴族や兵士たちというのが違いで物語のバリエーションを広げています。


■小さなお店に持ち込まれる謎を解く日常系ミステリ
ビブリア古書堂の事件手帖』 (2011)
 鎌倉の街を舞台に、内気で文学少女な古書店主と体質的に本が読めない青年が、本をめぐる謎を解いていく。
 文学少女が本の内容を踏まえて謎解きをしていく話が好きな人にはお薦め。

珈琲店タレーランの事件簿』 岡崎琢磨(2012)
 京都の裏通りの珈琲店を仕切っているバリスタは、可憐な女性だ。 しかもこの女性バリスタは、わずかな手がかりから、相手のことを見事に推理して暴き出してしまう。
 京都で小さなコーヒー店を取り仕切る女性バリスタと、オーナーなのにあごで使われる老人と、コーヒーマニアの青年を中心に繰り広げられる連作短編ミステリ集。

香彩七色』 浅葉なつ(2013)
 結月は匂いに敏感な女子大生。通りすがりのレストランや民家で調理されている匂いに誘われて、いつもふらふらしていて、太りにくい体質と言いつつも最近は体重の微増が悩みの種だ。そんな彼女が珈琲の匂いに誘われているうちに出会ったのは、古今東西の香りに精通する香道宗家の跡取りの神門千尋だった……。
 嗅覚は犬並みだけれど(食べ物以外は)何の匂いまでか知識不足で断言できない女子大生と、人嫌いで家出中の香道宗家跡取りが、ほのかな香りに隠された謎を解いていく3つの物語。日常系ミステリで、基本ほのぼの、少ししんみり。

質屋「六文屋」の訳アリな訪問客』 吉川美樹(2013)
 ビルの谷間の狭い路地を抜けた先にある質屋「六文屋」は、喫茶店が併設されていて、どちらが主だかわかりかねる不思議な店なのだが……。
 ポストカードやら黄色い浴衣やら、持ち込んだ当人にもわからない謎を、店主である片倉十士の目利きと、喫茶店を受け持つ少女ミカのテキトーな推理で明らかにしていく軽めの日常系ミステリ。


 今から思い起こせば2010年あたりって一つのターニングポイントになっていて、このあたりから「カッコいいおにいさん、ステキなおねえさんが店主/店員のお店もの」が増えたなあとまとめているうちに、これ以外にも当時のブログを読みかえしていると「最近は魔女ものが多い」とか「平凡な青年と神様たちとの物語が増えた」「妖怪の出てくる時代小説が流行り」とかあるので、このあたりも時間があったら拾い出していきたい。
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「太っちょ貴族は迷宮でワルツを踊る3」 風見鶏

2024-07-24 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「お前は畑を見ている。それはお前だけの畑だ。お前以外の誰も手入れはしない。その畑を前に座り込み、なにも収穫がないと嘆いている。そもそも、お前はそこに種を蒔いたか?」
 銭湯で出会った獣頭の大男は、ミトロフを幸運だと告げる。

 怪我の療養で時間を持て余したミトロフはリハビリも兼ねて一人で迷宮の浅層へと潜るのだが、そこで異形の老婆と出会う。それは聖書で語られる、古の災いと称される“魔族”だ。当然、這々の体で逃げ戻るのだが、そのときに愛用の剣を失ってしまう……。

 今回は迷宮の階層主の代わりに出現した魔族との戦いを通じて、ミトロフが「放逐された貴族の息子」から「新米冒険者」になってパーティが完成するまで。
 ギルドから見たブラン・マンジェら禁忌の一族の扱いや、ギルドそのものの存在意義とかられていて、設定的にも面白いです。

【太っちょ貴族は迷宮でワルツを踊る3】【風見鶏】【緋原ヨウ】【オーバーラップノベルス】【追放された太っちょな貴族の、優雅な迷宮攻略譚】【錬金術師ベンジャミン・フランクフルト】【地上げ】
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「須美ちゃんは名探偵!?」 内田康夫財団事務局

2024-07-23 | ミステリー・推理小説
「もしかしたらという仮説を立て、思考を深めていくと色々な出来事が繋がって、隠れていた真実が見つかったり新たな発見に辿り着くことがある」
 浅見光彦が雅人に語っていた言葉を須美ちゃんは思い出す。

 みんなから「須美ちゃん」と呼ばれている吉田須美子は、警察庁刑事局長の家に住み込みのお手伝いさん。家の掃除から買い物まで働き者の須美ちゃんだが、出先でちょっと不思議な話を聞かせれては「須美ちゃんは名探偵だから」と謎解きを頼まれるのだ。違うと言っているのに。
 そんな須美ちゃんが買い物に行った商店街で聞かされたのは、(主に子供の間で囁かれている)都市伝説だ。「捜し物をするお婆さん」とか「動くD51」というのが最近の怪談らしい……。

 2009年から始まった名探偵・浅見光彦シリーズの外伝。本編でもちょこちょこ登場してアラサーの「光彦ぼっちゃん」の世話をかいがいしく行うお手伝いさんが、門前の小僧ばりに町の小さな謎を解決していく連作短編集です。風に飛ばされてきたメモを拾ってしまい、小さな謎の1つ1つが最後に大きな輪となって物語を締めくくります。
 内田康夫の作品は家に良く転がっていたので読む事はあったけれど、ちゃんと買ったのは今回の「須美ちゃんは名探偵!?」シリーズからで、やはりtoi8さんのイラストに惹かれたからでした。

【須美ちゃんは名探偵!?】【浅見光彦シリーズ番外】【内田康夫財団事務局】【toi8】【光文社文庫】【身の回りのちょっとした事件ならお任せ!】【D51】【オカメインコ】【百人一首】
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★「タイムスリップ」もの

2024-07-22 | ランキング・カテゴリー
 時間旅行ものと転生ものは混在しやすく、作品・作者ごとに定義が違っていたりするのだけれど、ここでは過去の自分に意識だけが戻るものを「タイムリープ」、機械や道具を使って過去や未来に身体ごと移動するものを「タイムトラベル」、機械や道具を使わずに身体が別の時代に移動するものを「タイムスリップ」、時代を問わず(現代から過去まで)他人の身体に意識が乗り移るのは「憑依」で、一時的ではないものは「憑依型転生」ということにしときます。ついでに平行世界を移動するのは「ワールドチェンジ」で良いでしょうか?

『アーサー王宮廷のヤンキー』マーク・トゥエイン (1889)
 アメリカ人技師が部下に殴られた弾みでタイム・スリップ。アーサー王の宮廷に紛れ込み、国民の教育や科学技術の導入を試みるも、近代化の反動が起こってしまい……。
 騎士の突撃を鉄条網で食い止めたり、電信網を整備したりとか、技術チートものの原点です。

『時果つるところ』 エドモンド・ハミルトン(1950)
 東西冷戦は核戦争へと拡大した。だが、アメリカの小都市ミドルタウン上空で爆発した東側陣営の新兵器は、そのエネルギーで街全体を数百万年先の未来に飛ばしてしまう。そこは太陽と地熱の衰えにより寒冷化し、無人の世界となっている地球だった……。
 スペースオペラ『キャプテン・フューチャー』で知られるハミルトンによる本格的タイムスリップSF。銀河文明との接触から地球再生計画までが語られます。

戦国自衛隊』半村良 (1971)
 大演習のさなか、富山湾沿岸に集結していた自衛隊1個中隊が接岸していた哨戒艇もろともタイムスリップした。接触した現地の武将の言葉によれば、今は永禄三年だというが、話を聞くに自分たちの知る歴史と微妙に異なることから、よく似た別の世界線であろうということになった。なにしろ織田家も松平家も存在しないのだ。
 最上位の指揮官となった伊庭三尉は、春日山城の長尾景虎と協力体制を取ることにしたのだが……。

 伝奇SF小説作家の生みの親であるが書いた、架空戦記の先駆けともいうべき作品。異世界転移で現代知識と現代装備で無双してブイブイいわせます。

『漂流教室』 楳図かずお(1972)
 突然の大地震で大和小学校は校舎ごと未来世界へタイムスリップしてしまう。岩と砂漠だけの荒れ果てた大地に頓挫した校舎で教師のほとんどが亡くなった中、生き残った子供たちは協力して生き残ろうとするのだが、飢餓や伝染病の蔓延などで児童たちの数も減り続けていく……。
 人間の強さと弱さ、気高さと醜さが表裏一体で語られる未来サバイバル小説。

『タイムスリップ大戦争』豊田有恒 (1975)
 日本全土に地震発生。それは震度2の軽震だったが、その直後、日本列島が丸ごとタイムスリップしてしまったのだ。時は太平洋戦争のまっただ中。在日米軍も含めて最新鋭装備の戦力を持つ国家の出現に、世界情勢は大きく変化して正史から外れていくのだが……。
 架空戦記の先駆であり、日本列島丸ごと時空転移ものの原点。

『王家の紋章』 細川智栄子あんど芙〜みん(1976)
 財閥令嬢キャロル・リードは王家の呪いによって太古のエジプトへとタイムスリップしてしまう。そこで偶然出会った少年王メンフィスにその金髪碧眼の美貌を見初められるのだが、彼女の真価は何よりも現代科学と歴史の知識にあった……。
 現代人が過去にタイムスリップして現代知識で成り上がる、現在のウェブ系ファンタジーの原典ともいうべき少女マンガ。実は未だ連載中で新刊が出る最長不倒作品。これを読んでいると、水のろ過技術とか鉄剣の製法は義務教育と思い込むようになります。

鵺姫真話』 岩本隆雄(2000)
 人類を宇宙に進出させることで地球環境の負担を軽減させようという進化計画がスタートしたが、候補生だった川崎純はその本格的な始動に沸き返る洋上都市を後にしていた。少女の視力が急激に悪化したことから、宇宙飛行士への道が断たれてしまったのだ。夢破れて故郷へ戻った純は、剣道の奉納試合を引き受けることになるのだが、それをきっかけに過去の世界へとタイムスリップしてしまう……。
 宇宙開発の拠点となる未来都市から一転して昭和の香り漂う故郷の町、さらには時間を跳躍して戦国時代に放り込まれるという二転三転。過去へタイムスリップした人間が未来の知識で活躍し、それゆえ畏れられたりあがめ奉られたりするというのも時間SFの定番。

ちょんまげぷりん』 荒木源(2006)
 直参旗本の木島安兵衛は、ある夜、不思議な光に足を踏み入れたかと思うと、いつの間にか奇妙な街に放り出されていた。空高く伸びる巨大な建築物、街を歩く奇妙な風体の町人たち。
 そこで出会ったひろ子と友也の母子に、今は安兵衛の生きていた時代から180年後の世界だと告げられるのだが……。

 現代に放り出された侍が、母子家庭に居候しているうちに、自分自身の生きる意味を見つける一方、周囲の人々にも家族の絆を再発見させるプロセスの物語。『スミス都へ行く』のように、時代錯誤の人間がその実直さで周囲を変えていく物語の典型ではあるけれど、そこで彼自身も変わっていくという点も重要。「ござる」口調の天才パティシエの活躍は読後感さわやか。

織田信奈の野望』春日みかげ (2009)
 なんの前振りもなく、戦国時代にタイムスリップしてしまった高校生、相良良春。彼の命を助けた足軽、木下藤吉郎がいきなり戦死してしまったために、なし崩しに織田家に身を寄せることになる。
 しかし、いくら未来から来たといってもゲームくらいでしか戦国時代の知識がない良春は、桶狭間といってもどこの場所かも分からない。果たして、彼は主君……姫武将・織田信奈を救えるのだろうか……?

 タイムスリップものなのだけれど、ちょいとずれた平行世界の過去へ紛れ込んだらしく、武将にも美少女が多数。男女に関係なく長子相続な世界なのですね。そりゃあ、確かに筋が通っている。

戦国小町苦労譚』夾竹桃 (2013)
 農業高校生の綾小路静子は、買い物帰りの山道でいつの間にか過去に飛ばされていた。
 目の前には騎馬の武将。射小手に描かれた「五つ葉木瓜紋」と腰の「宗三左文字」などから相手はどうやら織田信長らしいと気がついた。一方、信長も目の前の娘がどうやらこの国の人間ではないと気がついた。もしかしたら南蛮の人間なのか。とりあえず実力さえあれば女であっても信長なら取り立ててくれるだろうと保護を期待する静子と、南蛮の技術を手に入れたい信長の利害が一致した……。

 チートな異能力に頼らない内政系タイムトリップもので、農業系女子高生が戦国時代にトリップして信長配下となり、異世界DASH村を建設する話。

銭(インチキ)の力で、戦国の世を駆け抜ける。』Y.A (2015)
 人類が宇宙に進出してから数千年。零細運輸会社「足利運輸」唯一の貨物船〈カナガワ〉が時空間の異常に巻き込まれ、気がつけば地球の海に不時着。ところが地形もデータにある地球とは違っていて、どうやら過去に戻ってしまったらしく、しかもこの世界は元の世界とは別の次元らしいと判明する。
 元の世界には戻れそうにもないけれど、宇宙船のローンも払わなくても良くなったと気を取り直した足利光輝たちは、沈没船のお宝を引き上げて、尾張の国で売りさばこうとするが、そこで織田信長に見咎められる……。

未来の知識と工業力で成り上がる、戦国内政系チート物語。チート系主人公はいろいろいるけれど、ここまで開き直ったチートだとむしろ清々しいというものです。もちろん戦国なので成り上がっていけば戦は避けられないことだけれど、そこはひたすら火力押しです。補給の勝利と言えなくもありません。

薩摩転生~世に万葉の丸十字が咲くなり~』内富拓地&ほうこうおんち (2024)
 1586年、九州平定に動き出した豊臣軍に挑みかからんとする島津の軍勢。しかし、そのとき天地が揺らめき、火山が噴火。気がつけば島津家一族郎党は、戦国時代から約1300年前、帝国存亡をかけた大戦国時代の真っ只中というローマ帝国へと転移していた……。
 戦国最恐、島津家の軍勢が戦力十分にして戦意過剰なまま異世界に転移していたら……という仮想戦記がまさかのコミカライズ。ウェブ版は西暦1453年の黒海沿岸に転移してオスマン帝国とぶつかりますが、そこは原案ということにしてさらに時間を遡り、3世紀ローマでの戦いが描かれていきます。
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★ライトノベルではないもの

2024-07-21 | 雑談・覚え書き
 先日は「マンガの絵が表紙になった小説はラノベなんですよ」とばかりに「ライトノベル-1.0」をぶち上げたパッケージ論者なのですが、一方で「本文中にモノクロ挿絵があるのがラノベ」とか「少年少女が主人公で、冒険の結果、大人になる/子供のままでいる」とか中身で判断しようという学派もあります。ただ、こう細かくガイドラインを作品内容にまで掘り下げると判断が難しくなります。

■本文中にイラストがない小説はラノベじゃない
『ミミズクと夜の王』 紅玉いづき(2007)
 自ら不自由を選ぶ自由もあるのだという、ミミズと呼ばれていた死にたい少女と夜の王の物語。
 これはラノベの中核ともいうべき電撃文庫ですが、本文にイラストが無いどころかこんな地味な表紙なので、一般的なラノベの定義からは外れます。

『はじめてのゾンビ生活』 不破有紀 (2004)
 人間とゾンビの宇宙興亡千年史。ゾンビというのは差別なので新人類と呼びます。
 『ミミズクと夜の王』と同じく電撃文庫で本文イラスト無し。口絵はゾンビになった人のためのリーフレットです。

『ダイブ・イントゥ・ゲームズ』 佐嘉二一(2020)
 VRゲームにのめりこむ大学生とその仲間たちのゲームプレイの日々。
 レジェンドノベルスは本文イラストを廃止して、その分を表紙イラストに傾注したレーベルです。


■少年少女が主人公じゃない作品はラノベじゃない
『転生したらスライムだった件』 伏瀬(2014)
 ゼネコンに勤務する37歳サラリーマンの三上悟は、通り魔に刺殺されて異世界で最弱のモンスター、スライムに転生する。
 一般文芸に交じって年間売上上位に食い込む、「小説家になろう」発の異世界転生ファンタジー。

『ナイツ&マジック』 天酒之瓢(2013)
 28歳で事故死したメカオタクが異世界転生。思うがままに幻晶騎士こと巨大ロボットの開発に邁進する。
 異世界で巨大ロボット。一歩間違えたらショット・ウェポンになっていたかもしれない男の物語。

『無職転生~異世界行ったら本気だす』 理不尽な孫の手(2014)
 引きこもりの34歳無職はダメ男として死に、剣と魔法の異世界に転生した。彼は決意する。今度こそ本気で生きていこうと……。
 器用貧乏な主人公がなりふり構わず、見栄も何もかなぐり捨てて家族のために戦い働く姿が描かれます。

『幼女戦記』 カルロ・ゼン(2013)
 サラリーマンが異世界転生。変化する環境に適応し、ルールの範囲で仕事を効率的におこなうことでエリート街道に乗った男である。自分がいずこともしれない世界に幼女として転生し、魔法使いとなり、戦場に立つことになろうと、なんら戸惑うものではなかった。
 第一次大戦+第二次大戦のような異世界の戦場で大暴れする少女の物語。

『Re:Monster』 金斬児狐(2012)
 油断してストーカーに刺殺されたESP能力者が異世界でゴブリンに転生。同族相手の殺し合いを生き抜き、ゴブリンをまとめあげ、コボルドや捕虜にしたエルフや人間も組み込んで傭兵団を旗揚げするのだが、その野望はとどまるところを知らない……。
 ゴブリンとして生を受けた転生者が、怪物だらけの異世界で壮絶なサバイバル世界を息抜き、成り上がっていくピカレスク・ファンタジー。主人公を成り上がらせる力となったスキル強奪が、実は転生特典では無く前世からの引継ぎというのが特色。

 このあたりまでが、大人だった主人公が転生して異世界でやり直す話。

『とあるおっさんのVRMMO活動記』 椎名ほわほわ(2017)
 38歳のサラリーマンが新型VRMMOに参加。効率とか攻略とか考えず、異世界での生活を楽しもう……。
 デスゲームでも異世界転移でもないVRゲームで、NPCを同じ人間として扱い愉しくプレイしていく活動記録。

『ゲート:自衛隊彼の地にて、斯く戦えり』 柳内たくみ(2010)
 異世界との門が東京銀座にが現れ、異世界から侵攻してきたファンタジー世界の軍勢によって街は阿鼻叫喚。警察と陸上自衛隊によって事態を収拾した日本政府は、治安維持のために自衛隊をゲートの向こうへと送り出すが、その中に33歳オタク男の自衛官、伊丹の姿があった。
 オタク自衛官の大活躍する話。補給も滞りなく、現代軍隊ほぼ無双。なによりの障害は日本国内外の政治勢力なのです。

『All you need is Kill』 桜坂洋(2004)
 謎の敵ギタイとの戦いに負けつつある人類。新兵だったキリヤは、戦死したはずが30時間前に戻っていた。何度も繰り返される戦闘の中、キリヤは経験のみを過去に引き継ぐことで、新兵なのにいつしか歴戦の勇士と化していた……。
 スーパーダッシュ文庫から刊行され、10年後にはトム・クルーズ主演で映画化されていた。

 このあたりは、大人が大人として働く話。
『29とJK』 裕時悠示(2018)
 コールセンター勤務の槍羽鋭二は、目つきは怖いが会社では一目置かれている29歳。ある日、ネカフェで知り合った女子高生・南里花恋から告白されてしまうのだが……。
 29歳とJK、“禁断の”年の差ラブコメにしてビジネス小説。

『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』 しめさば(2018)
 5年間片思いしていた女上司にフラれ、やけ酒を飲んだ帰り道に吉田は家出少女を拾ってしまう。抱く気は無いけれど、寒空の深夜に道端で蹲る少女を放っておけなかったらしい。らしいというのは、酔っ払いだから記憶が無いのだ。ただ、「泊める代わりに味噌汁を作れ」と言ってしまったらしい……。
 ひとことでいうと「NOといえるサラリーマン」。

『クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……』 識原佳乃(2019)
 新入社員の弓削明弘の新人教育を担当するのは、さまざまな契約をまとめ、社内システムを刷新した才女、瀬能芹葉だ。クール過ぎ、完璧すぎて、むしろ周囲から引かれがちな彼女だが、弓削が見たものは、可愛くて甘えん坊な先輩の姿だった……。
 おまえら、もうつきあっちゃえよ!……ではなく、おまえらまだつきあってないの?な社会人ラブコメ。


『月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい』 黄波戸井ショウリ(2020)
 松友裕二がいくら働いても無能な上司には認められない。そんな社畜の日々が突然終わりを告げた。偶然知り合った、隣に住むOLの早乙女ミオに雇われたのだ。仕事は有能だが生活力ゼロで極度の人間不信だったミオの彼女の身の回りの世話をして、帰宅した彼女に「おかえり」という仕事だ……。
 仕事は有能でも私事になると「あばばばば」と簡単に幼児退行してしまうお姉さんを、ビジネスもプライベートもきっちりこなせる青年が面倒みているホームコメディ。

社畜男はB人お姉さんに助けられて――』 櫻井春輝(2020)
 終電間際の駅で階段を踏み外し落下してきた美人お姉さんを受け止め助けた大樹だったが、そのほんのすぐ後にまた彼女と再会することになる。高級マンションの前でブラック企業務めからの過労で倒れてしまったのだ。目が覚めると、そこは年上の若き美人社長である如月玲華が住む高級マンションの一室であった……。
 料理が得意な苦労人が、ビジネスでは有能だけれど私生活はポンコツな美女の世話をしながら、後輩の部下たちの面倒をみることになる話。

ぽんこつかわいい間宮さん~社内の美人広報がとなりの席に居座る件~』 小狐ミナト(2022)
 社内エンジニアの藤城悠介は陰キャな24歳。そんな藤城の席に美人で有名な広報部の間宮ユリカがやって来た……。
 一見美人で有能、実はぽんこつかわいい先輩と過ごすオフィスの日々。


 こうしたアラサーリーマン・OLが主役の話は、2010年以降に急増しますので、ライトノベルをジュブナイルとかその亜流として捉える場合は、また再定義が必要となります。これ、完全に文庫とソフトカバー、レーベル毎に傾向がきっぱり別れていれば簡単ですが、あいにく混在しているものですから「ラノベでないものはキャラ小説・ライト文芸」とか切り分けることも困難なのです。そこからライトノベル・キャラクター小説・ライト文芸ひっくるめて再定義ですからね。へたに区切ると「あの有名作品もこの作品もラノベに含まれないというのに、そのライトノベル論に意味はあるの?」となりかねません(自分は言う)。
 魯山人の「日本料理と言っても、一概にこれが日本料理だと簡単に言い切れるものではない。言い切った後から、とやかくと問題が起こり、水掛け論が長びき、焦点がぼけてしまうのが常だからだ」という言葉がまさにあてはまる混沌!
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「君と漕ぐ」 武田綾乃

2024-07-20 | スポーツ・武道
「少しってのがポイントね。人生の上手くいく秘訣はなんでもそう。少し頑張る。少し贅沢する。少し苦労して、少し楽しむ」
 たくさんだと疲れるからなんでもほどほどが良いと黒部舞奈の祖母はいう。

  両親の離婚で父親の実家に引っ越してきた高校1年生の舞奈は、近所の川でカヌーを操る美少女に出会う。その少女、恵梨香と学校も学年も同じと知った舞奈は、彼女を誘ってながとろ高校カヌー部に入部するのだが、舞奈はもちろん、巧みにカヌーを操る恵梨香すらクラブチームの経験はないという。彼女にとってカヌーは1人で楽しむもの、競ったりするという発想がなかったのだ……。

 陽キャなのに家庭内が落ちつかずスマホを持たない舞奈。カヌーの上級者なのに人づきあいが苦手な恵梨香。彼女らの上級生で、かつてはペアでオリンピックすら夢ではないと言われていたのに成長期で伸び悩み、すれ違い始めている希衣と千帆。この4人を中心にした部活小説。つまり群像劇。作者は『響け! ユーフォニアム』の人ですね。
 好きなキャラは檜原先生。最初はやる気がないのか分からない人でしたが、本当に大事なところでは「誰かの好きが潰されそうになったときは守れる大人になりたかった」と締めてくれます。カヌーは全然わからないけれど。

【君と漕ぐ~ながとろ高校カヌー部~】【武田綾乃】【おとないちあき】【新潮文庫NEXT】【水しぶき眩しい青春部活小説】【不登校】
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★「勇者のその後」もの

2024-07-19 | ランキング・カテゴリー
 ファンタジーの定番ストーリー、「こうして勇者は魔王/邪神を倒して世界は平和になりました。めでたしめでたし」の続きもの。忘れられて堕落してたりとか、平和な時代に馴染めなくて社会復帰に苦労するとか、勇者の力そのままに元の世界に戻ってそちらでも無双するとか、マンガでもあれこれありますが、ここは正統派で「魔王討伐の旅の道程を再び辿る」ものとしておきましょう。

神殺しの英雄と七つの誓約』 ウメ種(2015)
 世界を救った救国の英雄として吟遊詩人たちは12人の英雄たちを歌で讃える。でも、異世界から召喚されたのは13人だったのだ。人々が忘れた13人目、しかしそのレンジこそ他の12人は信頼し、頼っていたのだ……。
 俺はただの役立たずだとへたれていながら、実は仲間からは誰よりも信頼され頼られていた男が、ひとり身を隠して一冒険者となり、まだ学生の新人冒険者の魔物討伐の手助けを請け負って旅立つところから始まります。

『葬送のフリーレン』 山田鐘人&アベツカサ(2020)
 勇者ヒンメルのパーティが魔王討伐の偉業を成し遂げて50年。10年間もの旅路だったが、1000年は軽く生きるエルフのフリーレンにとってはつかの間の旅。しかし、ヒンメルの葬儀でフリーレンは自身がヒンメルについて何も知らず、知ろうともしなかったことに気づき衝撃を受ける。その悲しみに困惑したフリーレンは、再びかつての旅路を辿ろうとするのだが、そこには新たな仲間がいた……。
 魔王を倒した勇者一行の後日譚ファンタジー。たぶんいちばん有名。生きる時間が違う種族たちが相互理解をするのは難しいのだ。

魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。』 じゃがバター(2024)
 魔王討伐から50年。勇者は戻らず、魔女は森に去り、神官は神殿に入り、俗世に残るのは剣聖と呼ばれるスイルーンだけだが、彼ももう72歳。だが、魔王討伐から半世紀を祝うパーティーのための衣装の仮縫いの日、スイルーンは白い光に包まれたかと思うと魔王討伐当時の姿に若返っていた。女神ラーヌの古い約定が果たされるときが来たのだ……。
 勇者パーティの一員だった剣聖は人生の終焉を前に、再びかつての旅路を辿る旅に出る事にした。なぜか女神の力で若返らされ、一人旅のつもりがだんだん同行者が増えていくことになる。

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「美少女生徒会長の十神さんは今日もポンコツで放っておけない」 相崎壁際

2024-07-18 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「でもご安心ください。可燃ゴミが毎週月曜日と木曜日、プラスチックごみが火曜日だという法則には気付いたので」
 十神会長は、月の満ち欠けや季節に魔付いた古代人みたいな事を言いだした。

 知り合いのほとんどいない高校、進学校の私立麗秀高校に入学した郡上貴樹には友達がいない。目つきが悪いし人相が悪い。入学早々骨折事故で休んでいたので仲良くなる機会も逸した。父親が海外赴任から戻ってこれなくなってやる気もなくなって成績も急降下……。
 留年の危機を回避するため、半強制的に生徒会役員になってしまった貴樹だが、1年生にもかかわらず生徒会長に就任した十神撫子は大企業の令嬢で完璧美少女。何もしないでサボっていられると思っていたのだが、実は彼女が重度のポンコツ美少女だということに気付いてしまう。彼女の完璧さは外面だけ。しかも、厳しい実力主義の実家に認められるため、自分は完璧でないといけないのだという十神は、他の人には知らせたくないというのだ。
 任期をつつがなく終えるためサポートに回ることにした貴樹だったが、素の十神は彼の想定以上にポンコツだった……。

 一般的には十分に優秀なんだけれど、常にそれ以上を要求されている少女のポンコツ奮闘記。
 本の裏表紙や帯のあおり文句だと「ポンコツ美少女と贈る生徒会ラブコメディ」とあるのだけど、出版社とか通販のウェブ紹介では「ポンコツ美少女と送る生徒会ラブコメディ」になっているのだけど、どちらが正しいのかな?

【美少女生徒会長の十神さんは今日もポンコツで放っておけない】【相崎壁際】【森神】【GA文庫】【自信満々なポンコツヒロインと贈る生徒会ラブコメディ! 】【ポンコツ美少女と送る生徒会ラブコメディ】【目安箱】【壁尻】【あきらめたらそこで試合終了】【エロ自撮り】【対照的な君と僕】【スーパーの裏でメシ食うふたり】【幼なじみが絶対に勝てないラブコメ】
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「双子まとめて『カノジョ』にしない?3」 白井ムク

2024-07-17 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「大事な人と対等になるには自分が変わるしかないと思ったんだ」
 高屋敷咲人は守られてばかりはダメだ、今のままではいけないと思ったのだ。

 咲人が千影と光莉の双子とつき合い始めて、初めての夏休み。盛り上がって、海と山に囲まれた別荘へ2泊3日の旅行に出発。その別荘のある街は双子子(ふたねこ)といい、猫と双子の伝説にまつわる町で双子は災いを呼ぶらしいが、3人は人目も気にせずやりたいことをアクセル全開。しかし、泳ごうと出かけていった海岸の海の家で、新聞部の真鳥先輩と柚月というまさかの2人に遭遇。しかも、彼女たちはネコミミ姿で働いていた。
 海の家「Karen」は先輩の叔父さんが店長らしいが、不幸な事故で人手が足りなくなっててんやわんや。見かねた千影が手伝いたいと言い出して……。

 お風呂とか海とかお約束イベントをしっかりこなしてのお泊まり旅行です。なにやら思わせぶりな町の伝説も「ググれば一発だよ?」というあたりが21世紀。インターネット万歳。咲人も超記憶力を発揮して大活躍です。

【双子まとめて『カノジョ』にしない?3】【白井ムク】【千種みのり】【富士見ファンタジア文庫】【ハートフル三角関係ラブコメ】【両取り学校生活】【ポッキー無しゲーム】【子子子子子子子子子子子子】
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「魯鈍の人」 牛一

2024-07-16 | 戦国転生・歴史改変
「子供のような事を言うな」
「この通り、子供です。子供らしく遊ばせてください」

 信長はこき使いたいし金を出させたいが、魯鈍丸は引き籠もりたい一心だ。

 大型プロジェクトを失敗して地方に飛ばされて細々と地域再生、村おこしを担当していた男が、車を運転中に土砂崩れに巻き込まれて死んだ……と思ったら戦国時代に転生していた。織田秀長の十男、魯鈍丸である。
 現代日本との生活格差に耐えきれず、まだカタコト言葉もおぼつかないうちから周囲に指示を出し、生活改善のためにあれやこれやと産業振興やら開拓をしていたら、数えで2歳の頃には「神童」「熱田明神様の生まれ代わり」と崇められるようになっていた。のんびりと暮らしたいだけなのだが……。

 天性魯鈍人(おろかでにぶい)と評された織田信照転生。魯鈍だ引きこもりだと言われながら本能寺の変も生き抜いて、江戸時代まで頑張って、諸説あるけど50歳までは生きているようなので、十分有能だよね。
 そんな戦国ニートな武将に転生した男が、やる気満々で行動力はあるけれど経済音痴の信長と丁々発止の駆け引きをしながらマイペース人生をめざす物語。
 最初の1年2年そこそこで澄み酒から土壌改良まで手がけているくらい上手くいきすぎなので、そのあたりの細かいところを「そんなにうまくいくかい!?」と気になる人はダメかも。そのあたりの殖産チートはあくまで外交や戦争準備にフリーハンドを確保するための手段なので、そこまで重要ではないのです。

【魯鈍の人~信長の弟、信秀の十男と言われて】【牛一】【ニシカワエイト】【モーニングスターブックス】【美男子コンビが取り成す、戦国コミカル】【小説家になろう】【カクヨム】【望月千代女】【飛び加藤】【慶次郎】【椎茸栽培】【清酒】【南蛮船】【黒鋤】【ローマンコンクリート】【アスレチック】【富くじ】【肥料】【瓦版】【プレス機】【南蛮船】
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★織田一族

2024-07-15 | 雑談・覚え書き
 やっぱ織田信長って人気者だなあと思うのは、架空戦記や戦国転生などでの一族が主役になる話の多いんじゃないかなーとピックアップしてみました。

〈父〉織田信秀
『 (該当なし)』
 ウェブに転生ものをみつけました。

〈母〉土田御前
『 (該当なし)』


〈兄〉織田信広
織田家の長男に生まれました』 大沼田伊勢彦(2017)

 信長に謀反を起こすなんてとんでもない。織田家の総領なんて面倒くさいことはやりたかない。戦で負けて死ぬのもイヤだ。ならば、家族を守るため、そして自分も生き残るため、記憶にある歴史知識を用いてなんとかするしかない。それにいざ会ってみたら、吉法師なんかけっこう可愛い弟なのだ……。

〈本人〉織田信長
『 (該当なし)』

 意外と書籍化作品で信長本人に転生するのはないのです(ウェブにはあります)。その周辺に転生して働きかけるとか(『信長と征く』)、本人がタイムループに入るとか(『何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?』)、信長は存在しなくてそのポジションに当てはめられるとか(『戦国自衛隊』)はありました。

〈弟〉織田信勝/信行
信長の弟 織田信行として生きて候』 ツマビラカズジ(2018)

 オフィスで空残業をしていたはずの32歳サラリーマンが、気がつくと何故か馬上に。付き従うのは如何にもな武士たち。どうやら自分は、あの有名な織田信長の弟、信行に憑依してしまったらしい。聞けば今はこれから清洲城へ信長の見舞いに行く途中だと言う。暗殺ルートまっしぐらである……。

〈弟〉織田信包
『 (該当なし)』
 ウェブに転生ものを見つけました。

〈弟〉織田信治
『 (該当なし)』


〈弟〉織田信時
『 (該当なし)』


〈弟〉織田信興
『 (該当なし)』


〈弟〉織田秀孝/秀孝
信長公弟記~織田さんちの八男です』 東里桐子(2018)

 現代日本のサラリーマンがトイレで倒れたと思ったら、織田信長の弟・喜六郎に転生していたところから始まる、「転生に必要なことは鉄腕DASH!!で学んだ」的な、群雄割拠の戦国時代で快適スローライフをめざす戦国転生もの。

〈弟〉織田秀成
『 (該当なし)』


〈弟〉織田信照
魯鈍の人~信長の弟、信秀の十男と言われて~』 牛一(2020)

 車を運転中に土砂崩れに巻き込まれ、織田信秀の十男である「魯坊丸」に転生した男は劣悪な生活環境レベルをどうにか改善しようと働きかけるうちに「神童」「熱田明神様の生まれ代わり」と呼ばれるようになる……。

〈弟〉織田長益
『 (該当なし)』


〈弟〉織田長利
『 (該当なし)』



〈妻〉鷺山殿/濃姫
信長の嫁、はじめました~ポンコツ魔女の戦国内政伝~』 九條葉月(2022)

 異世界転生してしまった魔法を極めた女は現代日本へ帰ろうとして失敗。戦国時代に来てしまったが、偶然居合わせた斎藤道三が彼女のことを「帰蝶」と呼んだ……。

〈妻〉お犬の方
『 (該当なし)』


〈妻〉お市の方
楽『市』楽座』 空城(2011)

 現代人がお市の方に転生したことにより、歴史が変わっていく……。連載中断。

〈妻〉その他側室
『 (該当なし)』



〈長男〉織田信忠
『 (該当なし)』
 ウェブには転生ものもそうでないものも幾つか。

〈子〉織田信雄
『 (該当なし)』
 ウェブには転生ものもそうでないものも幾つか。

〈子〉織田信孝
『 (該当なし)』


〈子〉五徳
『 (該当なし)』
 ウェブに転生ものをみつけました。

〈子〉相応院
『 (該当なし)』


〈子〉織田勝長
『 (該当なし)』


〈子〉秀子
『 (該当なし)』


〈子〉羽柴秀勝
『 (該当なし)』
 ウェブには転生ものでないものを幾つかみつけました。

〈子〉織田信秀
『 (該当なし)』


〈子〉織田信吉
『 (該当なし)』


〈子〉織田信貞
『 (該当なし)』


〈子〉永姫
『 (該当なし)』


〈子〉報恩院
『 (該当なし)』


〈子〉織田信高
『 (該当なし)』


〈子〉織田信好
『 (該当なし)』


〈子〉織田長次
『 (該当なし)』


〈子〉於振
『 (該当なし)』


〈子〉源光院
『 (該当なし)』


〈子〉三の丸殿
『 (該当なし)』


〈子〉月明院
『 (該当なし)』



〈庶子〉織田信正/村井重勝
信長の庶子』 壬生一郎(2017)

 織田家の家督などどうでもいい。自分がやりたいことを自分がやりたい通りにやっていたい。父親や腹違いの弟が領主という立場が最も気軽かつ自分勝手に動けるのだという主人公の戦国絵巻。


〈甥〉津田信澄
信孝なんかに『本能寺の変』のとばっちりで殺されていられません~信澄公転生記~』 ヤナギイオリ(2021)

 時間線の保守管理業務に巻き込まれて死んだ男は、逆行転生できることになり、もっとも親和性が高い津田信澄に転生したのだが、実は彼はあまり信澄には詳しくなかった。確か光秀との連携を疑われて殺されたくらい……。


※書籍化されていない作品は「小説家になろう」で評価1000pt以上のもののみピックアップ。











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「旅する錬金術師のスローライフ(1)」 川上とむ

2024-07-14 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 鈴木芽衣は病弱な身体でゲームとテレビでしか外の世界を知ることができない。そんな彼女の楽しみは14歳の誕生日にもらった錬金術師の育成ゲーム。ただ、そんな日々は長く続かず、結局、病気で命を失ってしまうのだが、彼女に同情した神様のはからいで異世界転生することになった。
 もちろん憧れの職業である錬金術師として!
 ところが、この世界ではどうやら錬金術師はマイナーな職業らしい……。

 死後の世界が愉しくて良かったね、という異世界紀行。転生したティーンエイジャーが行く先々で必要に応じてパパッと便利な道具を作って問題を解決しては次の町へ旅立っていく物語です。

【旅する錬金術師のスローライフ(1)】【川上とむ】【竹岡美穂】【Mノベルス】【気ままな錬金術師のスローライフ】【便利な道具でまったりガールズスローライフ】【空を飛べる靴】【容量無限バッグ】【万能テント】【万能地図】【迎撃用カカシ】【風の爆弾】【重力ボム】
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「RE:異世界から帰ったら江戸なのである4」 左高例

2024-07-13 | 戦国転生・歴史改変
「男の子ってのはね。半分くらい女の子なんだよ」
 ロリ・ショタ問わずの稚児趣味同心、人呼んで「青田狩り」の菅山利悟は人類の敵。

 女天狗とちまたで噂されている九子は、小柄だけれど胸は大きい美少女。男余りな江戸では彼女に懸想する者は多いが、中身は90歳の老人だし心は男なので本人にはその気はまったく無い。むしろ孫でも可愛がっている感覚なのだが、それでまた勘違いする者も少なくない。
 ところで、自前で掘った温泉で酒盛りしていて溺死した九子は、潜り込んでいた子供たちに助けられ、その御礼のひとつとして目の悪い雨次のために眼鏡を買いに行くことになった。だが、その頃、眼鏡が入手できる店は限られており、訪ねていったのは渡来品も扱う薩摩商人の店。そこで店の奥から聞こえてくる怒声や奇声、転がっていく生首みたいに見えるものを見せられたりしたあげく……。

 無事にエンターブレイン版の全3巻を超えました!めでたい。分厚い装丁ですが、本編は3/4。残りは宴会ダーツのIF編をそれぞれに。
 温泉宿の盗賊撃退打ち上げ宴会のダーツから、吉良義央の霊に頼まれての諏訪旅行とかイベントを次々こなし、薩摩もんとの邂逅を経ての天狗製花火事件へと収束していきます(したのかな?)。

【RE:異世界から帰ったら江戸なのである~女天狗昔物語4~】【左高例】【ユウナラ】【カレヤマ文庫】【異世界ファンタジー×江戸時代×現代知識×女体化×エトセトラ】【B級歴史オルタナティブ】【江戸で現代知識と異世界魔法のスローライフ小説】【異世界転性】【東京フレンドパーク】【鍵屋】【オール・ユー・ニード・イズ・吉良】
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